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ジャズ/フュージョン 名盤10選(私選)

ジャズのことを知ったのは、中学校の音楽の授業でした。

中学時代の音楽の先生は、私が卒業するのと同時に、定年退職するほどの年齢で、『鉄腕アトム』のお茶の水博士、もしくは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクと同じヘアスタイルがチャームポイントだったんです。

その先生には、音楽のいろんなことを教わりましたが、中でも、先生がしたジャズの説明はわかりやすくて、おもしろかったですね。

先生いわく、「ジャズはメロディーを口ずさめるような音楽ではない」「即興演奏である」というのが大きなポイントでした。

一つ前の記事『振り返れば俺がいる』でも書きましたが、そんな時代から7年ほどの歳月を経て、二十歳の青年となった私は、はじめてジャズに触れました。

生まれてはじめて聴いたジャズは「これがあの時の授業で先生が言っていたやつか」と感慨深いものがありました。

そこから、さらに時代が過ぎ、20代の終盤に差し掛かった頃、私が10代の頃から心酔していた坂本龍一が、『スコラ 音楽の学校』という番組をはじめました。

その中で、ジャズを取り上げた回があり、私はジャズの歴史を知ることになったのです。

ジャズは、19世紀末にアメリカで生まれました。

当時のアメリカでは、奴隷貿易というものがあったのです。アフリカから黒人を連れてきて、奴隷として働かせていました。

今となっては、人類の忌まわしい歴史の一つですが、そこで西洋音楽とアフリカの黒人音楽の出会いがあり、ジャズが生まれたのですね。

その後、ジャズはアメリカ国内のみならず、世界中の音楽に多大な影響をおよぼすものになりました。

そして、ジャズは’70年代に、電子音楽やロックとも結びつき、フュージョンと言われる新しい音楽にも派生しました。

それほどたくさんのジャズ、フュージョンを知っているわけではありませんが、これまでに聴いてきたアルバムの中から、個人的に好きなものを選出してみます。

①『Kind of Blue』Miles Davis('59)

それまでのジャズでは、一般的だったビバップから脱却し、モード奏法を確立した名盤。ビバップは、極限まで音を詰め込み、常人離れした演奏力を競うようなものだったのに対し、モード奏法は、ゆるやかな演奏で、メロディーをしっかり聴かせるものだった。マイルスだけでなく、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ、ビル・エヴァンスといった豪華な布陣も◎


②『My Favorite Things』John Coltrane('61)

コルトレーンがマイルス・デイヴィスのバンドを離れ、リーダー作品に注力しはじめた時代の作品。表題曲はミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌であり、このカバーはコルトレーンの代表曲の一つでもある。マイルスのバンドに入ったの頃のコルトレーンは、自信なさげにマイルスに「どう演奏すればいい?」などと質問をし、叱責を受けたというエピソードもある。しかし、このアルバムで聴こえてくる音には、そんな気弱さは微塵も感じられない。とにかくパワフル!


③『Maiden Voyage』Herbie Hancock('65)

ハービー・ハンコックもマイルス・デイヴィスのバンドに在籍していたことのあるアーティスト。鍵盤楽器の奏者であり、70年代以降はエレクトロなイメージが強い彼だが、もちろん、60年代はスタンダードなジャズのスタイルだった。同時期の『Speake Like a Child』もそうだが、この頃の彼のアルバムは、ピアノよりもホーンセクションの美しさが、俄然目立っている。自分の演奏よりも全体のバランスを重んじる奏者なのだろう。


④『Heavy Weather』Weather Report('77)

ウェザー・リポートは、’71~’86年に活動していたアメリカのジャズ、フュージョンバンド。本作は50万枚を売り上げた、グループ最大のヒット作でもある。バンドの絶頂期とあって、とにかく、アンサンブルが素晴らしい。どの楽器が主役というわけでもなく、すべての音色のバランスが絶妙な仕上がり。わかりやすいメロディーの良さ、アルバム全体のドラマチックな構成も印象的。


⑤『Light As A Feather』Azymuth('79)

アジムスは、ブラジルのジャズ・ファンク、フュージョンバンド。オリジナルアルバム3枚目となる本盤は、イギリスでも好セールスを記録。④『Fly over the Horizon』は、日本のラジオ番組『クロスオーバーイレブン』のテーマ曲にも採用され、人気を博した。ブラジルのバンドでありながら、ブラジルらしい要素はなく、ベースはファンキーで、リズムはアフリカっぽいポリリズム。


⑥『KYLYN』渡辺香津美('79)

’71年にデビュー、超絶な演奏テクニックで、たちまち「17歳の天才ギタリスト」と言われるほどに。この年には、坂本龍一、矢野顕子、村上秀一らと親交を深め、「キリンバンド」を結成(本作にも参加)。本盤もなんといっても、凄まじいほどの渡辺香津美のギタープレイが聴きどころだが、作曲も手掛ける坂本、矢野の楽曲に、それぞれの持ち味が出ているのもおもしろい。④はマイルスのカバー曲。


⑦『Word Of Mouth』Jaco Pastorius('81)

35歳の若さで亡くなった天才ベーシスト、ジャコ・パストリアスの2枚目のアルバム。ちなみに、ジャコはウェザー・リポートに在籍していた時代もある。地味なベースを花形楽器にまで押し上げたジャコなだけあって、ベースの聴きどころも多い。しかしながら、本盤も一つの楽器の音色よりも複数の楽器のハーモニーが何よりも素晴らしい。②はウェザー・リポートのカバーだが、ビッグ・バンド編成で、壮大なアレンジが感動的。


⑧『Jazz Funk』Incognito('81)

イギリスのアシッド・ジャズバンド、インコグニートの1枚目のアルバム。のちのインコグニートの作風と比べると、かなりフュージョン寄りのサウンドで、’81年の作品にしては時代を先取りした感がある。電子音と生楽器のバランスが絶妙。


⑨『Peace With Every Step』Build An Ark('04)

ビルド・アンド・アークは、’01年に結成されたアメリカのジャズバンド。リーダーのカルロス・ニーニョは、インストヒップホップデュオ、アモンコンタクトのメンバーでもあって、ヒップホップによく見られるクロスオーバーな作風が発揮されている。①ファラオ・サンダースのカバーにはじまり、R&B、ブルース、レゲエ、ラテンなど幅広い音楽のエッセンスを見事に融合。


⑩『SCENES』bohemianvoodoo('12)

ボヘミアン・ブードゥーは、’08年に結成された日本のジャズバンド。本盤は、彼らの2枚目のアルバム。ジャズというと、小難しいイメージが拭えないが、彼らの演奏はシンプルでわかりやすい。メロディーの一つひとつが美しく、それらが重なるハーモニーも実に心地いい。ジャズをベースにしつつ、ブラジル音楽、R&B、ファンクなど、様々な要素が取り入れられている。


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