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thanks skmt 坂本龍一プレイリスト(2)

※3500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

前回に引き続き、坂本龍一の音楽活動を振り返っていきます。

前回の記事では、YMO 結成(’78)~散開(’83)の楽曲の中から選曲し、プレイリストを作成しました。

今回は'84~'03年の楽曲の中から選曲し、プレイリストを作成しています。
前回と同様に、あまり深く考え過ぎずに、全体のバランスも考えつつ、DJ 感覚での選曲です。

YMO 散開後の坂本龍一の活動を振り返ると、相変わらず最先端の電子楽器を使った楽曲が目立ちます。
特に、’80年代中盤はサンプリング(外部の音を取り込んで加工する技術)を使った作品が特徴的です。

▼'85年発表の『Esperanto』。
 坂本本人が「サンプリングを使った自信作」と太鼓判を押した。

▼'86年発表『未来派野郎』。
 サンプリングを主体に、ポップと実験性を融合した傑作。
 (※残念ながら配信の音源にないため今回のプレイリストでは割愛)

’87年には、映画『ラストエンペラー』の音楽を担当し、日本人としてはじめてのグラミー賞(映画・テレビサウンドトラック部門)、ゴールデングローブ賞 作曲賞、アカデミー作曲賞などの栄誉を獲得しました。

(※映画音楽については後日、別のプレイリストにてまとめる予定です)

'80年代後半からは、ワールドミュージックも取り入れた作品を発表し、’90年には活動の拠点をニューヨークに移します。
’90年代前半から中盤にかけては「ポップス」に特化した作品を多く発表し、それまでとは大きく異なる作風を見せました。

'90年代後半に入ってからは、自身の原点であるクラシックに回帰した作品を多く発表し、

▼'96年発表の『1996』。
 ピアノ、ヴァイオリン、チェロのトリオ編成によるカバーアルバム。

▼'97年発表『DISCORD』。
 オーケストラ・コンサートのために書き下ろした協奏曲を収録。

▼'98年発表の『BTTB』。
 自身初の全曲書き下ろしのピアノ・アルバム。

これが’90年代の終わりに、シングル『ウラBTTB』収録の『energy flow』の大ヒットにも繋がっていきます(週間オリコンチャートにて、4週連続で1位を記録し、売り上げは150~180万枚とも言われる)。

この未曽有の大ヒットは本人にとっても、まったくの想定外の出来事であり、本人は「売れればなんでもポップス」という諦念に近い言葉を残しています。

なお、今回も解説の中で特記していない限り、いずれも坂本龍一が作曲した楽曲です。

①TIBETAN DANCE/坂本龍一('84)

YMO 散開後初のソロ作品となった、4作目のソロアルバム『音楽図鑑』より。チベットの少女のダンスをイメージして作られた曲で、アジアっぽいメロディーラインとファンキーなリズムが見事に融合されている。のちにピアノ演奏によるカバーも発表した。
演奏には細野(ベース)、高橋(ドラム)も参加しており、’07年以降の YMO 再々結成以降もライブで披露された。

②A WONGGA DANCE SONG/坂本龍一('85)

5作目のソロアルバム『Esperanto』より。本盤は前衛舞踏家、モリサ・フェンレイの依頼により舞踏用の楽曲として作られた。
フェアライトCMI(シンセサイザー)を使った大胆なサンプリングがふんだんに使われている。畳みかけるようなドラム、民俗音楽的な鐘の音の組み合わせがおもしろい。

③NEO GEO/坂本龍一('87)

7作目のソロアルバム『NEO GEO』より。ゴーゴー(ファンクから派生したジャンル)、ロック、沖縄音楽、民俗音楽を融合した楽曲。ベースは、ブーツィー・コリンズが演奏している。
多彩な音楽を違和感なくミックスしているところが素晴らしい。

④Calling From Tokyo/坂本龍一('89)

8作目のソロアルバム『NEO GEO』より。ブライアン・ウィルソン(元・ザ・ビーチ・ボーイズ/ボーカル)、スライ&ロビーのスライ・ダンバー(ドラム)が参加している。沖縄や中東の音楽要素をアクセントにしたファンキーな1曲。

⑤Heatbeat/坂本龍一('91)

9作目のソロアルバム『Heartbeat』より。作曲はサトシ・トミイエとの共作。ハウスのビートが全面的に取り入れられているが、この頃の坂本のお気に入りの沖縄音楽(お囃子)もアクセントに使われている。
打ち込みによるビートは、それまでの坂本作品にないものだが、コード展開の仕方、音色そのものは坂本らしい作風。

⑥Moving On/坂本龍一('94)

