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「プチ禁酒」の悲しみ

いま、家で飲まない「プチ禁酒」をしている。

僕の定義で言う「プチ禁酒」は、誰かとの酒席はOKだけど、自宅でお酒を飲むことは完全NGというもの。

元々飲み会がそこまで多くない環境だったので、自宅での飲酒を制限すればかなり生活に影響を与えるのではと踏んだのだ。

ただ、ということは、僕の飲酒はほぼほぼ自宅内で行われていたことにもなる。

正直飲みすぎていた。
ほぼ365日飲んでいたし、家にお酒がないことが不安だった。

毎日会社からの帰り道に500ml缶を6本ほど買って、1日大体2〜3本飲む。
酒量としてはそこまで多くはないかもしれないが、毎日必ずだと、体にも異常が出る。

まず、良い目覚めはない。
朝は頭がボーッとして、なかなか起き上がれない。起き上がっても意識がはっきりしない。
それでもトイレに行きたいからなんとか立って向かう。

そして食欲がないからチョコを一つだけ食べる。

会社に向かう途中もとにかく体が重く、座れない通勤電車は地獄だった。

会社についてから、なんとか頭を切り替える。仕事モードになれば少しは気が紛れるが、席を立つと気分が悪くなり謎の嗚咽。

昼食も気分が悪いまま摂って、午後をなんとかやり過ごす。

そしてこんなに気分が悪いのに、帰り道にはしっかりお酒を買って帰る。そして繰り返す。

体にいいわけがない。
ついに去年の健康診断は引っかかった。

幸いまだ若いから大病ということにはならないのだが、このまま続けていけば体も心も終わる気がした。


4月の初旬だったと思う。
帰り道まで気分が悪くて、どうしてもお酒を飲める気がしなかった。
さすがにまずいと思った。

そこから冒頭の「プチ禁酒」を始めた。

しばらくはきつかった。3日〜4日くらいは飲みたくてしょうがなかった。しかも、眠れない。
ただ、体の調子は圧倒的に良くなった。

まず、体が軽い。あんなに重くて通勤の電車で絶望していたのに、まったくつらくない。思わず、少しスキップしてしまったぐらい。

食欲も戻った。ご飯が美味しく感じた。今日は何を食べようと考える時間が幸せだった。

禁酒についてはこちらの記事にめちゃ共感にしたので読んでみてください。

苦しい期間を過ぎると、家で飲まないことにも慣れる。

なによりあの苦しい日々がちょっとの我慢でこんなに楽になるならずっと続けていきたいと思った。

ただ、そううまくはいかないのである。

食欲が戻ったのはよかったのだが、人間の欲求はそれだけではない。

寝るのももちろん幸せなのだが、もう一つ厄介な欲があったのだ。


そう、お酒を少し経ってから、そいつにとても困らされている。

すごく元気になったし、たまに友人とお酒を飲むと近年稀に見る楽しさだ。
しかし、元気が余りに余ってすぐ女の子のことを考えるし、夜の店のことを考える。

夜の店にも実際何度か行った。死ぬほど楽しかった。

それから僕は頻繁にそういうことを考えるようになった。
妻がいるのにマッチングアプリに登録したり、風俗嬢の日記を読んだりした。

しかし、まだ今はその程度の段階なのである。

ここから先、踏み出してしまったら、壊してしまうものがたくさんある。それはわかっている。

でも、頭で考えるより先に刺激を求めてしまうのだ。

僕はこれからも「プチ禁酒」を続けようと思う。
この余計な欲のことを差し引いてもメリットが大きいからだ。

しかし、これによって失うものが出てきたら?

それは本当に皮肉で情けないことだと思う。
でも、僕は僕を止めることができない。

#創作大賞2024


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