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数種類のリハーサル

Chère Musique

イントロダクション

二年に一度の生徒さんの演奏会ラフェットに向けて、何回かに分けてリハーサルをします。

正確には「リハーサル」というと、演奏の中身よりも舞台の進行の面を本番どおりにやってみることを指します。
その中でも本番前日などの近い日に最後に行うものを「ゲネプロ」といいます。

ですが音楽の分野では、本番の前日や当日開演前にその舞台でスタッフなどの人前で演奏してみることを指す感覚で、この言葉を使っている人も多い気がします。

私たち音楽教室にとってもリハーサルと言うと、舞台進行や音響や照明などの面よりも、演奏者のためのものという感覚です。
私の主宰する音楽アトリエでも、生徒さんが本番少し前の時期に、人前でドキドキしながら本番と同じように演奏してみることを、リハーサルと呼んでしまっています。

ホールリハーサル

そんな私たちが、ラフェット本番と同じホールで行う“ホールリハーサル”。
他の楽器は持ち込みませんが、メインのピアノは本番と同じものをお借りして。
対象演目は、クラシックのピアノソロ、声楽曲のソロや重唱、弾き語りソロ、そして大勢で歌う合唱などの歌。
声楽と合唱の演目では、本番と同じピアニストの先生が伴奏に来てくださいます。
弾き語り演目は、マイクはダミーでコードを繋がずに置き、ピアノの感触を確かめる目的で。
対象出演者のほとんどの生徒さんが参加します。

管楽器や弦楽器と違ってピアノは、マイ楽器を持って歩くわけには行きません。
そのホールの楽器がどんな音を持つどんな感触のピアノなのかを確認するのに、大切な機会です。
その音を耳に染み込ませ、ペダルの踏み応えも含めて、いろいろな感触を確認します。

声楽の生徒さんにとっても大切な機会。
ホールによって声の響き方がまったく違うので、どんな会場なのかを体で感じるのです。
ホールの広さと響き具合、舞台から客席がどんなふうに見えるか、というようなことを味わっておくことも大切です。

そしてただ一回通して演奏するだけではなく、通し演奏含めて一人15分くらいの公開レッスンを、お仲間の参加者をお客様に見立てて、受講してもらいます。

チェンバロリハーサル

ラフェットでは、バロックの部で電子チェンバロを使います。
数少ない貴重なものなので、本番しかお借りできません。
ですから、私の勤務先であるそれを所有する渋谷の音楽院のレッスン室で、チェンバロソロ演目だけの、お互いに聴き合う会。
チェンバロ演奏というのは、音楽教室の発表会ではかなり特別な世界ですから、本当に好きな人たち、興味を持った人たちです。
ですからお互いの演奏を聴き合うのがとても楽しい経験になると思います。

二台ピアノリハーサル

そして二台ピアノの演目だけのリハーサル。
今年は一台しかないホールで本番ですので、デュオの人達は連弾で出演してくれますが、二台借りられる年には皆さん必ず二台ピアノ演奏を選びます。
本番のホールでのリハーサルでは、二台借りるととてもコストが跳ね上がるので、申し訳ありませんがいつもこの方々だけ別のスタジオで行います。
ピアノが二台使える広めのスタジオというのはとても少ないので、探すのもひと苦労。
二台ピアノ演目に参加する人だけでお互いに聴き合うので、とても興味深く楽しめるリハーサルになります。
こちらも各組15分くらいの公開レッスン形式にします。

アンサンブルレッスン

バンド演奏と大人数でのアンサンブル、そして生徒さん全員出演の歌の演目のために、本番二ヶ月前くらいから数回集まります。
このような演目では、それまでの間は一人一人に対してその曲のその人のパートをレッスンで見てあげているので、その時には一応みんな演奏できるようにはなっているはず。
それらを合わせてみるレッスンです。
合わせた時にしか言えないアドバイスがたくさんあるので、皆さん張り切って集まって来てくれます。

本番当日

そして、当日の本番直前の時間帯に、そのアンサンブルレッスンで合わせておいた演目を、音響の機材とスタッフさんがリハーサルしてくれます。
これは各楽器やマイクなどの音量バランスを見ていただいたり、ということがメインとなります。
同じように音響の意味で、ソロでもマイクを使う方達の演目もやります。

そしてもちろん全体の進行を確認する「ゲネプロ」も合わせて行います。

というふうに何度かに分けて、目的や条件が変わってのリハーサルを行います。
本番までまだ日がある時のリハーサルは、そこでの経験がその日から当日までの練習内容に大きく関わってきますので、そこで急速に仕上がっていく方が多いですね。
自分がどのくらいドキドキしてしまうのかを知る、良い機会にもなるようです。

プロにとっての「リハ」

さてここまでが、私たち音楽アトリエ“ヴォアクレール”の生徒さんの発表会的な演奏会のリハーサルのお話。
同じリハーサルという言葉を使っていても、プロの演奏家の世界では、冒頭に書いたような正確な意味に近くなります。

いろいろな楽器のソロリサイタルなどでは、当日の会場で、ピアノなら楽器を確かめ、他の楽器や歌なら会場の響きを確かめる作業。
かなり長い時間やる人も多いです。

プロのバンドやオーケストラなどが舞台本番に向けてやるリハーサルと呼んでいるものは、その内容は生徒さんでいうところの「合わせ練習」です。
なので、本番一ヶ月くらい前から、または舞台の多い団体だと一週間前くらいから、大体二回から三回くらい集まります。

事前に、楽譜が行き渡り大体の演奏進行を連絡し合っておいて、その数回のリハーサルの初日に、お互いの演奏内容を確かめ合い、テンポを決め、表現のコンセプトを確認して、バンドならソロ回しなどの進行や場面構成などを決めます。
オーケストラなら、指揮者の音楽作りと解釈をそこで初めて伝えられるのです。
どんな人たちと、どんな音楽を作り上げて、どんな目的のために、どんな表現をするのか。
そのリハーサルですべて一から始めて、完成させてしまうのです。
ですから一回目には、それぞれ個人の技術的な演奏内容は、それまでの個人練習で完全に出来上がっている状態で集まります。

プロどうしで「リハ」と言って話しているのは、合わせ練習の最後の仕上げを、初めて集まったその場でやってしまうことを指しているのです。

エンディング

「リハーサルとゲネプロはどう違うの?」
「リハーサルって言っているのになぜ何日も集まるの?」
というようなご質問をよく受けます。

そして生徒さんの演奏会では、いつどのリハーサルをどこでするのかのスケジュールを今の時期に立てるので、プロにとってのリハーサルと音楽教室の一例を書いてみました。

Musique, Elle a des ailes.

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