10作目のソロアルバム『sweet revenge』より。女性ラッパー(J-Me)をフィーチャーした楽曲。打ち込みによるレゲエのビートとバックを彩るメロウなサウンドの組み合わせがポップである。
パルコの CM 曲としても使用された。

⑦美貌の青空/坂本龍一('95)

11作目のソロアルバム『Smoochy』より。作詞は売野雅勇。
ヒップホップのビート、物憂げなサウンドと坂本のボーカルが印象的である。当時、坂本が悩んでいた「ポップとは何か」という問いが、この楽曲の制作に繋がった。のちにインスト曲として、自身や海外のアーティストにもカバーされている。

⑧1919/坂本龍一('96)

ピアノ、ヴァイオリン、チェロによるトリオ編成で演奏されたセルフカバーアルバム『1996』より。本楽曲は同アルバムの中では、唯一オリジナルの楽曲となっている。
バックに流れる人の声は、ロシアの革命家・レーニンのスピーチで、曲名もこのスピーチが行なわれた1919年に因んだもの。演奏はシンプルで緊張感のあるフレーズが延々と繰り返される構成。終盤には不協和音的な音も入る。
三菱電機の携帯電話・ディーガの CM 曲に起用され、坂本も CM に出演した。

⑨Untitled 01 2nd Movement-Anger/坂本龍一('97)

オーケストラ・コンサートのために書き下ろされた協奏曲『untitled#01』を収録したアルバム『DISCORD』より。
タイトルのとおり、「怒り」を表現した激しい演奏で、メロディーやハーモニーを楽しむというよりは、サウンド全体を楽しむ楽曲である。

⑩aqua/坂本龍一('98)

12作目のソロアルバム『BTTB』より。娘・坂本美雨に提供した楽曲をピアノで演奏したもの。穏やかで優しい曲調、SE として挿入された水の音の組み合わせがいい。2020年、としまえんの閉演セレモニーのエンディングにも使用された。

⑪energy flow/坂本龍一('99)

シングル『ウラBTTB』より。『リゲインEB錠』の CM 曲として書き下ろされ、坂本も出演した CM が反響を呼び、急遽 CD 化したもの。
インストゥルメンタルとしては、はじめて週間オリコンチャート1位を記録。その後も10週連続でトップ10入りを果たし、ミリオンセラーとなり、坂本の代表作の一つとなった。
シンプルなピアノのみの演奏でありながら、さまざまな感情を感じさせる構成が絶妙で、多くの人の心を掴んだのもうなずける。

⑫VIVO SONHAND-Dreamer/Morelenbaum2/SAKAMOTO('01)

モレレンバウム夫妻とのユニット、Morelenbaum2/SAKAMOTO によるアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュートアルバム『CASA』より。
原曲はジョビンによる作曲で、スタン・ゲッツ、ジョアン・ジルベルト『Getz/Gilberto』('64)に収録されている。
原曲よりもゆったりとしたリズムで、落ち着いた雰囲気が感じられ、上品な印象に仕上がっている。

⑬sunset/坂本龍一('02)

ミニアルバム『COMICA』より。静かな電子音と控えめなピアノを配したアンビエントミュージックで、8分にもおよぶ楽曲だが、そこにある静かな空間は聴く者を飽きさせない。メロディーなどの主張がない楽曲で、映画音楽や晩年の作品に通じるものを感じる。

⑭Elmolo Dance/坂本龍一('02)

TBS とエコマガジン『ソトコト』による別冊 DVD ブック『エレファンティズム』のために書き下ろされたサウンドトラックより。
アフリカを訪れ現地で録音した素材に電子音を加え、一つのダンスミュージックにしている。現地の音の感触を残しつつ、ほどよい加工を施すアレンジ力が見事。

⑮Trioon I/alva noto+Ryuichi Sakamoto('02)

ドイツのカールステン・ニコライによるソロ・ユニット、アルヴァ・ノトとの1作目のコラボレーションアルバム『Viroon』より。
冷たい質感のピアノの音とノイズ混じりの電子音が組み合わさった静かな曲調で、穏やかな時間が流れる。

⑯WORLD CITIZEN-I won't be disappointed--short version/坂本龍一+デヴィッド・シルヴィアン('03)

盟友・デヴィッド・シルヴィアンとのコラボレーションシングルより。
作曲は、デヴィッドとの共作、演奏にはスケッチ・ショウ名義で細野・高橋も参加している。
この頃の坂本(およびスケッチ・ショウ)が開拓しつつあった、エレクトロニカな質感の電子音を前面に出しつつ、存在感の強いデヴィッドのボーカルが際立つ編成になっている。
J-WAVE 開局15周年のキャンペーン曲にも起用された。

▼Spotify 版プレイリストはこちら


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