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顧客へ寄り添う一貫した姿勢。IKEUCHI ORGANIC から学ぶファンコミュニティ

 こちらはコミュニティの教室:第4期イベントレポートになります。

 今回お話を頂いた牟田口さんが勤めるIKEUCHI ORGANICは、ファンマーケティングの文脈で紹介されることも多く、「日経MJ」においても「進化するファンマーケティング」として取り上げられるなど注目を浴びています。

 そして牟田口さんが立ち上げられた「イケウチな人たち。」という新しい形のオウンドメディアの運営チームは、IKEUCHI ORGANICが好きな社外の人を巻き込みチームをつくっています。

イケウチオーガニック

牟田口 武志 (Mutaguchi Takeshi)
IKEUCHI ORGANIC 株式会社 営業本部長。大学卒業後、映画制作会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、アマゾンジャパンを経て、2015年7月にIKEUCHI ORGANICに入社。WEB担当、広報を経て、2019年2月にオウンドメディア「イケウチな人たち。」を立ち上げる。
「イケウチな人たち。」は、私たちが好きな人たちと、これからの豊かさについて考えるウェブメディアです。 

 前回の6curryに引き続き、IKEUCHI ORGANICについては、ファンだと公言している方が周りにいたり、オウンドメディアに関わるライターさんも魅力的で、あたたかく、柔らかな雰囲気が漂っていたりと、気になっていたブランドのひとつでした。

 受講生のチェックインの際にも、そんなIKEUCHI ORGANICのブランディングや、製品づくりについてや、「2023年までに赤ちゃんも食べれるタオルを作る」とは何事か?という興味津々な声が出ていました。

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(コロナウイルス流行のため、オフラインでの参加は少数での開催)

 今回そんな新しいブランドの形を作っていかれている、IKEUCHI ORGANICの活動から見えたファンとの関係性づくり、ひいてはそのコミュニティのエッセンスについてシェアできればと思います!🌱



1、IKEUCHI ORGANICとは

 「最大限の安全と最小限の安全負荷でテキスタイルをつくるトータルオーガニックライフスタイルカンパニー」を掲げている愛媛の今治を拠点としている主にタオルを扱うメーカーです。

(↑公式HPとブランドムービー) 

下記の3つのポイントを軸にご紹介します。

(1)素材へのこだわり
(2)最小限の環境負荷
(3)最大限の安全

(1)素材へのこだわり
 タオルのもとになるコットンは通常、大量の農薬や枯葉剤、種の遺伝子組み換えを行っているそうです。

 しかし、IKEUCHI ORGANICでは①遺伝子組み換えでない種を用い、②3年以上農薬、化学肥料を使用していない畑で栽培され、③生産農家ともフェアな条件(コットンを取引するのはインド、タンザニアなどの途上国。そのため農家さんの生活を保障するためにも、契約農家で単年でなく長く取引をしている)で取引されたコットンを使用しているそうです。

 これがIKEUCHI ORGANICのオーガニックの基本3要素であるようです。


(2)最小限の環境負荷
 製造工程においてももっともエネルギー消費量が多いのが、染色過程。その際に、人体に安全かつ環境負荷の少ない染色を目指すローインパクト・ダイという考えに基づいてタオルを染色しているとのことです。

 例えば、染色の際には大量に水を使用するため、その水をきれいにして海水に流すようにしているなど。素材だけでなく、作る工程にもこだわっていらっしゃいます。


(3) 最大限の安全
 創業から60年かけて、全製品を赤ちゃんが口にしても安全な国際認証を取得されたそうです。食品会社がとるような認定を取得した、タオルメーカーとして世界的にみても珍しい事例とのこと。

 次の60年は、食べても味がして美味しいタオル作りに挑戦していらっしゃいます。それほど安全なタオルを届けていらっしゃいます。

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(「次の60年は赤ちゃんが食べれるタオルを作る」には牟田口さんも驚かれた!とのこと。)

