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この世界には、殺す人間と、殺される人間がいる。【読書感想文※若干ネタバレ注意!】

こんにちは、川原です。世間様は大型連休中ということで、与太話として雑記でも書きたいと思います。

学生時代、友達が少ないことで定評のある川原はよく本を持ち歩いていました。読んできた小説の中で、
「コレ以上面白い小説に出会ったことない!」
と今でも思える一冊があります。

乙一さんの『GOTHーーリストカット事件』です。
GOTHは、著者の乙一さんが『このミステリーがすごい!』という大賞で2位を取った作品でした。私が中学2年生の時、リアルタイムで話題作だったのです。
中学2年のある日、同じ本好きの女の子から
「川原ちゃん、面白い小説を見つけたから、貸してあげる」
と手渡され、言われるがまま読んだのがGOTHでした。その時の私は、乙一さんのことも知らなければ、ミステリーもロクに読んだことがないレベルの子どもでした。

女友達からGOTHを貸してもらって、家に帰って早速読んでみた。
すると、中学生の私でも「面白い!」とすぐさま感じ取れる文面で、小説ならではの叙述トリックがとても新鮮に思いました。

GOTHの大まかな内容としては、主人公である男子高校生の「僕」と同級生の女子生徒「森野夜」は、人間の闇の部分に惹かれる面があり、ある日を境に意気投合する。森野夜は作中ではヒロイン的存在であり、ある意味変質者ホイホイでもあって、度々事件に巻き込まれるも結果的に主人公が助けに入る、というオチがある。
ちなみに主人公の「僕」だが、最終話まで名前は明かされない(この名前を隠す伏線が最大のどんでん返しに繋がる)

物語の流れとしてGOTHは6つの短編で構成されており、私が一番好きな話が
「記憶 Twins」
なんですが、何故この話が好きなのか。
完全なネタバレになるので詳細は伏せますが、ヒロインの森野さんは手首にリストカット痕があり、誰にも明かせない重大な秘密と苦悩を抱えていた。主人公はそんな彼女の秘密を暴き、彼女を精神的苦悩から救うのですが、その時の主人公と森野さんの会話が強烈に私の印象に残りました。

僕「9年間、みんなに黙っていたのは辛かっただろう(以下、大きなネタバレになるので割愛)」
森「最初に私の名前を呼ぶのは、あなたなんじゃないかと思っていたの……」


「僕」と「森野夜」は友人でも恋人でもないんですが、友人でも恋人でもない二人がここまで執着し合う何とも言えないもどかしさが、とても切なく感じました。
ミステリーなのに恋愛モノを彷彿せるような、単なるミステリーではなく多方面から楽しめる話だと思いました。

【私の個人的な感想】
一番好きな話は「記憶」ですが、どの話も読者を飽きせない工夫がされており、全編を通して総合的に面白い小説でした。特に漫画化や映像化では完全に再現できない叙述トリックは、小説ならではの醍醐味で、乙一さんの素晴らしい表現力だと感じました。
この記事を書きながら「また読み返したいな」と思いました。

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