小僧寿しの決算見たらそれグレーゾーンの買収スキームだったんじゃねって話
どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。
過去記事一覧
いつも妄想で書いている私ですが、今日の記事に関してはいつも以上に妄想ですのでご容赦ください。
さて、今回見ていくのは小僧寿しです。
こんなニュースがありました。
80年の「外食王」小僧寿し 債務超過解消も険しい再建
2020/2/21 14:22
持ち帰りすし店を展開する小僧寿しが瀬戸際に立たされている。19日午後10時すぎ、当初の予定日から3営業日遅れで2019年12月期の連結決算を発表した。18年12月期に債務超過に陥っていたが、19年12月期末の純資産は900万円のプラスを確保。上場基準に抵触する2期連続の債務超過は回避できたが、収益改善の策に乏しく、再建の道はなお険しい。
小僧寿しの19年12月期の最終損益は1億1600万円の赤字だった。前の期の16億円から赤字幅は縮小したものの、10期連続の最終赤字となった。
焦点となったのは、同社の資産状況。18年12月期末の純資産は10億5700万円のマイナス。2期連続の債務超過に陥れば、ジャスダックの上場基準に抵触する。当初決算発表を予定していた14日にも「資産の評価作業を精密に実施する」ことを理由に発表日を延期。個人株主からの注目が集まっていた。
19年には大株主のJFLAホールディングスからの債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)を実施。投資ファンドを引受先とする第三者割り当てによる新株予約権を発行したほか、介護・福祉事業をJFLA傘下の事業子会社に売却。期末には900万円の純資産をなんとか確保した。
株式市場には2期連続で債務超過が続くと上場廃止というルールがあるのですが、それを回避したというニュースですね。
では、どうして10億円もの債務超過になったのでしょうか?
そもそも小僧寿しの財務体質が急激に悪化したのは18年12月期にデリバリーを手がけるデリズを子会社化し、発生したのれんを減損損失として計上したためだ。毎年の損失が積み上がり徐々に純資産が減少していたが、減損の計上で純資産はマイナスに転じた。
デリズという会社の買収失敗によって、7億9千万円もの減損を行った事が大きな要因で10億円もの債務超過になったようです。
ではその買収の内容を見てみましょう。
デリズの買収時の企業評価には、ディスカウントキャッシュフロー法という手法を採用しています。
ディスカウントキャッシュフロー法というのは簡単に説明すると「今後5年で10億稼げそうだから、現在の企業価値は8億円です」といった感じで、将来の予測から割り引いて現在の企業価値を算定する方法です。
デリズの買収では、その将来の予測にデリズの策定した3ヶ年の事業計画が使われている事が分かります。
続いてこちらの資料をご覧ください。
デリズの3ヶ年計画では
平成31年2月度 売上:13億9千万 利益:3900万
平成32年2月度 売上:21億4千万 利益:1億3千万
平成33年2月度 売上:35億7千万 利益:2億2千万
という計画を立ててる事が分かります、その結果1株の価値は4377円~4623円と算定されています。
デリズの発行株式数が6万5千株ですから2億8千万~3億円ほどの企業価値だと算定されているわけです。
最終的には約2億8千万円で買収を決め、この結果小僧寿しは7億9千万円ものれんを計上することとなります。
続いてこちらの資料をご覧ください。
譲渡前のデリズの業績を見てみると売り上げは、2億6千万→7億4千万→4億8千万と上下を繰り返し、利益は-1億6千万→-70万→1700万へと変化していることが分かります。
さらに純資産は-3億7700万円ほどの債務超過の状態です。
さてみなさんこの会社が先ほどの事業計画を出してきて、「3年後売上30億になるし、うちの会社は2億8千万円の価値があるからそれでよろしく」といってきたらどうしますか?
受け入れるわけないですよね、事業計画が夢物語過ぎて笑ってしまいます。私であれば最低でも成績が横ばい以上の計画は受け付けません。
実際このデリズという会社は2016年5月に出前館などを運営する夢の街創造委員会が5000万円で買収し、その後2017年4月にデリズの社長が、1000万円で会社を買い戻すという事をしています。
1年前には1000万円の評価だった会社を、業績が向上したわけでもないのに2018年の4月に2億8千万円という評価を受け入れて買収したわけです。
にわかには信じられないようなことをしていますよね?
なぜこのような評価を受け入れたのでしょうか?
ここには2つの要因があると考えられます。
まず1つ目の理由はこの買収が株式交換という手法を取っていたためです。
株式交換とは、その名の通りデリズの株と小僧寿しの株を交換する事でデリズ株主は小僧寿しの株を手に入れて、小僧寿しはデリズの株を手に入れることになります。
つまり小僧寿しからすると金銭的な支出を伴う事がありません。
デリズの株主が手に入れた、小僧寿しの株を大量に売却すると株価は下落するので既存の株主に損失の可能性がありますが小僧寿しの経営には影響がありませんから、経営面では大きな問題にはならないという事です。
2つ目の理由は、タイトルの通りで「これグレーゾーンの買収スキームだったんじゃっね?」て事です。
実は当時から、現在大株主(とはいえ10数%程度)である㈱JFLAホールディングスという牛角などを運営する会社の取締役や出身者が、小僧寿しの役員の大半という形で経営されていました。
つまりこの買収を決めたのは実質上㈱JFLAホールディングスだったわけです。
さらにデリズの買収と同時にJFLAホールディングスは、小僧寿しの4億円ほどの新株予約権付き社債を受け入れています。(小僧寿しに4億円貸したという事です)
そして、最初のニュースの通りDES(デッド・エクイティ・スワップ)という手法を使って、今期にこの社債を利用して4千万株を取得しています。(以前DESについて解説した記事はこちら)
つまり1株10円で株式を取得することに成功しているわけです。
4億円分の社債を引き受けた際の株価は70円から80円ほどでしたから1年間で圧倒的に安く株式を取得することに成功しているわけです。(※株式は希薄化しているので単純計算は出来ませんが)
まとめ!!
つまりJFLAホールディングスは
1.債務超過寸前の小僧寿しにキャッシュアウトを伴わない株式交換を利用してあえて高値でデリズを買収させる。
2.高値で買っているので減損を行うことになり債務超過となって企業価値が下がる
3.DES(デット・エクイティ・スワップ)を行い、安く企業買収をするという目論見だったのではないでしょうか。
あえて高値でつかむというグレーゾーン過ぎる事をしていた可能性があります!!
しかし、当初の目論見以上に小僧寿し、デリズの業績が良くない可能性が高そうです特にデリズは10年ぶりで営業赤字になったといわれていますからのれんが全額減損になるというのは想定外だったかもしれません。
多少債務超過になる程度で、もう少し減損額は少ない見通しだったのではないでしょうか?
今回は債務超過回避のために投資ファンドに大量の新株予約権を発行(1株11円)したのですがこれは想定外だった可能性が高そうで、投資ファンドのほうが大量の株式を保有する結果になり、圧倒的に希薄化してしまいました。
本来はDESだけで債務超過を解消できる程度の減損で済ませて、上手く買収する予定だったところが、予想以上に業績不振となったことでこの戦略が失敗になったのではないでしょうか。
小僧寿しは、このグレーな戦略で会社の状態がボロボロになってしまいましたから今後はさらなる業績悪化の可能性を予想します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?