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音楽レビュー『Works』Keith Jarrett(1985)一言ではまとめきれない音楽性の幅広さ

※2500字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。


ECM を代表するアーティスト

以前、別のレビュー記事でも
書きましたが、
最近、ECM レコードの音源に
ハマっています。

しばらく洋楽の紹介は、
ECM レコードの作品が続きそうです。

今回、紹介するのはベスト盤です。

私は普段、あまりベスト盤は
取り上げないのですが、
知識のなさゆえにベスト盤を
選んでしまいました。

キース・ジャレットは、
アメリカ出身のジャズピアニストで、
ECM を代表するアーティスト
でもあります。

'60年代に音楽活動を開始し、
'70年代にはマイルス・デイヴィスの
バンドにも参加していました。

キース・ジャレットが参加した
おもなマイルス・デイヴィス作品

『Miles Daivs at Filmore』('70)
『Live Evil』('71)
『Get Up With It』('74)
※キースは'71年まで在籍
 それ以降に発表された音源は
 のちにレコード化されたもの

'71年に ECM の創業者であり、
プロデューサーの
マンフレート・アイヒャーと出会い、

ECM からソロ作品を
発表することになります。

以降、50年以上にわたり、
ECM から作品を発表する
看板的なアーティスト
となっていきました。

難しいと思ったら、
まずはベスト盤

そもそも、なぜ、
私がベスト盤を選んでしまったのか、
というと、

単純にジャケットが
気になったからです。

写真のネガフィルムに
着色したような独特なジャケットが
興味を惹いたんですね。

(ECM作品 はジャケットが
 秀逸なものが多いのも特徴的)

キース・ジャレットは、
その昔、音楽好きの先輩から
その名を聴いていました。

ずっと気になっていて、
チラッと音源を聴いたことも
あったのですが、
難しい印象も強かったんです。

というのも、キースは、
前述したように'71年から
ECM で作品を発表しており、

中でも、有名なのは、
彼の即興のピアノソロ
収めたライブ盤で
その手の作品に定評があるんです。

これが20年ほど前の
まだ音楽(特にジャズ)の
初心者だった私には、
とても難しく感じました。

なので、今回も有名な
ピアノソロのアルバムは
敢えて避けて、

バンド演奏のものを聴こうと
思ったんですね。

そういう意図で選んでみたら、
ベスト盤だったわけです。

冷静に見ると『Works』
というタイトル自体も、
ベスト盤っぽいですし、

ECM からは他のアーティストでも
同じタイトルのベスト盤が
リリースされているのを知ったのは、

このアルバムを手にした
後のことでした。

一言ではまとめきれない
音楽性の幅広さ!

前置きが長くなりましたが、
ここからは本盤の解説を
していきます。

本盤は'85年に
リリースされたもので、
各音源を調べてみると、

'70~'80年代に発表された
ソロアルバムの中から
選曲されていました。

収録曲(『』内はもとの収録アルバム)
1.Country『My Song』('78)
2.Ritooria『Facing You』('72)
3.The Jorney Home『My Song』('78)
4.Staircase, Part II『Staircase』('77)
5.String Quartet (2nd Movement)
 『In The Light』('74)
6.Invocations (Recognition)
 『Invocations/The Moth And The Flame』
 ('81)
7.Nagoya Part IIb (Encore)
 『Sun Bear Concerts』('78)

①、③は、このベスト盤の中で
唯一、同じアルバムから
2曲選ばれたものです。

元のアルバム『My Song』は、

ヤン・ガルバレク(サックス)、
パレ・ダニエルソン(ベース)、
ジョン・クリステンセン(ドラム)
と組んだヨーロピアン・
カルテットによるもので、

このベスト盤の中では、
もっとも聴きやすく感じました。

'50~'60年代のモダンジャズ
とも異なり、

'70年代に花開いた
フュージョンとも似て非なる
サウンドで、

非常に現代的で都会的な
サウンドなんですよね。

こちらのアルバムは
ぜひ、単独で聴いてみたいです。

②はキースがはじめて
ECM から発表した
ピアノソロアルバムからの選曲で、

やはり、こちらも普通のジャズとは
違った聴き応えがあります。

キースは幼少期に
クラシックを学び、
のちに ECM でもクラシック系の
アルバムも発表するのですが、

そういったクラシックの素養も
感じさせる演奏ですね。

キースの演奏の特徴の一つに、
唸り声があります。

ソロでもバンド演奏でも、
感情の高まりが最高潮に達した時、
キースは唸りながら弾きます(笑)

はじめて聴いた時は、
ビックリしたものですが、

慣れてくると、
感情が伝わってくるようで
これもいいんですよね。

④もピアノソロアルバム
からの選曲です。

こちらもクラシック、
もしくは現代音楽の香りが
強い楽曲になっています。

絶え間なく鳴り続ける
短い旋律がやまない雨のように
響き渡ります。

⑤、⑥はクラシック、
現代音楽のアルバムからの
選曲です。

⑤はジャレットが演奏しておらず、
作曲のみで、弦楽四重奏が
展開されています。

⑥は、キースが
パイプオルガンを演奏し、
バックにオーケストラを
配したものです。

ともに映画音楽を連想させる
重厚かつ繊細な聴き応えに
なっています。

⑦は来日して開かれた
ピアノソロコンサートの演奏を
収めたアルバムからの選曲で、

タイトルのとおり、
この曲は名古屋で
演奏されたものです。

ここまで聴いてきて、
どちらかというと、

キースのピアノの音は、
冷たく鋭いイメージが
あったのですが、

この演奏の音は
まろやかで温かみを感じました。

本盤の総括をすると、
収録されている楽曲の
テイストが幅広く、

キースの音楽性の広さを
感じさせるものになっています。

この中で気になった
トラックが収録された
アルバムを聴いてみるのも
いいかもしれません。

私と同じような初心者にも
最適なアルバムと言えるでしょう。


【作品情報】
リリース:1985年
アーティスト:キース・ジャレット
レーベル:ECM

【アーティストについて】
アメリカのピアニスト。
’60年代に活動を開始。
'70年代には
マイルス・デイヴィスの
グループでも活躍した。

【同じアーティストの作品】

『Standards, Vol.1』(1983)
『Spirits』(1985)
『Bordeaux Concert』
(2022)

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