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映画レビュー『ロッキー』(1976)このおもしろさを知らない人は人生を損している

※3000字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。


偉大な功績を残した名作

映画好きを公言しておきながら、
いくつかの超有名作品を
観ていない私です。

『ロッキー』もその一つでした。

子どもの頃に『ロッキー4』を
観たことがあったのですが、
それ以外の作品は
観たことがなかったのです。

名作と言われる作品ですから、
いつか観ようと思いながら、
ずっと先延ばしになっていました。

そして、満を持して観た
1作目の『ロッキー』は、

実際に観てこそ、
「名作」と称されるゆえんが
よくわかりました。

これは、まごうことなき
「名作」です。

私と同じように、
まだ観ていない方がいるのなら、
すぐに観た方がいいでしょう。

そう言いたくなってしまうほど、
この作品は多くの魅力に
溢れていました。

無名の俳優だった
スタローンが手掛けた脚本

まず『ロッキー』のことを
あまり知らない方のために、
この作品が残した功績を
紹介しておきましょう。

本作は'76年に公開され、
翌年のアカデミー賞において、
作品賞、監督賞、編集賞を
受賞しています。

(その他にも、
 ゴールデングローブ賞も受賞
 〈ドラマ作品賞〉)

'06年には、
米国連邦議会図書館によって、
アメリカ国立フィルム登記簿に
登録されました。

アメリカ国立フィルム登記簿
アメリカの
「国立フィルム保存委員会」が
半永久的な保存を推奨している
映画・動画のリスト。

このように輝かしい功績を
残したヒット作なので、
それが当たり前のように
感じられるかもしれません。

しかし、『ロッキー』は、
公開前はそれほど注目された
作品ではなかったんですよね。

監督のジョン・G・
アヴィルドセンは、
B級映画を多く撮ってきた
監督でしたし、

脚本を手掛けたのは、
主演を務める
当時無名だったスタローンです。

そう、この作品の
脚本を書いたのは、
スタローンなんです。

(私はこんなことすら、
 数年前まで知らなかった)

当時のスタローンは
'70年にデビューして
6年目の俳優で、30歳でした。

やはり、彼も不遇の時代を
過ごしていました。

ひどい時には、
アパートを追い出され、
ホームレス生活をしていた
時代もあったそうです。

そんな中でも、
俳優活動、アルバイトを
続けながら、

図書館に通って脚本を書く
スキルも培ったようですね。

『ロッキー』自体も
低予算で作られた作品
だったのです。

しかし、何度も言いますが、
これは紛れもない名作で、
「低予算」を感じさせない
作品になっているんですね。

このおもしろさを
知らない人は人生を損している

本作のストーリーも
スタローンの境遇を
反映したようなものでした。

主人公のロッキーは、
ボクサーではあるのですが、

サウスポーであることなどが
災いして、
あまり試合を組んでもらえず、
不遇の時代を過ごしていました。

(多くのボクサーは
 やりにくいので、
 サウスポーを
 相手にしたなくない)

ボクサーとしての収入では
生活が成り立たず、
高利貸しの集金係もしながら、
ボロアパートで暮らす日々です。

言ってみれば、
街のゴロツキとなんら
変わらない生活です。

そんな彼を見かねた
ボクシングジムのトレーナーは
彼のロッカーを他の選手に譲り、

ロッキーをジムから
追い出してしまいます。

ボクシングの試合はできない、
金もない、
ジムからも追い出される、

踏んだり蹴ったりの生活の中、
彼が唯一、憩いを求めたのは、
ペットでした。

ロッキーは亀と金魚を
飼っているんですね。

そのペットのエサを飼うために
毎日のように、
ペットショップに
顔を出していました。

(もちろん金がないので、
 エサ代も踏み倒す(^^;)

彼はペットショップに勤める
友人の妹に心を惹かれていました。

メガネをかけた
無口で真面目な印象の
女性です。

「ロッキーって、
 こんな地味な女性が
 タイプなんだな」
と思っていたら、

なんと、これがかの有名な
エイドリアンでした。

のちの作品では、
もっと垢ぬけた印象の
女性だったので、
ビックリでしたね。

(最初はこんなだったのね(^^;)

仕事をするでもなく、
トレーニングをするでもなく、

ただただ高利貸しから
言いつけられた集金業務を
こなしながら、

エイドリアンに
アプローチする日々が
続きます。

やがて、そんな彼のもとに、
一つのチャンスが
舞い込みました。

ヘビー級の世界チャンピオン、
無敗のアポロ・クリードが
対戦相手として、

無名のロッキーを
指名してきたのです。

なぜ、アポロが
無名のボクサーを
指名したのかというと、

どんな者にでも
チャンスがあるというのを
示したかったからです。

しかし、アポロにとっては、
最初から勝利が
決まっているような
試合でもあります。

最初からアポロは、
ロッキーを真面目に
相手にしてはいないんですね。

ロッキーにとっては、
またとないチャンスです。

ここからロッキーの
特訓の日々がはじまります。

前半のダメなロッキーとは
打って変わり、
真面目モードに入るんですね。

その転換点にあるのが、
ロッキーがはじめて
早朝のロードワークに出る
シーンです。

ここであの有名な
メインテーマが流れるかと
思いきや、

ひたすら静かな
渋い音楽が流れます。

このシーンがめちゃくちゃ
かっこいいんです。

私の中では、
一番印象に残ったシーンですね。

まだ夜が明けきっていない
寒空の下をロッキーが
一人で走るのですが、

最初のロードワークでは、
終わったあとに、
わき腹を押さえ、
辛そうにしていました。

ここがとても
リアルなんですね。

私はロードワークなど
したこともないですが、

「男には頑張らなければ
 ならない時がある、
 わかるぞ、ロッキー!」

と思わず画面に語り掛けたく
なってしまいました。

時にはこういう静かな朝が、
男にはあるんですね。

ここからしばらく、
ロッキーの地道なトレーニングの
日々が続きます。

なんと言っても、本作は
このトレーニングシーンが
いいんですよね。

当時、これを観た多くの男性は、
真似したことでしょう。

ジョッキいっぱいの
生卵を飲んだり、

精肉工場の吊るし肉を
叩いたり
(それはないか(^^;)

その気持ちは痛いほどに
わかりますね。

そして、迎えたアポロとの
試合の当日、

ロッキーは夜明け前に
試合会場を一人で
見に行きます。

すでにリングが整えられ、
両サイドの会場の壁には、

アポロ、ロッキーの姿を
描いた大きな幕が
飾られていました。

自宅のベッドに戻った
ロッキーは隣に居た
エイドリアンに

「試合に勝てるわけがない」
と弱音を吐き出します。

ここがまたリアルなんです。

普通の作品だったら、
ここは強気な主人公だけを
見せると思うんですが、

敢えて、恋人の前で、
弱い自分を出してしまうんですね。

そして、彼は、とにかく
「15ラウンドを戦い抜く」ことを
決意します。

果たして、アポロとの
試合の結果は、
どうなるのでしょうか。

もちろん、この試合のシーンも
素晴らしい出来栄えで、

本物のボクシングの試合に
匹敵するほどの
緊張感が表現されていました。

最後に言っておきたいのは、
『ロッキー』は

「これを観ていない人は、
 人生を損している」
と言いたくなってしまうほどの
名作だということです。


【作品情報】
1976年公開(日本公開1977年)
監督:ジョン・G・アヴィルドセン
脚本:シルヴェスター・スタローン
出演:シルヴェスター・スタローン
   タリア・シャイア
   バート・ヤング
配給:ユナイテッド・アーティスツ
上映時間:119分



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