 日本にこんなにも自然環境や人に配慮したプロダクトを作っているメーカーがあるのだと感銘を受けました。


2、「中長期的な」ファンとの関係性づくり

 数時間の講演ではありますが、「ファンを大事にして、中長期的な関係を継続的に築いていくこと」がIKEUCHI ORGANICのファンづくりになっているように感じました。以下の4つのポイントからお伝えします。

(1)90分語れるプロダクト
(2)こだわりの発信
(3)「1対1」コミュニケーションを重視
(4)リアルなイベントを大事にする

(1)90分語れるプロダクト

「お客様の前で90分間、商品を説明できないタオルはダメ」

 池内オーナーの言葉だそうです。1つの商品に対してそれだけ思いをこめて作っていらっしゃり、ファンづくりが目的ではなく、商品へのこだわりが先にあることが分かります。

「たくさん売る < 長く使ってもらう」

 牟田口さんの言葉。たくさんの商品を売ることを目的にするのではなく、地球のためにも人のためにも1枚のタオルを長くタオルを使っていただけることを大事にされているそうです。

 生産段階からこだわり、更にメンテナンスの方法までnoteでお伝えしていらっしゃいます。

「5年ほど使えるようないいタオルでも使い方によっては半年ほどで使えなくなってしまう。なのでどの洗剤がいいのか、干し方、さらには洗濯機などまで伝えています」とのこと。

 大量生産、大量消費ではなく、環境・ひとにトコトン優しい商品をつくっていらっしゃり、そして「売っておしまい」ではなくnoteで上記のような情報発信をされたり、一貫していらっしゃることにまた感動しました。


(2)こだわりの発信

「ファンに会うことこそものづくり」

 オーナーの池内さんの言葉。自ら率先して情報発信をされているとのこと。

 (↑池内さんは、2000年初めから、Twitter、FB、ブログ、インスタグラムなどSNSを開設させ率先してファンとコミュニケーションを取っていらっしゃるとのこと。)

 上記のようにこだわって作っているものを、「作っておしまい」ではなく、発信することを重視していることも大事なポイントだと仰っていました。それによりIKEUCHI ORGANICのものづくりに共感するファンが広がっていきます。

 また、noteやオウンドメディアなどを活用し、従来IKEUCHI ORGANICのファンでなかった年齢層にも届くように活用されているとのことでした。


(3)「1対1」コミュニケーションを重視 

 SNSでのこだわりの発信に加えて、「リアルな場」でのコミュニケーションを大切にされていることで、さらにIKEUCHI ORGANICの購買行動自体が価値のあるものになっていると感じました。

「お店は単に購買の場ではなく、コミュニケーションの場所」

だと牟田口さんは仰っていました。

 例えば、こちらは表参道の直営店。

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 そこにはなんと洗濯機が置いてあり、200回以上千洗濯したタオルを試すことができるそうです。

 というのも新品のときはふわふわでも使用感は使い込んでいくと変わっていくものだから、そうやって長く心地よく使ってもらえるものを選んでほしいから。

 さらに、単に商品を眺めるのではなく、ここではタオルソムリエがいらっしゃってゆっくりと対話をしながら選ぶことができます。

 そのような店舗コミュニケーションの際に大事にされているのが、

「売って終わりではなく、売ってからがスタート」

という考え方。

 それが伝わってくる最所あさみさんのnoteを紹介してくださいました。

 案内役のIKEUCHI ORGANICの牟田口さんは本当にタオル愛が凄まじく、あらゆるタオルを触り比べしながら解説してくれた。しかもその範囲はタオルそのもののみならず洗濯やライフスタイルにまで及び、タオルを起点に自分の生活を振り返るような時間だった
 もちろん牟田口さんは接客という意識はなく、私たちのまなびになるような話をしようと努めてくださっていただけだとは思うが、結果的に参加した私たちは全員思い思いのタオルを手にレジへ向かっていた。

