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映画レビュー『そして父になる』(2013)人によって「正解」が異なる問題

海外でも評価された是枝作品

6月2日から
映画『怪物』が公開されています。

『怪物』は、音楽が坂本龍一、
生前最後のアルバムとなった
『12』が使われているのと、

私のお気に入りの女優、
高畑充希が出演しているので、
確実に劇場で観る作品です。

しかし、映画好きを
公言していながら、

『怪物』の監督である
是枝裕和監督の映画は
一つも観たことがないんです。

(是枝監督のテレビドラマは
 観たことがある)

これは由々しきことだと思い、
はじめて是枝監督の
映画作品を観ました。

有名な作品なので、
今さら詳しいことを
説明するのも
はばかられるくらいですが、

簡単に言うと、
二つの家族があって、
それぞれ同じ日に生まれた
子どもがいました。

その夫婦の子どもが
実は生まれた時に
取り違えていたという話です。

それぞれの子どもは
すでに6歳になっており、
小学校に入学する
歳になっていました。

「さぁ、どうしようか」
というところを
本作で描いています。

人によって「正解」が異なる問題

ストーリー的には、
「社会派」ですよね。

実際、過去にニュースでも
この手の話を取り上げられていたのを
見た記憶があります。

6年間育ててきた我が子が、
実は他人の子だったとすれば、
どうするか悩むのは
当然のことです。

夫婦は二人、この場合は、
それぞれの親が
4人いるわけですから、

それぞれ思うことは
違ったりもします。

「6年も育ててきたのだから
 もう自分たちの子だ」

「いやいや、
 血が繋がっているのが
 本当の子だろう」

どれが正解とも
言えない問題ですね。

人によって、捉え方が違います。

特に、こういう価値観の違いは、
本人がどういう環境で育ち、

どのような人生観を
持っているかで
大きく違ってくるでしょう。

私なんかは結構、
いい加減なタチなので、
この登場人物たちの
立場になったら

血の繋がりよりも
長く過ごした時間の方を
優先する気がしますが、

実際にそうなってみないことには、
やはり、実感はわからないものです。

子どもたちの戸惑い

本作のおもしろいところは、
それぞれの家庭の環境が
大きく異なるところでしょう。

主人公の野々宮(福山雅治)は、
一流企業に勤めるエリート社員で、
やはり、由緒正しいお家柄です。

こういう人は、
「血縁」を大事にするのは、
当然のことでしょう。

一方の斎木(リリー・フランキー)は、
町のしがない電気屋で、
取り違えた長男以外にも
下に二人の子どもがいて、

古い一軒家に祖父も含めた
大家族で過ごしています。

当然のことながら、
それぞれの家庭環境は
まったく異なりますよね。

それでも、彼らは、
血の繋がった我が子を
一旦は「自分の子」として、
迎え入れるのです。

しかし、子どもの立場に立てば、
こんなに残酷な話はありません。

「明日から向こうの
 おじさん、おばさんが、
 お前のパパとママだからな」

こんな風に言われて、
納得する子どもが
どこにいるでしょうか。

是枝監督は、
子役俳優の使い方が独特で、

セリフを決めずに、
その場で子どもに自然な演技を
リクエストするそうで、

こういった演出方法で、
子どもの葛藤も
うまく描いています。

重たいテーマの
作品ではありますが、
映像も素晴らしく、

観ていてこんなに心地いい映像も
そうそうあるものではありません。

ストーリーだけではなく、
ぜひ、映像の方にも
注目してもらいたい作品です。


【作品情報】
2013年公開
監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治
   尾野真千子
   真木よう子
配給:ギャガ
上映時間:120分

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