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映画レビュー『ゴジラ-1.0』(2023)これぞ王道のゴジラ!



これぞ王道のゴジラ!

アカデミー賞視覚効果賞を
受賞した話題作で、
山崎貴監督の作品も好きなので、

劇場で観ようか迷っていたのですが、
結局、配信で観ることになりました。

今年は『シン・ゴジラ』も観て、
あの作品も傑作でしたが、
『ゴジラ』の王道、本命は
こちらの作品だと思いました。

その昔、『ゴジラ』に
夢中になった方も、
『ゴジラ』は観たことがない
という方でも、

安心して楽しめる
作品になっています。

難しいところは一切ないですし、
かと言って、ただおもしろいだけの
作品ではありません。

特攻の指令から逃れた主人公

本作の舞台設定は、
終戦~戦後直後の日本
となっています。

この設定が秀逸なんですよね。

1作目の『ゴジラ』は、
'54年に製作され、
当時の日本が舞台になっていたので、

本作はそれよりも前の日本に
ゴジラがやってくる
設定になっています。

『ゴジラ』シリーズ
全般に言えることですが、
他の作品とストーリー的な
繋がりはなく、

本作オリジナルの舞台設定
という感じになっています。

第二次世界大戦の終わり頃、
主人公・敷島浩一は、
(神木隆之介)
小笠原諸島の大戸島にいました。

大戸島には守備隊基地があり、
そこでは戦闘機の整備が
おもな業務となっています。

敷島は零戦のパイロットで
特攻を命じられていたのですが、
特高に向かう途中で、

「機体が故障している」
とウソをついて、
大戸島に着陸しました。

敷島は死にたくなかったのです。

生きたかったのですよね。

今の時代からすれば、
当たり前の判断ですが、
当時の日本では決して
許されない行為でした。

もちろん、敷島も
ウソをついて逃げたことに
恥じらいを感じてはいましたが、

なんとか特攻をせずに、
生きながらえることができました。

しかし、その基地へ、
なんとゴジラがやってくるのです。

いきなりゴジラが出てきます。

今までに誰も見たこともない
巨大な怪獣が目の前に現われ、
当然のことながら、
隊員たちはパニックに陥ります。

整備兵の長からの指示で、
その場では唯一、零戦を操縦できる
パイロットとして敷島が
ミサイルを撃つことを試みます。

しかし、ここでも敷島は
目の前の怪獣を恐れてしまい、
ミサイルを撃つことができません。

その結果、基地にいた整備兵は、
ほぼ全滅してしまいました。

特攻を逃れ、
ゴジラを撃つこともできず、
終戦を迎えた敷島は、

暗い気持ちのまま、
帰郷することになります。

終戦直後の日本に訪れた
未曽有の脅威

これが本作の冒頭の
エピソードです。

こうして振り返ってみても、
やはり、本作は終戦のあたりに
時間軸を置いたのが絶妙ですね。

戦争で逃げてしまった敷島の
鬱屈した気持ちが
全体に反映されており、
物語にリアリティーが感じられます。

故郷に帰っても、
家族は戦火で亡くなっており、

生きて帰った敷島は、
近隣の住民から
非国民呼ばわりされるのです。

そうこうしているうちに、
敷島の家には、
見知らぬ女性と子どもが
転がり込み、

最初はこれを拒む敷島でしたが、
徐々に家族のようになっていきます。

そして、「やはり」というべきか、
この後、ゴジラは日本列島の
本土にやってきます。

戦争で戦えなかった敷島は
ゴジラとどう対峙するのか、
というのが本作の見どころです。

CG を使った特撮に定評のある
山崎貴監督の作品なだけに、
ゴジラの登場シーンは
かなり見応えがあります。

音楽の使い方も
初代のテーマをはじめ、
使いどころが絶妙でした。

(「ダダダ♪ ダダダ♪
 ダダダダ♪ ダダダダダ♪」
 というお馴染みのやつ)

あの音楽は、
あんなにシンプルなのに
何度聴いても迫力のある
音楽ですね。

そして、見た目の
おもしろさだけでなく、
テーマも非常に濃厚です。

終戦から間もなく、
復興すらできていないところへ
問答無用で「ゴジラ」が
やってくるのですから、

国民たちの絶望たるや、
想像を絶するものがあります。

なぜ、ゴジラはやってくるのか、

その理屈のなさは、
自然の驚異に匹敵するものです。

そんな中、立ち上がる人々がいました。

お国のために戦った海兵たちです。

その特別プロジェクトに、
敷島も参加します。

今度こそ、日本を守るために。

真っ向から戦っては
どうやっても歯が立たない
ゴジラをどのように迎え撃つのか、

そういった作戦の部分も
よくできており、

作戦を決行する瞬間には、
手に汗握る臨場感が
味わえるでしょう。

作戦には戦争に対する
反省も込められていました。

この作戦では
「死者を一人も出さずに、
 成功させる」
ことを宣言したのです。

命を粗末にしない
大切な考え方が
そこにはありました。


【作品情報】
2023年公開
監督・脚本:山崎貴
出演:神木隆之介
   浜辺美波
   山田裕貴
配給:東宝
上映時間:125分

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