 このように顧客に「買わせる」ようなコミュニケーションではなく、一貫して「良い購買体験をしてもらう」関わり方に価値があると感じました。


(4)リアルなイベントを大事にする

 ストアイベントも定期的に開催されている牟田口さん。

 「リアルなイベントって、正直、効率が悪いんですよね(笑)」

 15~40人くらいのお客さんの前でオーナーの池内さんが直接話したり、よなよなエールさんとコラボで「ビールもタオルも味わってみないと分からない」ということでビールを飲みながら、タオルのテイスティングイベントをしたり。

 それらはイベントは、準備時間もかかるし、気をつかうし、人数が集まらないこともあって効率はよくない。

 でもIKEUCHI ORGANICのことを「知っている」だけではなくて、店員・オーナー・ファンと話して、ブランドを大好きになってくれる人が多い。

 だから地道にコミュニケーションをとることを大事にされているとのことでした。

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「イベントに短期的、数値的なKPIを設けていない。面白くなくなってしまうから。」
「お客さんがそこでどんな声をもらすのか、表情をされるのか、テキストや数字だけで伝わらないものを大事にしている」

 と牟田口さん。

 一つ一つのイベントや一人一人との関係性を真摯に築いていかれているのが伝わってきました。

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3、 顧客コミュニケーションの強化

 このように愛される秘密には、経営陣だけでなく全社員が価値を体現し、ピュアな気持ちをもって顧客コミュニケーションをしているからだと思います。その原点はどこにあるのでしょうか。

(1)始まりは全社員インタビュー

 2016年牟田口さんがIKEUCHI ORGANICに入社された当時、「池内オーナーの作るタオルメーカー」という印象が強く、経営陣以外の「人」にフューチャーする必要性を感じたそうです。

 そこで「イケウチのヒト」という全社員インタビューを公開されました。

 作り手と使う人をつなげ、どんな人がどんな思いで作っているのか知ることで、コアなファンの方々が喜んでくださったそうです。

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(↑公式HPからご覧いただけます)


(2)徹底的なおもてなし 

 それをきっかけに、“どういう人が作っているか見えてくる”とファンの方が喜んでくださり、“(今治の工場へ)行きたいです!”という声が自然と集まりました。

 そこで全国からファンが集まる工場イベントが参加者の交通宿泊費+参加費自腹で開催され、4,50人の方が集まったそうです。

 職人さんが作っていらっしゃる様子を間近で体験したり、イベント特注のタオルがサプライズでプレゼントされたり、職員の方と杯を交わして談笑したり。

 とにかく徹底的なおもてなしをされたそうです。

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(3)オーガニックな声を社員一丸となって紡いでいく

 工場イベントをおえて、SNS上でファンからオーガニックな言葉が溢れていったとのこと。特にお願いはしていなかったのに、純な言葉が紡がれていった。

 その後も継続開催され、普段は直接お客様に関わったり、広報担当でなかったりする社員も一丸となって「どうやったら来てくださった方に喜んでいただけるだろうか」と考え、企画されるそうです。

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 このように経営陣、作り手、現場の人などそれぞれがお客さんと顔の見える関係性で繋がっていることもファンコミュニティ強化につながっているように思います。



4、 オウンドメディアによって紡がれるオーガニックな声と繋がり

 このような一貫して環境・顧客への寄り添いが届き、IKEUCHI ORGANICのものづくりや姿勢に共感するファンが広がってきたように思います。

 そしてそんなIKEUCHI ORGANICの価値を伝える手段として考えられたのが、オウンドメディア「イケウチな人たち。」です。

 印象的だったのか「レストランsio」 さん。

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 愛なんですよ。プロと一流の差は愛なんです。プロは、技術があるのは当たり前。一流は技術にプラスして、愛があるんですよ。技術を持っている人はいくらでもいるんですけど、技術をどう使うかというのは、愛なんです。それをやっているのがIKEUCHI ORGANICだし、IKEUCHIORGANICのタオルなんです。
・・・中略
 僕はsioを通じて、IKEUCHI ORGANICの価値を高めたいです。でも、それって、愛がないと先にいけないんです。悪いっすけど、今、僕よりIKEUCHI ORGANICを熱く語れる人はいないっす。僕はこれをバンバン、超イケてるレストランに言っていくんで。いいレストランにはIKEUCHI ORGANIC。標準装備を目指したいです。

