見出し画像

風景から「海外っぽさ」が感じられる時

地元に銭湯の
「家族風呂」があって、
よく行きます。

※家族風呂:
 家族連れの客が利用できる
 個室のお風呂

お風呂場は、10室以上あって、
毎回行くたびに、
違う部屋に案内されます。

部屋ごとにお風呂の作りが
違うわけではないんですが、

私が気になっているのは、
壁面にある写真です。

それぞれの部屋の写真が
違うんですよね。

オーソドックスなのは、
富士山です。 

壁一面の大きなサイズの
富士山の写真を見ながら、
大きな浴槽に浸かっていると、

「日本人に生まれて良かった」
と思います。

他にも沖縄のリゾート地や
海外の山を
航空写真で捉えたものも
ありました。

なぜ、それぞれの写真の
場所の違いがわかったか
というと、

それぞれの写真の下に
撮影地の記載があるからです。

しかし、なぜか海外の写真には、
その記載がありませんでした。

それでは、なぜ、
それが海外の写真と
わかったのかといえば、

山を囲む湖畔にある
木々の感じから、
「日本ではない」
と判断できたんですね。

これが街並みなどの
風景写真ならば、

建物のデザインなどからも
「国内」か「海外」か
判断できそうですが、

自然の風景でも
日本と海外では、
植生が違うので、

意外とわかるものなんだなぁ
という発見がありました。

家族風呂での
そんな発見がありつつ、
レビューでも紹介した

ドラマ『カラマーゾフの兄弟』を
観ていたのですが、

本作に出てくる
浜辺の風景を見ていて、

「海外っぽいなぁ」
と思ったんですよね。

そして、家族風呂で見た
海外の山の風景を思い出しました。

実際には
『カラマーゾフの兄弟』の
ロケ地は国内で、

浜辺の風景も
日本のどこかで
撮影されたものです。

なのに、なぜ、
私はこの浜辺を見て、
「海外っぽい」
と感じたのでしょうか。

家族風呂で見た
海外の山の写真を思い出し、
私はその映像にある
浜辺近くの植生に着目しました。

なるほど、よく見ると、
日本の風景です。

木々の感じが、
海外っぽくありません。

とすると、
『カラマーゾフの兄弟』では、
浜辺近くの木々が
画面に入らないようにして、

「海外っぽさ」を
演出しているのか、
とも考えました。

そう考えて、観察し直しても、
カメラワークは、
木々を避けるようには、
なっていません。

では、なぜ、私は、
この浜辺を見て、
「海外っぽい」
と思ったんでしょうか。

よくよく考えてみると、
ドラマ『カラマーゾフの兄弟』は、
この浜辺のシーンに限らず、

映像の配色が、
「彩度」を落とした感じ
だったんですよね。

「彩度」というのは、
「色」の鮮やかさのことです。

「彩度が高い」というのは、
「色合いが鮮やかなこと」で、
もっとも彩度が高いのは、
「原色」のビビットな色です。

原色の RGB

逆に「彩度が低い」というのは、
色合いが薄い感じで、
「モノクロ」に近くなります。

彩度が低く、
「明度」が高いと、
白っぽい画面、

彩度(低)明度(高)

「明度」が低いと、
黒っぽい画面になるのです。

彩度(低)明度(低)

ドラマ『カラマーゾフの兄弟』は、
彩度も明度も低い画面で、
暗めの映像になっています。

場面によっては、
完全にモノクロ画面の
シーンもありました。

なぜ、私が
本作の浜辺のシーンを見て、
「海外っぽい」
と思ったのかといえば、

要するに、彩度が低く、
モノクロ寄りの画面だったため、

その周りの植生も
うまくごまかされていたから
だったんですね。

つまり、木々の様子を見る時に、
その色合いが印象を
大きく左右するのでしょう。

これは大きな発見でした。

長いこと、映像作品を観てきて、
「彩度を落とすと、
 日本っぽさが少なくなる」
という気づきはありませんでした。

もちろん、これは、
なんでもモノクロに近づければ、
海外っぽくなる
ということではありません。

ドラマ『カラマーゾフの兄弟』は、
海外作品である原作の雰囲気を
うまく出すために、
そのような演出がなされているのです。

黒澤家の屋敷、
長男がたびたび訪れるバー、

三人の息子たちが
刑事から取り調べを受ける
取調室など、

全体的に日本っぽくない
装飾が満載でした。

その流れの中で、
彩度を落とし気味の
浜辺の風景が出てくるからこそ、

「海外の風景っぽい」
という感じが強まるんです。

『カラマーゾフの兄弟』は、
このように全体の演出の方向性を
海外寄りの装飾にして、

うまく原作の雰囲気を壊さずに、
アレンジした作品だと思います。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。