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PMリトリート#1に参加してきた

PMリトリートとは?

そもそも「リトリート」という単語自体がお恥ずかしながら初耳のわたくし、ググってみました。

数日の間、日常から離れた環境に身を置き、いつもと違った体験を楽しむこと

もともとはryuzeeさん川口さんアジャイルコーチたちが箱根の山奥に籠もって熱い議論を交わした相互学習イベントから着想を得て、PMバージョンを企画した、と主催の蜂須賀さん談。

PMとしての実践を他者と深く語り合うことで学びは深まり、成長を加速させる。 各企業をリードするPMを一同に集め、深い対話を行う場を用意する。それがPMリトリートです。
ディスカッションしたり雑談したり冗談言ったり、基本的には計5.5時間ぶっ通しで喋り続けるマッチョなイベント。
元同僚でスクラム仲間の横道さんのお誘いと、Air時代の戦友・現駄菓子屋の永嶋さんが名を連ねていたことでふたつ返事で参加を決めました。

基本的な進行はスクラムマスターズナイトなどアジャイル系のイベントでおなじみのOST(Open Space Technology)です。
参加者がそれぞれの議題を持ち寄り、4テーブル☓3コマ、計12個の議題がディスカッションされました。
その中で私が参加した3つの議題について、簡単にですがまとめていきたいと思います。

持ち寄られたアジェンダ

Sprint1:PM的事業計画の作り方

問題提起

私が自分自身の課題として提案させていただきました。
ちょうど期末で来期の事業計画をヒィヒィ言いながらまとめていた時で、ビジネスサイドが出してくる非現実的なエビ反りの事業計画を、PMとしてどう受け止めているのか、逆にPM目線で描く現実的かつイケてる事業計画の書き方ってないのか、という問いです。

まず、そのテーブルに着いてくださった皆さんどなたも似たような苦労を味わったことがある。ですよね、あるあるですよね。
事業計画を描くのはだいたいはPMではなくBizDevだったり経営企画だったりビジネス畑の人間で、そろばん上では辻褄合ってるんだけどプロダクト開発の肌感がないため、現実味がない事業計画になってしまいがち。
この人数でその短期間で売り物になるプロダクト作れないけど?とか、プロダクトの数字はそんな根拠なく毎月倍々ゲームで成長しないけど?とかとか。

そんな課題感をディスカッションした中で、心に残ったキーワードをご紹介していきます。

事業とPMのキャッチボールで作る

  • 事業計画をつくる人、それを達成するために頑張る人、と役割分担するのではなく、キャッチボールしながら一緒に作り上げていくことが重要。

  • 投資計画からの逆算で事業計画は作られる。まず点を作って、どう登っていくのか道筋を作る。

  • 既存のビジネスモデルに限界があるとしたら、じゃあどういうビジネスのどんなプロダクトを作って登っていくのか、そこから一緒に考える。

  • 時にはストレッチした高い目標も、思考や前提をガラッと変えて非連続な成長を目指すためには必要。

事業計画をバーンと出されるといつでも突拍子がない無理めな数字なので、議論することを早々に諦めてしまっていた。
達成に向けて精一杯頑張るけれども、最後は事業計画が無理めだったんでーと言い訳する気満々で。
そうではなくて、一緒に作っていけばいいんだ、と基本中の基本だけれど重要な気付きを得ました。

PMは自ら事業計画を書かないのがセオリー

  • 顧客価値と売上が矛盾することもあるので、顧客価値を追い求めるPMと、売上を追い求める事業責任者は同一格でないほうが好ましい。

今、私はたまたま事業責任者兼PMになっており、これはこれで経験と思って受け入れていましたが、やはり意思決定が顧客価値寄りでアンバランスになってしまう。
対等に議論しながら一緒に事業計画を作っていける売上を追い求める事業責任者が別人格で必要だと再認識しました。
一人で全部できるようになる、が決して目指す姿の正解ではない。

ちなみに余談ですがこの時クロスマート杉原さんの字がめっちゃ上手いと気付き、この後すべてのテーブルでご一緒することになるのですが、完全にメモを放棄して喋りまくりました。

惚れ惚れする杉原さんの達筆(左・中央)と私の下手な字(右)

Sprint2:PMのオンボーディング・人材育成

問題提起

スタートアップや新規事業の場合、大抵はPM1人からプロダクト開発が始まり、事業規模の拡大に沿って人員拡大していきます。
事業が拡大し、PMが増員した時のオンボーディング手法、その後の育成、更にはシニアPMの行く先まで幅広く知見が共有されました。

