女買いの虎の巻
女衒と呼ばれた遊郭に女性を売る者にも一種のマニュアル的なものがありました。
昭和に入ると、世界恐慌の影響を受け日本の不況は深刻化。物価も下がり始めます。
しかし、遊郭への身売りは減少していました。
不況になると身を売る女性は増えそうなものですが、娼妓は法律により18歳以上しかなれなかったので、もっと手軽な15歳からなれる酌婦になる女性が多かったのです。
娼妓の不足に困った業者は、地方へ女買いへ出かけて行きます。
この時代でも、店の売り上げに直結するのは、やはり女性の質でした。
当時、楼主達の間では、女買い(花買いとも言われた)の虎の巻、なるものが存在しました。
そこには、外見から見える女性の性格が事細かく書かれています。
おそらく、人相学が元になっているのかと思われます。その虎の巻を紹介します。
「眼について」
○大きい眼
気が強く働き手
○眼尻の下がった眼
男に好かれ熱愛される
○眼尻も眉尻も下がっている眼
男難の相有り
○眼玉がよく動くまるい眼
思案定まらず、移り気
○眼尻も眉尻も上がっている眼
愛嬌とぼしく危険の相
○両方の眼と眉が近い
気短く、よく争う
○両方の眼と眉が遠い
気長く、積極性に乏しい
「眉について」
○両方の間隔が近い
気が小さい
○両方の間隔が遠い
気が大きい
○大きく濃いく長い
理性的で、男難の相
○細く優しい眉
気立てやさしく幸福の相
○怒り眉
見識が高い
「ひたいについて」
○広いおでこ
愛嬌あり、気軽で芸にも上達するが苦労性
○狭い富士びたい
苦労性
○角張ったひたい
意思つよく強情、商売に熱心
「鼻について」
○まるく高い鼻
一見高慢にみえるが品性は高尚
○鷲の口ばしに似た鼻
残忍性があり、人に嫌われる
○低く獅子鼻
毒気なく金銭運あり
○鼻すじなく平っぺたい鼻
男運がなく恵まれない
○上向き鼻
浪費癖があり、金銭に苦しむ
「声について」
○甲高い声
軽率で騙されやすく、失敗が多い
○大きい声
意思つよく姉御肌、何をやっても相当成功する
「尻について」
○大きい出尻
品はないが健康で正直
○小さい尻
優しくしとやか
「その他」
○人を見上げる女
陰険で危険性がある
○えくぼのある女
愛嬌があり人気商売に最適
○丸顔で背が低い女
気前よく愛嬌がある
○長顔で背が高い女
愛嬌がない
○胸厚く鳩胸の女
下品だが健康
○胸がうすい女
上品だがひ弱
○きめこまかく色白で多血性
わきがもちが多い
こうしたメモを持って業者は女買いに出かけていっていたのです。
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