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初心者にオススメの坂本龍一名盤5選

※3000字近い記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

坂本龍一さんがお亡くなりになり、
「今まで聴いたことがなかったけど、
 この機会に何か聴いてみたい」
そんな方も多いかもしれません。

しかし、坂本龍一の音楽活動は、
ソロデビュー作
『千のナイフ』('78)から
数えても45年にもおよぶもので、

作品数も多く、時代によって
作風も大きく異なります。

一体、どこから手を付けていいのか、
悩む方もいるでしょうね。

そこで、この記事では、
二十数年にわたって、
坂本作品を聴いてきた私が
初心者向けに
オススメの作品を紹介します。

何かの参考になれば幸いです。

『音楽図鑑』('84)

坂本龍一の音楽を
まったく聴いたことがない方に
私がよくオススメするのは、
『音楽図鑑』です。

このアルバムは、YMO 散開後に
はじめて発表されたソロアルバムで、
いつになく伸び伸びと
自由に作られた作品という感じがします。

それでいて、
坂本龍一の王道が感じられる
直球の作品で、

その後の彼のライブ活動、
アコースティックによる
カバーアルバムでも

よく本盤の楽曲が
取り上げられているんですよね。

YMO 時代のテクノとも違う作風で、

高度な音楽理論を用いて、
電子音とアコースティックを
組み合わせています。

インスト中心ではありますが、
人懐っこいメロディーラインが秀逸で、
ポップなアルバムという印象です。

ご本人も完成度に満足されていたようで、
たびたび自身の傑作として
本盤の名前を挙げていましたし、

おそらくファンの間でも
人気の高い名盤だと思われます。

【特にオススメのトラック】
①Tibetan Dance/②Etude/③Paradise Lost/④Self Portrait/⑤旅の極北/⑥M.A.Y. In The Backyard/⑨A Tribute To N.J.P.

『未来派野郎』('86)

晩年の坂本龍一の
パブリックイメージは、
ピアノやオーケストラを中心にした
アコースティックな印象が強いでしょう。

しかし、坂本の真価は
それだけに留まりません。

なんせ、’70年代の終わりに
電子楽器を駆使してテクノポップを
大ヒットさせた YMO のメンバーです。

その手の作品として、
オススメなのが本盤ですね。

サンプリングを使った
(外部の音を取り込み加工する)
名盤として、

ご本人は、本盤の前作にあたる
『Esperant』を推すことが
多かったですが、

正直なところ『Esperant』は
前衛的な感じもあり、
とても初心者向けとは思えません(^^;

個人的には、
この『未来派野郎』こそが、
坂本作品のサンプリング名盤
だと思っています。

また、坂本作品にしては、
いつになくロック色が強い作品で、

レッド・ツェッペリンの全作品を
聴いてからレコーディングに
臨んだそうです。

近年のイメージからすると、
この音を聴いて、
ビックリされる方も
多いんじゃないでしょうかね。

そんな中でも、
②『黄土高原』、⑨『Parolibre』
といったインスト曲では
いつもながらの作風ともいえる
美しいメロディーラインが聴けます。

ちなみに、このアルバムは、
サブスクにはなく、
CD でしか聴けない音源です。

【特にオススメのトラック】
①Broadway Boogie Woogie/②黄土高原/③Ballet Mecanique/④G.T.II°/⑥Variety Show/⑨Parolibre/⑩G.T.

『1996』('96)

ここまで『音楽図鑑』
『未来派野郎』といった
'80年代の作品を紹介してきました。

しかし、この2枚を聴いて、
納得しない方も多いかもしれません。

「違う、違う、
 私の求めている坂本は
 これじゃない!」

そうですよね。
近年の坂本龍一の
イメージからすると、
上記の2枚は違和感があるでしょう。

そんな方には、
こちらのアルバムを
オススメします。

自身が手掛けた
ソロ作品や映画音楽を
ピアノ、ヴァイオリン、チェロの
トリオ編成で演奏した
カバーアルバムです。

新曲は1曲(⑤『1919』)のみで、
他は選りすぐりの楽曲たちですから、
ハズレがあるはずもありません。

もちろん『戦場のメリークリスマス』も
入っています。
(⑥『Merry Christmas Mr.Lawrence』)

地味にこのアルバムは
音質もすごくいいので、
ぜひ、耳を澄ませて聴いてみてください。

【特にオススメのトラック】
①ゴリラがバナナをくれる日/②Rain/③美貌の青空/⑤1919/⑥Merry Christmas Mr.Lawrence/⑦M.A.Y In The Backyard/⑧The Sheltering Sky/⑨A Tribute To N.J.P/⑪青猫のトルソ/⑮Before Long

『BTTB』('98)

『1996』でも納得できなかった方、
つまり、純粋に坂本のピアノが
聴きたいという方に
オススメなのが本盤です。

自身初の全曲書き下ろしの
ピアノアルバムでした。

ほぼピアノ演奏のみです。
(※一部、口琴、水の音を使った
 トラックもあり)

タイトルの「BTTB」は、
「Back To The Basic」の略で、
自身のルーツである
クラシックに立ち返った作風です。

ほとんどの曲が
わかりやすいメロディーのある
楽曲になっていますが、

一部、難しく感じられる曲も
あるかもしれません。

しかし、その難しさを
乗り越えてわかるおもしろさこそが
坂本龍一の真の魅力です。

耳に馴染むまで
何度も聴いてこそ、
本盤の魅力がわかるでしょう。

【特にオススメのトラック】
①Opus/②Sonatine/③Intermezzo/④Lorenz And Waston/⑧Bachata/⑨chanson/⑭Aqua/⑯Tong Poo

『US』('02)

こちらは番外編です。

聴いたことのない方は
「やっぱりベスト盤から聴きたい」
という方も多いでしょう。

それを踏まえたうえで、
ベスト盤を選ばせてもらうと
やはりこの『US』が
唯一、オススメできる
アルバムです。

ベスト盤というのは、
アーティストの意向よりも
レコード会社の意向が
強く反映されるものですが、

このアルバムは、
ご本人が選曲された
2枚組のベスト盤
となっています。

しかも、ライナーノーツには
1曲ずつ、ご本人による
解説が掲載されているんです。

これがあるのとないのとでは、
音楽を聴く楽しさも
格段に違ってきます。

’02年に発表されたものなので、
もちろん、それ以降に
発表された楽曲は
収録されていませんが、

正直なところ、
初心者には、この辺りまでが
丁度いいのではないか、
とも思います。

というのも、
近年の坂本作品というのは、
「メロディー」とか
「ハーモニー」を楽しむ

というよりは、
「音」そのものを
楽しむ作品になっています。

そういう意味では
完全に上級者向けの
作品と言う感じもします。

(最後のアルバム『12』も
 売れていますが、
 果たして、買った人の
 どれほどの数の人が
 楽しめているでしょうね……)

だからこそ、初心者に
聴いてほしいベスト盤です。

逆に言うと、
レコード会社の都合で作られた
別のベスト盤からは、
入ってほしくないですね。

このベスト盤が気に入った方は、
当時、同時発売された
『UF』、『CM/TV』も
オススメです。

『UF』(映画音楽のベスト盤)

『CM/TV』
(CM やテレビ番組用の音楽を収録)

いずれもサブスクにはない
ベスト盤です。

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