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映画レビュー『NO SMOKING』(2019)世界で愛される細野晴臣の音楽

ミュージシャン・
細野晴臣50周年

ミュージシャン・細野晴臣の
音楽活動50周年を記念して
制作されたドキュメンタリーです。

細野さんは’47年、東京都生まれ、
幼い頃から海外のレコードに触れて育ち、
中学時代から友達と
ロックバンドを組んでいました。

’69年、立教大学在学中に
エイプリルフールを結成、
プロデビューを果たします。

その後、日本語ロックの草分け的存在、
はっぴいえんど(’69~’72)

荒井由実(松任谷由実)などの
ニューミュージックの
プロデュースを手掛けた
ティンパン・アレー(’73~’77)

テクノポップで
世界的な成功を収めた
YMO(’78~’83)

といった数々の伝説的なバンドに
中核を担うメンバーとして参加し、
今日に至ります。

雑多なキャリアを凝縮

本作はそんな細野さんのキャリアを
振り返るとともに、

2018~2019年に行われた
ワールドツアーのライブ映像も
収録しています。

キャリアの振り返りとライブ映像を
交互に挟む構成となっており、
この構成が素晴らしかったです。

幼少期からはじまる
70年以上の濃厚な歴史を
ザッと掴むことができます。

昨年は「細野観光」という
展示会も開催されましたが、
そこで驚かされるのは、
細野家の物持ちの良さです。

子どもの頃に描いていた
マンガまでキレイな状態で
残っているんですよね。

YMO を結成する時に
メンバーに見せたメモも
実物が残っており、
本作でも紹介されていました。

そういった歴史的な資料が
たくさん残っているので、
まるで博物館を見学するような
映像になっています。

音楽活動の内容も幅広いので、
まとめるだけでも
大変な感じがしますが、

細野さんらしい遊び心も満載で、
子どもの頃に叔父に教えてもらった
芸の数々(顔を使った遊び)や
ダンスのステップを踏む姿もあり、

細野作のマンガ「夢日記」を
絵本仕立てにしたコーナーも
秀逸でした。

クールなのに熱いライブ映像

キャリアの振り返りも
それだけで充分に
見応えのある内容ですが、

さらに本作には、
ライブ映像も収められており、
そこがまた感動ものなのです。

私自身は、海外に
細野さんのファンが
こんなにもいることは、
最近になって知りました。

特に、アメリカでの
人気が高いのですが、

彼らは、はっぴいえんど以降の
細野さんの音楽を
聴き込んでいるようです。

これは細野さんの音楽に
アメリカの音楽のエッセンスが
多分に含まれているからこそでしょう。

そして、今の細野さんのライブが
何よりもかっこいいんです。

細野さん自身は、
かつて、ライブで歌うことに
抵抗があったようですが、

20年前くらいから、
少しずつソロライブを
やるようになりました。

それを続けることで、
声が出るようになり、
歌うことが楽しくなってきたそうです。

50年ものキャリアがあると、
音楽のジャンルも
非常に多岐にわたっていますが、

細野さんは、どの時代の音楽も
忘れていません。

私が感動したのは、ロンドン公演で
坂本龍一、高橋幸宏が
サプライズ出演し、
YMO の楽曲を演奏した場面です。

若い頃はライブでも
シリアスな印象の強かった三人ですが、
歳を重ねるごとに、緊張感も解消され、
ほどよい遊び心を感じさせます。

また、個人的には、
細野さんの’80年代の楽曲
『ボディー・スナッチャーズ』の
演奏も感慨深いものがありました。

原曲は打ち込みを使ったテクノっぽい
楽曲なんですが、
それをアコースティックで演奏しており、

「この曲はこんなに
 ファンキーな曲だったのか!」
と衝撃を受けましたね。

どんな曲も
アコースティックで演奏すると、
楽曲の骨組みがよく見えるんですよね。

本作を見る限り、
細野さんは、とにかく元気で、
足腰も驚くほどしっかりしています。

次はどんな音楽を聴かせてくれるのか、
これからも細野さんから
目が離せません。


【作品情報】
2019年公開
監督:佐渡岳利
出演:細野晴臣
   ヴァン・ダイク・パークス
   小山田圭吾
配給:日活
上映時間:96分

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