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音楽レビュー『KAMAKURA』サザンオールスターズ(1985)意外と雑多な音楽性だが記憶に残るのは「王道」

はじめてサザンを
じっくり聴いてみた

多少、私の音楽の趣味を
ご存知の方からすると、
「え? サザン!?」という感じは
否めないでしょう。

実は、私自身、この度、
はじめてサザンのアルバムを
じっくり聴き込んでみました。

なぜ、’80年代のこのアルバムを
選んだのかと言うと、

本盤に収録された
『メロディ』
『Bye Bye My Love』は、

私にとって思い出深い曲
でもあるからです。

子どもの頃、
両親がよくこの2曲を
聴いておりまして、

子どもながらに私も、
「いい曲だなぁ」
と思っていました。

そして、いつか、
じっくり聴いてみたい、
と思っていたんですが、

その間に何十年も経ってしまい、
子どもだった私も
40歳になってしまいました(^^;

それと、この note で
仲良くさせていただいている
方々の中に、

サザンが好きだという方が
何人かいらっしゃいまして、
「私も聴いてみよう」
と思ったのもあります。

サウンドやアレンジがすごいのは

サザンの8作目である本盤は、
'85年に発表されました。

当時の音楽シーンは、
ようやく電子楽器が一般化した頃で、
このアルバムにも電子音が
多く使われています。

本盤は2枚組の大作ですが、
その1曲目を聴いた瞬間に
「これはいい!」
と思いました。

なぜならば、私が好きな
電子音がふんだんに使われた
楽曲だったからです。

私の中では、サザンに
打ち込みのイメージは
なかったので、
余計に意表を突かれた気がしました。

あまりにも、シンセの音がいいので、
調べてみると、そのクレジットを見て
「なるほど!」と思いました。

このアルバムには、
プロデューサー、
アレンジャーとして、
藤井丈司氏が参加していたのです。

藤井氏は、YMO のアシスタント
としてキャリアをスタートした
マニュピレーター(※)で、

『浮気なぼくら』や
『サーヴィス』といったアルバムで、
テクニカル・アシスタントを務めました。

(※マニュピレーター:
  打ち込みの音楽で
  プログラミングをする人。
  打ち込みが一般的ではなかった時代、
  こういう役割の裏方が必要だった)

自分の耳で感じたものを
辿ってみると、

こうして自分の好きなものと
しっかり繋がっているのが
嬉しいです。

さらに言うと、
このアルバムには、

私が好きな作曲家・編曲家である
大谷幸氏も携わっており、
やはり、私が聴くべきアルバムでした。

▼大谷幸氏の音楽について書いた記事

大谷氏は、いくつかの曲で編曲、
キーボードの演奏を手掛けており、

特に、Disk-1④『鎌倉物語』で、
ストリングスのアレンジで、
いい仕事をしています。

意外と雑多な音楽性
だが記憶に残るのは「王道」

ここまではどちらかというと、
裏方のこと書きましたが、
ここから楽曲のことを書いていきます。

本盤は、打ち込みの
エレクトロニックサウンドが目立つ
楽曲も多いですが、

それだけでなく、
幅広い音楽性が取り入れられた、
非常にバラエティーに富んだ
サウンドになっていました。

サザンというと、
一般的には馴染みやすい
歌のメロディー、

おもしろい歌詞に注目に
集まりがちだと思います。

しかし、このアルバムを聴くと、
そのイメージとはかけ離れた
多様な音楽性も感じられるでしょう。

例えば、Disk-1②、
Disk-2⑥では、
アフリカ音楽を彷彿させる
メロディーやサウンド、

Disk-1②では、
レゲエやダブのサウンド、
Disk-2①では、
スカのリズムとサウンド、

といったように、
アフリカやジャマイカの音楽も
積極的に取り入れています。

また、Disk-1⑤は、
プリンスを彷彿させる
エレクトロファンクのサウンド、

Disk-1⑦は、
同時代のイギリスのバンド、
スクリッティ・ポリッティを
彷彿させるエレクトロサウンド、

Disk-2⑧は、
ハードロック調の
大胆なエフェクト、

というように、
洋楽のトレンドにも
しっかりアプローチ
しているんですね。

こういう部分が、
一般的なサザンのヒット曲には、
感じられないところなので、
とても意外で、おもしろく感じました。

これらの多種多様な楽曲の中に、

サザンの王道を感じさせる
Disk-1④、⑥、⑧、⑨、⑩、
Disk-2②、⑤、⑦、⑨
といった楽曲が挟まれていきます。

こういった異質なサウンドの
組み合わせに、
不思議と違和感がないのは、

やはり、構成の良さが
あるからでしょう。

個人的な好みで言うと、
前者の多種多様なサウンドが
好きなんですが、

聴き終わってから、
時間が経つと、
不思議と記憶に残っているのは、
(勝手に頭に流れてくる)

後者の王道の楽曲群
だったりもします。

やはり、サザンは、
桑田佳祐のボーカルの魅力を
前面に打ち出した
バンドなんでしょうね。

彼の声がとても記憶に残ります。

もちろん、原由子が
メインボーカルを務めた
Disk1⑩『鎌倉物語』もいいです。

(最近、ユニクロの CM
 でも使われている)

そして、このアルバムを最後に、
サザンは一時、活動を休止し、
ソロ活動に入ったというのも、

このアルバムを語るうえで、
忘れてはならない部分でしょう。
('88年に活動を再開)


【作品情報】
リリース:1985年
アーティスト:サザンオールスターズ
レーベル:タイシタレーベル

【アーティストについて】
'78年から活動する
日本のロックバンド。

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