やってみせ、言って聞かせ、五十六先生の言葉を胸に

  • シニアもジュニアも結局オンボーディングに効くのはOJT。

  • やってみせ、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ(by山本五十六)の精神で。

  • 成功体験を早くすること、失敗を上手にさせることで自信をつけてもらうと立ち上がりが早い。

異職種からのPMオンボーディング

  • デザイナーやエンジニアなどの異職種からPMに転向する時、既存のPMの仕事ぶりに対して不満があり「こいつよりできるな」という怒りがモチベーションになっていることが多い。

  • そういったモチベーションが燃料になっていると、馬力があって頑張る人が多い、上手く育てると戦力になる。

  • 怒ってる人って扱いづらい側面もあるけど、熱量がある人の領域を広げ、機会を与える組織の度量が必要。

シニアPMのその先のキャリアパスとは

  • シリコンバレーのPMの主流は、とにかくやったことがないことにチャレンジする(toB/toC,大企業/スタートアップ,ドメインを変える,etc)

  • シニアPMのその先のバリエーションは

    • CPO

    • 事業責任者

    • 起業

    • VCのValueUpチーム

    • PMのコンサル

クライス&カンパニーの松永さん談。
やったことがないことにチャレンジするという志向性はとても良くわかる。私も100人未満のスタートアップから数万人規模の大企業を経験し、メディア→金融→医療とドメインを変えてきた。
興味が生まれた世界にひるまず飛び込む勇気と、いかに経験があるシニアPMといえどもフィールドを変えるごとにど新人に戻るため、そういった時にわからないことをわからない、と聞ける素直さをいつまでも持ち続けたいと思いました。

Sprint3:ここからのPMの10年を本気で考える

問題提起

LLM(生成AIみたいなやつ)が台頭する昨今、10年後にはPMというロールはLLMに代替されて職を失うのでは、と異常に怯えていた令和トラベルみやっちさんからの議題。

PMに必要なのはパッションとセンス

  • 仕様やテストケースを書くタスクはLLMに代替される時代が来るかもしれないが、そもそもPMの一番重要なスキルはパッションとセンス、ここはLLMでは代替できない。

  • 事業やプロダクトのビジョンを語り、コンテキストやトレンドを作っていく仕事。アーティストであり教祖なのである。

  • むしろ仕様の整合性とか、テストケースの抜け漏れとか、人間がやるよりAIがやる方が向いている。何でも屋としてPMが請け負っている雑用をAIに任せることで、PM本来の仕事に時間を割けるようになるのでは。

そもそも10年前ってPMでした?

  • PMという職業が生まれたのがここ10年未満で、もともと皆ネイティブPMではなく別職種からのジョブチェンジ。このまま10年後もPMであり続ける保証なんてないし、PMという仕事に固執する必要はない。

  • LLMが自分の仕事の一部を代替していいプロダクトができるのであればそれに越したことはない。

  • プロダクトマネジメントはユーザーに価値を届けるためのテクニックのひとつなので、AIで代替できたり、みんなが出来るようになればそれで良い。その世界観においてプロダクトマネージャーはもはや必要ない。

PMに必要なのは瞬発力、つまり筋トレ

  • 今むやみにLLMの台頭に怯えたり、活用について頭を悩ませなくても良いのでは。

  • まだLLM自体そこまで成熟しておらず、LLMが使えなければ仕事が回らないという世界観ではない。自分がそのスキルを必要だと思ったら、すぐに習得できる瞬発力こそが重要なのでは。

  • 新しいトレンドが来た時に、外部環境に適応できる気力と知的好奇心、瞬発力のための筋肉が必要。健康な肉体に宿る健康な精神で10年後を迎えましょう。みんな筋トレしよう。

最後のコマなのでみんなアドレナリン過多で若干ノリがおかしくなっています。
(アジェンダオーナーとしてのポジショントークもありつつ)異常に怯えた素振りをみせるみやっちさんに相反して、参加者はわりと全員どっしり冷静に構えている対比が印象的でした。

ちなみにこのディスカッション、なぜか議事メモの写真を撮っておらず、杉原さんが録音してたAI音声レコーダーのログを元に書きました。そのため他のコマよりも情報量が多い。
改めて、AI技術はツール及び手段として上手く共存するものであって、怯えたり敵対していくものではないな、と思いました。

AIレコーダーが吐き出す謎のログ

おわりに

普段会社では一応シニア層なのでメンバーの自主性とか育成とか考えてそんなに好き勝手は喋れない(それでも喋ってる方だと思うけど)のですが、PMリトリートでは、似たようなレベル感の似たような志向性の人たちの中で、泥臭さも青臭さも含めて心ゆくまで素の自分で語れた気がします。

5.5時間議論し尽くしたあと、打ち上げで日本酒飲みながら追加で3時間くらい話しつつ、いい日本酒は翌日に残らない、という学びも得ました。

最後に、このような場を設け、そして星の数ほどいるPMの中から私を誘ってくださった横道さんに感謝を。

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