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映画レビュー『線は、僕を描く』(2022)奥深き水墨画の世界


いかにして青年は絵師になったか

本作は主人公(横浜流星)が、
涙を流しているシーンから
はじまります。

彼が見ていたのは、
一枚の大きな水墨画でした。

そこには椿が描かれていました。

彼がたまたま見た水墨画に、
ここまで心を惹きつけられたのは、
理由があったのです。

その理由は徐々に、
作中で明らかにされていきます。

奥深き水墨画の世界

本作は家族を失い、
一人になってしまった
主人公が水墨画と出会い、

その道を歩むことで、
希望を掴んでいく
物語になっています。

水墨画というと、
どんなイメージを
思い浮かべるでしょうか。

墨だけで描かれた退屈な絵でしょうか、

わかる人にしかわからない、
閉じた世界でしょうか。

いずれにしても、
絵画の中ではそれほど
目立つ存在ではない気がします。

墨だけで描かれているからこそ、
鑑賞者にはイマジネーションが
必要とされるでしょうし、

わからない人には、
さっぱりわからない世界
かもしれません。

私自身も、それほど、
水墨画に詳しいわけでは
なかったのですが、
若い頃から興味はありました。

なんせ、水墨画で使われるのは、
墨汁だけなんですから、

どうやったら、
あの立体感を出せるのだろう、
という疑問があったわけです。

本作を観ると、
そういった水墨画にも
特有の技術があることが、
よくわかります。

墨と筆の使い方で、
描ける線は幾通りにもなり、

そのような描きわけによって、
モノトーンの世界が
立体的に見えるんですね。

ベテランにはベテランなりの
若者には若者なりの

なんといっても、
本作の一番の見どころは、
なんと言っても
水墨画を描くシーンです。

行為としては、
筆についた墨を紙に
付けているだけですが、

本作はその見せ方に
圧倒されてしまうほどの
迫力がありました。

本作に登場する絵師は、
篠田湖山(三浦友和)をはじめ、

その弟子である
西濱湖峰(江口洋介)、
篠田千瑛(清原香耶)、

そして、主人公の青年、
青山霜介(横浜流星)です。

それぞれの画風も異なり、
当然のことながら、
その見せ方も多彩なものに
なっています。

ベテランには
ベテランならではの
「泰然自若」が感じられ、
(物事に動じないさま)

若者には、若者らしい、
勢いと繊細さがあります。

水墨画を描くシーンの
音楽も良かったです。

そういった演出の違いにも、
ぜひ注目してみてください。


【作品情報】
2022年公開
監督:小泉徳宏
脚本:片岡翔
   小泉徳宏
原作:砥上裕將
出演:横浜流星
   清原果耶
   細田佳央太
配給:東宝
上映時間:106分

【原作】

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