アミューズの決算から考える今後の業績と芸能事務所の価値

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社アミューズです。
この会社の決算読んで欲しいという要望を大募集します!!にてご要望いただいた会社です。

アミューズは佐藤健さんや吉沢亮さんなどその他にも多数の有名俳優や女優さらにサザンやエレカシ、ワンオクやパヒュームなど有名アーティストも多数所属している芸能事務所で、亡くなられた三浦春馬さんが所属していた事務所でもあります。

最近ではジャニーズなどでも独立が増えていたりと、youtubeなどテレビ以外の媒体で十分な活動が出来る環境が出来ていますし、テレビという利権が縮小する中で、芸能事務所のような中抜きビジネスの価値が低下していっている可能性は高そうです。

さらにこんなニュースもありました。

アミューズ、4~9月配当ゼロ コロナ影響で16年ぶり
企業決算
2020/9/15 20:30日本経済新聞 電子版
芸能プロダクションのアミューズは15日、2020年4~9月期の配当(中間配当)をゼロにすると発表した。中間配の無配は16年ぶり。

どうやら16年ぶりの無配となったようです、今回はそんなアミューズの今後がどうなっていくのかについて考えていきましょう。

それでは早速こちらの資料をご覧ください。

売上高は55.9%減の78.2億円、営業利益は68%減の9.5億円、純利益は83%減の2.9億円となっており、かなり業績が落ち込んでいる事が分かります。

新型コロナで芸能活動の大部分が停止してしまいましたから厳しい状況にいるのは間違いないでしょう。

続いてはう少し詳しく内訳を見ていきましょう。

アミューズの事業セグメントは①イベント関連事業(所属アーティストなどのライブ関連)②音楽映像事業③出演・CM事業と3つある事が分かります。
それぞれの業績の推移は
①イベント関連事業:売上142.4億円→38.1億円 利益20.9億円→3.8億円
②音楽関連事業:売上21.0億円→28.6億円 利益5.7億円→2.9億円
③出演・CM事業:売上14.1億円→11.4億円 利益3.1億円→2.7億円
となっている事が分かります。

アミューズの主力事業は、所属アーティストのライブ関連のイベント事業だと分かります。
それが新型コロナで一気に中止となった事で相当なダメージを受けてしまったようですね。

続いて各事業がどうしてこのように推移したのかについて見ていきましょう。

まずイベント関連事業はイベントの減少による収入減があったものの、サザンの無観客ライブや、ファンクラブ収入などがあったようです。
超人気なアーティストを多数抱えていますから、ファンクラブ収入で一定の収益を確保できるのは強いですね。

ファンクラブは運営コストは低く利益率が高いと考えられますので、ファンクラブからの利益が全体を支える事でイベント関連事業が一応利益を出せているのだと考えられます。

しかしライブイベントが中心の事業だったので、全体としては大幅な減収減益となったという感じですね。

まだ大規模なライブなどが再開になる見通しは立っていませんから、まだしばらくは業績の悪化が続きそうです。

また、今のアーティストの収入源はライブに付随する物販がメインになっていますので、超人気のサザンなどは無観客ライブとファンクラブ収入でどうにかなるのでしょうが、ライブの場を失った多くのアーティストは相当苦しい状況にいます。

文化を守らないと長い人生が面白くなくなってしまいます、少しづつ人が集まる事も許容され始めていますのでアーティストを守るためにもライブなども再開されて欲しいですね。

続いて音楽・映像事業に関してはレーベル収入(ライブBD・DVD)が増加した事や映像作品の販売収入が増加したようです
巣籠りで動画を買って見るという需要が増えた事は容易に想像できますね。

しかし劇場配給分配収入が減少した事で減益となってしまったようです、映画業界では休業に加え、映画館の入場者数の制限、新作公開の延期などが起きていますので相当厳しい状況が続いていそうです。

また、映画公開の延期はその後の映画をBDやDVD、配信で販売するのにも遅れが出ますので影響は長期化しそうです。

ちなみに、アミューズはもともと映画の配給会社として始まったようで、今でも映画配給事業を積極的に行っているようです。

最近は映画の人気も復活してきたという事もあるのかもしれませんが、意外と映画配給は利益率の高い事業だった事は意外でした。

続いて出演・CM事業ですがここは芸能界もストップしていましたし、出演収入の減少によって減収となったようです。

企業も業績不振のところが増えて広告費に関しても抑制の流れとなっていますから、こちらも広告単価の減少によって利益率の悪化が続きそうです。

続いてこちらの資料をご覧ください。

業績は悪化していますが自己資本比率は60.6%→74.7%へと良化している事が分かります。

ではなぜ業績悪化の中でも自己資本比率は良化したのでしょうか?

まず、現預金、売掛金などの手元資金が383億円→291億円へと92億円ほど減少している事が分かります。

一方営業未払金は127億円→43億円へと84億円ほど減少していることが分かり、純資産自体には大きな変化がない事が分かります。

という事は多くの事業がストップした事で財務諸表がシュリンク(縮小)したというだけで本質的には財務状況が良くなっているという訳ではないようです。

今後事業が再開していくにつれて自己資本比率は再び悪化するでしょうからこの点に関しては意識しない方がよさそうですね。

単純に言うと資産100億円、負債50億円、純資産50億円であれば自己資本比率50%ですが、ここから資産20億円を使って負債20億円の返済をすると資産80億円、負債30億円、純資産50億円となり自己資本比率が62.5%になったよねって事で本質的な変化は起きていないという事です。

また手元資金は291億円、短期的な負債である流動負債は69億円ほどですから資金的な余裕は大分あるようですので、多少の業績悪化ではびくともしないでしょう。

という事で基本的には全事業での見通しが良くないという事で、しばらくの間は業績の悪化が続くことを予測します、しかし財務状況が良好なの回復まで待つだけの体力は十分にありそうです。

また三浦春馬さんの件もありましたし、内部にいるタレントさんなどからすると、テレビの力が衰えている中で芸能事務所に所属し続けるのかというのは考えるところがあるはずです。

スケジュールや受ける仕事などで自分の裁量権を増やしたい方は多いのではないでしょうか、

例えばyoutuber事務所であるUUUMなどでは一足先に所属タレントの独立がかなり増えいています。

その背景にはテレビなどと違い、独立しても圧力をかけようが無い事の他に、個人が主導してチームを作る事が容易になったという事も大きいでしょう。

タレント主導で自分をマネジメントするチームを作るのが容易になったという事です。

そもそも芸能事務所内で会社に就職した担当者が付くよりも、自分を選んで来てくれたマネジメントチームの方がコミットメントが高いはずですよね。

テレビ利権の縮小とともに芸能事務所の価値というのは低下しているのは間違いなく、スマップの件などもあり独立したタレントを干すのにも世間の目が厳しくなっていますから、経営者的なマインドを持っているタレントは独立が増えていくかもしれません。

一方でライブがアーティストの収入のメインとなった事によって、コロナ前ははライブをするためのドームやアリーナなど大きな会場は人気で確保するのがかなり難しかったようです。

有名アーティストを多数抱えているアミューズとしてはそういった大きな会場とのつながりが強く会場を取りやすいと考えられますので、これからそういった大きな会場でライブをしたいアーティストにとっては魅力的なはずで、その点では相当強いかもしれません。

ですが芸能事務所自体の価値は減少していく可能性は高そうですので、長期的にも規模が縮小していく事を予測します!!

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