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映画レビュー『エスケープ・ルーム』(2019)賞金1万ドルの脱出ゲーム

賞金1万ドルの脱出ゲーム

6人の男女に箱型のパズルが
届きました。

彼ら、彼女たちが
難解なパズルを解くと、
1枚のカードが出てきます。

賞金1万ドルの
脱出ゲームへの招待状でした。

6人の男女は、
指定されたビルに集まり、
脱出ゲームに
挑むことになります。

待合室に通された一同は、
雑談をしながら、
ゲームマスターの登場を
待っていました。

ところが、待てど暮らせど、
ゲームマスターは
やってきません。

しびれを切らした一人が、
タバコを吸うために、
部屋から出ようとすると、
ドアノブが取れてしまいました。

その瞬間から、部屋の内部で、
熱を発する装置が作動し、
あっという間に部屋の温度が
上昇しはじめます。

ドアノブが取れた箇所を
よく見ると、
ダイヤルのようなものが
付いていました。

もうゲームは、
はじまっていたのです。

この部屋にあるものの中から、
ヒントを見つけ、
脱出しなければ

部屋の温度は、
どんどん上昇していきます。

果たして、見ず知らずの
他人同士である6人は、
協力し合って、

この脱出ゲームを
クリアーすることが
できるのでしょうか。

映像で感じさせるリアリティー

本作は、2019年に公開された
映画ですが、
まったく知らない作品でした。

妻の同僚に、
ホラー映画好きの方が
いるそうで、

その方の勧めで、
観てみることにしたんですよね。

本作はホラー映画では
ありませんが、
観終わった後に調べてみると、

本作を手掛けた
アダム・ロビテル監督は、
いくつかのホラー映画を
手掛けた監督でした。

正直なところ、
最初はそれほど
期待していなかったんです。

冒頭にも挙げた
ジャケットを見る限り、
どこかチープな印象も
ありました。

「脱出ゲーム」という設定も
過去に『キューブ』や
『ソウ』といった作品で、

散々、観てきた設定に
感じました。

ところが、これが、
思っていた以上に
おもしろかったんですよね。

設定うんぬんという以前に、
映像がよくできていました。

本作は脱出ゲームという性質上、
密室状態が続くことになりますが、

一つの部屋をクリアーするたびに
新しい部屋が登場します。

その設定がゲームっぽくもあり、
現実離れしているとはいえ、

それをしっかり映像の力で
リアリティーを高めている
印象でした。

例えば、最初に出てくる部屋は、
部屋の内部にヒーターのような
装置があって、

室内の温度が
どんどん上昇する部屋でした。

大袈裟なほど、
その熱さが伝わってくるような
映像になっていて、

観ているこちらまで息が
詰まってくるようです。

あまり話してしまうと、
ネタバレになるので、
最小限に留めますが、

圧巻だったのは、
逆さまの部屋です。

この部屋は天井が
地面になっていて、

上を見上げると、
ビリヤード台などが
あります。

時間が経つごとに、
床が抜けていく仕組みで、

主人公たちは、
部屋のヘリに立ちながら、
必死で謎解きの
ヒントを探すのです。

このシーンで描かれた
高さの恐怖といったら、
筆舌に尽くしがたいものが
ありました。

とにかく、ストーリーが
どうこう以前に、
映像がよくできた作品です。

極限状態にこそ見える人の本性

この手の作品は、
謎解きの部分に
おもしろさが多分に
含まれていますが、

その点でも本作は
よくできていました。

6人の人物は、
それぞれ職業も年齢も
異なるバラバラな人たちです。

それでも最初に案内状が入った
難解なパズルを解いただけあって、

6人とも、それなりに
頭のきれる人たちなんですね。

そんな人たちですから、
最初はお互いに穏やかに
接しています。

ところが、それも
危機的な状況に
なるにしたがって、
次第に崩れていきます。

この「次第に」
というところが
ポイントです。

例えば、同じような
脱出系の作品でいえば、

『キューブ』では、
最初から利己的な人物が
ハッキリしていたんですよね。

こういった状況では、
その手の人物は、
悪役として描かれます。

本作の場合は、
その変化の度合いが
「徐々に」変わっていくので、
その点もリアルに感じました。

そして、物語が進んで行くと、
明かされていなかった
6人の過去の話も
でてきます。

この辺のストーリー見せ方も
一気に出してしまうのではなく、
徐々に明かしていくところが

観客を惹きつけるのに、
大きな役割を果たしていますね。

決して、メジャーな作品では
ありませんが、

こういった多くの人が
観ていないような良作に
巡り合えた時は、

食わず嫌いせずに
観て良かったと思います。


【作品情報】
2019年公開(日本公開2020年)
監督:アダム・ロビテル
脚本:ブラギ・シャット
   マリア・メルニック
出演:テイラー・ラッセル
   ローガン・ミラー
   デボラ・アン・ウォール
配給:ソニー・ピクチャーズ・
   リリーシング
   東京テアトル
上映時間:100分

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