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高橋幸宏とは(3)優しさの中に緊張感もある人

高橋幸宏の音楽活動50周年を
記念して出版された
『LOVE TOGETHRE』を
もとに記事にしていきます。

前の記事に挙げた
集計を見ると、

関係者が述べた
高橋幸宏の印象で
2番目に多いのが

「優しい」
「ジェントルマン」
「怒らない」
「偉ぶらない」
といった内容で

17人が挙げています。

とにかく、みなさんの
エピソードを聴いていると、

幸宏さんは
とてつもなく優しい方
だったようです。

「優しい」とは言っても、
誰かれ構わず、
愛想を振りまくタイプ
というわけでもなく、

初対面の印象では、
「怖い」
と思った方も数名いました。

なんでも、幸宏さんは、
初対面の人に、

かしこまって挨拶をしない
という姿勢の方
でもあったようで、

「最初は目も合わせてくれなかった」
と言っている人もいました(笑)

この辺の話は、若い頃から
付き合いのある方の
インタビューを読むと、
その理由がわかります。

幸宏さんが
ベテランになってから
知り合った方で、

このような印象を
述べている人は皆無でしたが、

意外と幸宏さんは、
シャイで人見知りなところも
あったようです。

やはり、自身がキャリアを
重ねる中で、
いろいろと変わっていった
部分もあるのでしょうね。

実際には、
「空気を和らげる」
「社交的」
「人脈がある」

といった印象も
4人の方が挙げています。

特に、まだ誰も知らないような
ミュージシャンに目をかけて、

自身の活動にゲスト参加させる
といった動きが活発な人でも
ありました。

本書のインタビューでも
「認めてくれる」
といった内容を
5人の方が挙げています。

その中には、
YMO のレコーディングや
ライブにも参加した

シーナ&ザ・ロケッツの
鮎川誠、

高橋幸宏のプロデュースで
デビューした
高野寛などもいました。

こういった新しい才能を
歓迎する姿勢は
幸宏さんの大きな特徴で、

のちに、若い人たちと一緒に、
pupa や METAFIVE
といったユニットで
活動できたのも、

その包容力が
なせるものでしたね。

最後にこの項目を象徴する
対称的なエピソードを二つ、
紹介させてください。

一つは、’70年代から
交流のある大貫妙子さんの
エピソードです。

彼女にとって、
幸宏さんは、
どこかとっつきにくい
印象があったようで、

どちらかというと、
怖いイメージを
抱いていたようです。

幸宏さんは、
特に女性に優しい方なので、
多くの女性が好意的な印象を
挙げる中で、

この大貫さんの
話は興味深いですね。

なんでも、幸宏さんは、
スタジオでは無口な方で、

普通の人なら、
会ったら最初は、

「元気?」とか、
笑顔で接するのが
一般的なところを

大貫さんに対しては、
幸宏さんは終始無表情で、

ファッションチェックを
されるんだそうです。

大貫さんの
インタビューを読み終えて、
ふと思ったんですが、

たぶん、逆に幸宏さんも、
大貫さんに対して、
とっつきにくいイメージが
あったのかもしれません。

最初に出会ったのが、
20代の若い頃だった
というのもあるかもしれないし、

どこか照れくさい感じも
あったんでしょうね。

そして、奇しくも
幸宏さんの最期の
スタジオ演奏となったのが

大貫妙子さんの
『ふたりの星を探そう』
という曲で、

2021年10月27日のこと
だったそうです。

この共演は、
幸宏さんが病気をされてから
約束をされたもので、

幸宏さんのコンディションが
回復するのを待って、

大貫さんの方は
「できそうな時は、
 いつでも連絡してね」
という形で
待っていたとのことです。

収録を終えると、
大貫さんの前では
いつもクールだった
幸宏さんがいつになく饒舌で、

珍しくスタジオから
なかなか帰らなかった
とのことです。

(収録も含めてスタジオに
 6時間もいたんだとか)

おそらく、ご本人も
久々の演奏で
いつも以上の解放感が
あったんでしょうね。

そして、もう一つの
エピソードは、
時間軸をギュッと戻します。

YMO の活動が全盛期ともいえる
'80年代のことです。

このエピソードを
語ってくれたのは、
細野さんでした。

YMO がフジテレビの
音楽番組『夜のヒットスタジオ』に
出演した時のことです。

YMO の活動期、
三人のメンバーはそれぞれ、
順番に精神的に参った時期が
ありました。

この頃は、細野さんの
神経症が酷かったようで、
生放送の舞台裏で、

細野さんは全身が痺れ、
歩けなくなってしまったそうです。

そんな時に、
幸宏さんが身体を支え、
ゆっくり手を引いてくれた
と回想しています。

おかげで、無事に生放送で
ライブを披露することが
できたんですね。

私はこの映像を
DVD でも観たことがあって、
今も手元にありますが、

そんなことがあったとは、
映像からは
微塵も感じられません。

細野さんの手を引いて、
二人で並んで歩く姿を
想像すると、

胸に熱いものが
こみ上げてきます。

とにかく、
とんでもなく
優しい人だったんですよ。

幸宏さんという人は(涙)

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