 めちゃくちゃ熱い言葉を語ってくださっていますが、言わせているということはなく、実際にお会いしたらこの3倍の熱量で伝えてくださるそう。笑

 sioさんではイケウチ愛に溢れるオーナーが、レストランで食事をされた方にIKEUCHI ORGANICのハンカチをプレゼントし会社の説明もされるとのこと。(!)

 また、このメディアに出た人同士で繋がり、関係性が生まれていったそうです。

 例えばレストラン、美容師、銭湯、イラストレーターなど異業種でも「IKEUCHI ORGANICが好き、IKEUCHI ORGANICのタオルを使っている」という共通項で繋がり、サービスを受けに行ったり、来てもらったりが行われているそうなんです。

 さらに「イケウチな人たち。」にでた美容師さんは、ホットペッパーや検索エンジンに加えて「IKEUCHI ORGANIC」というきっかけで来店する方も増えたそうです。

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目指すゴール=「イケウチな人たち。の輪が広がっていき、イケウチオーガニックのブランドが広がっていくこと」

 ブランドのことを自分たちで語るのも良いが、愛してくださっているファンの方々が発信してくださる伝え方を選んだ。

 そのため、ファンの方々が価値を感じもらうために、商品に向き合う、コミュニケーションにこだわる、イベントを行うなど関係性を作っていくのだそうです。

 すぐに結果が出るわけではないけれど、IKEUCHI ORGANICの輪が広がっていくことで環境、ひと、会社も持続可能になる。このような在り方がIKEUCHI ORGANICなんだと分かりました。

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5、さいごに

 情報があふれる時代で何かを選択する際に、手掛かりの一つとなるのが「コミュニティ」の価値の一つであると思います。

 IKEUCHI ORGANICが「コミュニティ」として機能している背景には、タオルそのものが喜ばれているのは勿論、「顧客に寄り添い、中長期的な関係を継続的に築いていくこと」などの姿勢が一貫していることにもあるように思います。

 オーナーも、現場の人も、ファンも、すべての人がIKEUCHI ORGANICの価値観を話し、それに沿った行動を取っている。その文化への信頼感があるからこそ、「イケウチな人たち。」は繋がる安心感・期待感が生まれ、発展性のあるコミュニティとなるように感じます。

 そして、このことが実現できたのも、一長一短ではなく、綿密な顧客コミュニケーションの先に形成されたものであり、オウンドメディアにより可視化し繋がりを紡ぐことで更に広がっていっていると学びました。

 本質的なことをブラさず、真摯に地道に行動すること。それはどこにいっても大事で人に伝わっていくことなのだと改めて感じました。

 豊かな時間をありがとうございました!!!!🌱🌱



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(集合写真)「イケウチ~😊🤗」の笑顔です!

コロナウイルスの影響で在宅ワークになって寂しかったり、企画していたイベントが次々なくなったり悲しい気持ちもあったりした日々でしたが、IKEUCHI ORGANICの取り組みを学び、真摯な思いが伝わりホクホク温かい時間になりました🌱🌱🌱


(みなさんの感想)

(なんと!イベント後にサプライズで受講生に、IKEUCHI ORGANICのハンカチをプレゼントしてくださいました.....感謝😭!!)


次回の講義は、コミュニティプラットフォーム「OSIRO」の杉山さん。

またまた、楽しみです🔥🔥🔥!!!!



~2020年4月追記~

コミュニティの教室、第5期の募集をしています!

今期は、全編オンラインで開催し、オンラインコミュニティの育み方にも着目していきます。

 コミュニティ最前線にいるゲスト、そして仲間と共に、今求められるコミュニティについて、探求しませんか?




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