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歌の種類の壁


Chère Musique


先日、とある若い方との会話の中で、気になったことがありました。
シニアの歌講座で昭和歌謡の大ヒット曲を取り上げたことについて、ちょっとした疑問を投げかけてこられたのです。

その時はとっさにその方の言う意味がわからず、「そうですか?。。。」なんて答えましたが、その後よく考えてみると、あまり良くない会話だったことがわかってきました。

前後の状況などを合わせて今思い返すと、その方が言いたかったのは

「高齢者の歌は唱歌か童謡‘でイイ’んじゃないの?」
またはまったく逆に
「もっと高尚な曲にすればいいのに、歌謡曲なんて。。。」
のどちらかだと思います。

シニア歌講座のコンセプト

私はこの65歳以上の方々のための音楽講座のお仕事を始めて10年弱になりますが、初めからずっと
「音楽の種類の違いを、壁を作らず線だけ引いて、いろいろな面からその違いを楽しむ」
ということを、いくつかあるコンセプトの中のひとつとして貫いています。
これはシニアに限らず、私のおこなう音楽レッスンすべてに、この考え方が土台としてあります。

この他にシニアならではの目的としては、一番大切なのは「歌うことが心と体の健康につながる」ということ。
これは絶対に考えの中心にあります。
ですから、高齢者の方ならではの体調の特徴や、認知症の予防についても、きちんと勉強していますし、たくさんのシニアの方とお話しして、さまざまな状況とその中でのお気持ちを、自分なりに理解できるようになりたいと心がけています。

カリキュラム

カリキュラムはそれぞれそのクラスを開催する主催者の目的によって、考えて作っていますが、今日の話題のこの歌講座では

日本歌曲
子どものための歌
外国の歌
歌謡曲
という四本立てに
毎回歌うメッセージソングの名曲を二曲加えて、計六曲。

まず初めに音楽体操などで心と体をリフレッシュしてから、発声練習をして、それから歌に入ります。

日本歌曲

日本歌曲のコーナーでは主には発声法と表現。
実際にその場でその受講される方々が出来るかどうかはあまり追及しませんが、結構本格的な内容をお伝えします。
そして大切にしているのが詩の解釈。
ここに一番時間をかけます。
日本の歌曲の歴史背景についても少しお話しすることもありますし、作詞者や作曲者の紹介も詳しくします。
これらのことを深く学んでいただきながら、情景を思い浮かべて気持ちを込めて、良い声で歌っていただきます。

子どものための歌

子どものための歌のコーナーでは、日本古来の名曲を知らない現代の子ども達、という昨今の状況を憂いて、私たち大人が機会あるごとに歌ってあげられるように、という目的。
とはいえ簡単な歌ばかりなので、ついでにと言ってはなんですが、歌いながらソルフェージュの基礎をゲーム式にやったりもします。
拍子についてやリズムについてのゲームを、マラカスを使って行うのですが、これがちょうど良い脳トレにもなって、皆さん大騒ぎしながら楽しんでくださいます。

外国の歌

外国の歌というコーナーでは、“日本語訳詞”という芸術を体験する目的で、世界中のさまざまな国の名曲を日本語で歌います。
外国の歌なら何でも、ジャンルを問わずその季節にあった選曲です。
この訳詞というのは私の研究分野のひとつでもあります。
そこからその国の文化を、学ぶというほどではありませんが、垣間見て楽しみます。

歌謡曲

歌謡曲というコーナーでは、昭和歌謡から現代のJ-POPまで、演歌やフォークソングも含めた中から、誰もが歌える大ヒット曲を歌います。
テレビの歌番組のように、振り付けや演出をして、歌割りまでして、楽しんでいただきます。
それらの決め事を覚えようとすることも脳トレの一種。
私の本来の専門である「身体表現音楽」の内容も、実はそこに散りばめられているのです。

中には軽快に歩くことが難しい方もいらっしゃるので、その点にはもちろん配慮して、安全第一で行っています。

ジャンルによる違い

これらの‘歌の種類の違い’には、たくさんの注目すべき点があります。

まずジャンルによっては発声法がまったく違うこともあります。
クラシックの声楽並みの専門的な発声法もあれば、それをマイクに入れるのに適した響かせ方にする方法も。
それぞれの発声法での体の使い方の基礎を含め、解りやすくお伝えします。

ノリという面でも、リズムの正確さを求める度合いが、ジャンルによって大きく違います。
そして「上手な人」になれるための表現方法はもっと大きな違いがあります。


カラオケ教室、童謡を歌う会、シャンソンクラスなど、ジャンルを区切った歌のレッスンは世間にたくさんありますが、ここでは違います。
どのジャンルも楽しめて、その違いを比べることもまた興味深い、と思っていただきたいのです。

一人で考えていると、歌うのはどうしても一つか二つの種類に偏りますが、ここでは自分からは歌おうと思ったことがなかった種類の音楽に触れることもあり、その点で皆さんとても喜んでくださいます。

エンディング

そういう内容のレッスンですから、昭和歌謡ヒットソングを歌うことは、なんの不思議もないこと。

「高齢者は唱歌でイイ」または逆に「大衆的な歌は教えなくてもイイ」という考え方は、どちらもとても狭いものだと思いますが、もしかしたら20代30代の若い方にはこういう方が多いかもしれないですね。


いろいろな意味において音楽と一体になることで、カラダとココロの健康を保ち、日々のちょっとした幸せに繋げる。

私の音楽レッスンは、どんな世代に対しても、いつもそこを基盤にして成り立っていたいと思っています。

Musique, Elle a des ailes.

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