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星新一作品の芸術性はもっと評価されるべきと思う

私が挙げた
「芸術性の三要素」の
「普遍性」について
書いてきました。

芸術性の三要素
・普遍性がある
・言葉で表現できないもの
・哲学的な題材

ここまでは、
おもに「お笑い」について
書いてきましたが、

ここで方向を変えて、
「文学」に話を切り替えます。

この1年の間に、
私が書籍レビューで紹介してきた
作品の中で、

「芸術性が高い」
と思われる作品を
挙げてみましょう。

※それぞれのリンクの下に
 当てはまるポイントを挙げた

普遍性がある/言葉で表現できないもの/哲学的な題材

普遍性がある/言葉で表現できないもの/哲学的な題材

普遍性がある/言葉で表現できないもの

普遍性がある/哲学的な題材

普遍性がある/言葉で表現できないもの/哲学的な題材

普遍性がある/言葉で表現できないもの

普遍性がある/哲学的な題材

普遍性がある

当てはまるポイントは、
あくまでも
私が読んだ時に感じた
主観によるものです。

いずれも
「普遍性がある」には
当てはまっている気がしました。

「言葉で表現できないもの」が
当てはまるものは、
「詩」的な表現が多いもの、

あるいは、うまく言葉にできない
人間の微妙な心境を描いたものです。

「哲学的な題材」は、
哲学に含まれそうな
社会的な出来事を描いたものや
宗教的な観念が含まれるものですね。

やはり文学の中で、
評価が高い作品は、
この三つの要素が
入っていることが多いですね。

例えば、私が昨年読んだ中で、
一番おもしろいと思った
『夏への扉』は、
このリストへ入れていません。

いや、誤解のないように
言っておきますが、

この作品はめちゃくちゃ
おもしろいですし、
誰が読んでもおもしろいはずの
名作です。

ただ、私が考える
「芸術性の三要素」に
照らし合わせると、

「芸術性」という観点には、
それほどあてはまる作品では
ない気がするんですね。

やはり娯楽作品なんですね。

(『バック・トゥ・ザ・
 フューチャー』もそうだが、
 タイムスリップとかがあると、
 芸術性が薄れるのかも(^^;)

こういう流れで言うと、
私がいろいろ読んでいて、
気になっているのが、
星新一の評価です。

星新一は、
'60~'80年代にかけて
多くの作品を発表した作家で、

短編よりもさらに短い、
ショートショートを得意とした
「ショートショートの神様」
という異名を持ちました。

▼星新一の代表作の一つ
 (ちなみに私は未読)

どうも「文学」という
分野ではそれほど
高く評価されていない
気もするんです。

それは星新一の作風が
「エンタメ」の方向に
特化していたから
だと思うんですね。

私も星新一の作品は一冊しか
読んだことがないので、
(『宇宙のあいさつ』)

間違っている部分も
あるかもしれないですが、

たぶん、星新一の作品で、
詩的な表現は
あまりないでしょうし、

哲学的な題材というのも、
あまりない気もします。
(深読みすれば、
 哲学的かもしれないが)

なぜならば、
星新一の作品で
一番優先されているのは、

ストーリーの「おもしろさ」
だからです。

発想のおもしろさ
と言い換えてもいいです。

星新一の作品では、
突拍子もない設定が
いろいろと出てきますが、

読者がひっかかることなく、
その不可解な設定がすんなり
理解できる作りになっています。

ここがすごいところです。

なんでも、星新一は、
自分の作品が
100年後の人にも伝わるように、

文章の細部にまで、
気を遣って作品を
書いていたんです。

例えば、星新一の作品に
出てくる登場人物の名前は、
「エヌ氏」というような
設定になっています。

(「エヌ」は
 アルファベットの「N」。
 必ずカタカナ表記)

これは特定の名前をつけると、
その時代特有の色が
出てしまい、
読者に伝わりづらくなるからです。

私が挙げた
「芸術性の三要素」に
照らし合わせると、

「普遍性」の高さが
ずば抜けて高い作品なんですよね。

その証拠に、
今でもあまり本に慣れていない
初心者が最初に読む本として、

星新一の作品が選ばれることが
圧倒的に多いでしょう。

つまり、今の子どもが読んでも、
100年後の子どもが読んでも、
星新一の作品を
「おもしろい」と思うわけです。

こんなにすごい作品は、
かなり稀なのではないでしょうか。

そういった「普遍性」を保ちつつ、
娯楽性も両立させている点が、
またすごいところです。

文学、特に「純文学」では、
表現の素晴らしさの方に
重きが置かれがちなのでしょう。

だからこそ、星新一の
簡潔な文章は「文学的」には
それほど高いものではないんですね。

「文学」の本質からすると、
そういうことなんです。

しかし、「普遍性」の高さを
評価軸にすると、
星新一ほど、優れた作家は
他にいないと思います。

前に私が挙げた
圧倒的な普遍性の高さを誇る
落語やシェイクスピアに
並ぶほどの存在でしょう。

(これはさらに100年ほど
 年月が過ぎれば立証されるはず)

これが私が
星新一がもっと文学界で
高く評価されるべきだ
と思う理由です。

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