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コントが始まる、感想

ドラマ「コントが始まる」を見た。TVerで第一話を視聴(第二話はまだ)して、とても良いドラマだと思ったので、ここに記しておきたい。

※ネタバレを含むので、ご注意ください。

喜劇と悲劇


ドラマ冒頭はタイトルどおり、コントから始まる。菅田将暉さん、仲野太賀さん、神木隆之介さん扮するお笑いトリオ「マクベス」による「水のトラブル」というコントである。ドラマの中のコント、という点では劇中劇(劇の中に挿入された劇)であり、これはシェイクスピアの「真夏の夜の夢」とか「ハムレット」でも使われている手法である。彼らのトリオ名も「マクベス」だし、もしかしたら制作側も意識しているのかもしれない。ただし、タイトルにある「コント」は文字どおり「喜劇」であるのに対し、マクベスはシェイクスピアの有名な四大悲劇の一つである。喜劇と悲劇。この対比が、彼らの今後の行く末に不穏な影を落としている。

第一話は、このマクベスと、ひょんなことから彼らのおっかけになったファミレス店員との関係性を中心に、マクベスの結成秘話が描かれていく。

有村架純さん扮するファミレス店員は、仕事を辞めたばかり、アルバイトにも身が入らない日々だったが、来客したマクベスを接客したことで、彼らに興味を持つ。なんと家までご近所さんで、彼らが何かしらの活動をしていると知った彼女は、何者かを突き止めるため、日がなインターネットを駆使して、ようやく彼らが「マクベス」という名前でお笑いをやっていることを突き止める。そうして彼らのおっかけになった彼女は、初めて行ったマクベスの単独ライブで、彼らの口から思わぬ事実を告げられることになる。


終わりの始まり


コントが始まる、は「終わりの物語」である。

コントから始まったこのドラマは、第一話にしてコントという表層から、一気に深淵を覗き込むように彼らの過去にまでさかのぼる。有村架純さんと同じ観客としてマクベスを見ていたテレビの向こう側の私たちは、彼らのある宣言により、マクベス結成の過去に踏み込むことになる。

ラーメンで始まり、ラーメンで終わったマクベス。この一話の短い時間の中で、過去と現在を行ったり来たり、それでいてわかりにくいところが一切ない。仲野さんの笑いからの泣きの演技、菅田さんの溢れ出るものを押さえ込むように泣く演技、俳優さんのどの演技も素晴らしく、嘘がなかった。ドラマは言わずもがな、虚構であるはずなのに、不思議なものを見た気分だった。

最初にドラマの中のコント=劇中劇といったが、これは入れ子構造ともいうらしい。このドラマには、まずコントという劇があり、それを中心に、コントの演者であるマクベス自身のドラマ、そしてそれを見守る観客(有村架純さん扮する追っかけ)のドラマがあり、おそらく第二話以降は、マクベス3人、それを取り巻く人々、それぞれのドラマが紐解かれていく。コントという表舞台→バックステージ→その人の人生へと、だんだんと表層から深淵へと向かっていく構成は、有名なミュージカル「コーラスライン」のような深い構造を持っていて、とても味わい深い。現在から未来への時間軸、つまり「どう終わるか」を描くドラマと、現在から過去へと遡る時間軸、「どう始まったか」が入り組んでいるのに整然としていて、素晴らしい第一回目だった。伏線を見事に回収する脚本も良かったけれど、伏線もそこまでガチガチに張り巡らすのではなく、肩の力が抜けたいい塩梅。この素晴らしき第一回目の後、一体これからどんな物語になるのか、解散しないで欲しい気持ちもある反面、安易なハッピーエンドも興醒めしてしまう気もする。どちらにしろ、この先がとても楽しみなドラマである。













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