音楽フェスを過ごす、別府での週末について。
2023年10月28日に、温泉の街、大分県別府市で、温泉みたいな音楽フェスを開催します。
別府駅前の北浜地区を舞台に、徒歩10分以内の4会場を行き来しながら、音楽と温泉と美味しいご飯と、昭和ノスタルジックな街を楽しみ尽くしてもらいたい1日。
たくさんの飲食店、スナック、バー、地域の温泉がある街を歩き回りながら、遠くから聴こえてきそうな、これまで大好きだった、これから大好きになって欲しいアーティストの演奏を見て回る、そんなイベントです。
前回、主催のAKANEKO代表 深川によるイベント開催についての気持ちをお伝えしたnoteを読んでいただいた方もいらっしゃるでしょうか。
ありがとうございます。
今回は、「なぜ、このような音楽フェスをやろうと思ったのか」を、音楽との触れ合う体験視点から、ご紹介してみたいと思います。
はじめまして。今回のフェスでアーティストの皆様のブッキングディレクターや、イベント全体のクリエイティブディレクションを担当している増田と申します。普段は広告のクリエイティブディレクターというものをしています。
昨年、ご縁があって九州の会社に転職、引っ越しをしてきて、主催の深川と出会い、このようなイベントを共同開催する形になりました。
私たちの出会いから、なぜ、このイベントが僕たちに必要だったのか、雑談のような内容ですが、興味ある方はお付き合いいただけましたら幸いです。
「理想のフェスは脳内にあった」
レコードバーで妄想フェスを語り合う
最初の出会いは、大分県内の洋服のセレクトショップで買い物をしていた時に、「好きそうなレコードバーが別府にある」と店員さんから教えてもらったことがきっかけです。
レコードが並び、DJができて、商店街の中にある。新しい街で同僚以外に何もつてのなかった自分は、インスタグラムで彼のレコードバー、「the HELL」を調べて、連絡をしてみました。
店を訪れて話をしてみると、そこは音楽に溢れた自由な空間でした。
(ちなみに、引越しの際に置き場のなかった数百枚のレコードは今、the HELLで自由に聴くことができます)
さらに、昔同じ会社で働いていた時期が重なり、共通の知人がいることがわかり、今私が働いている会社でも彼は独立前に働いていました。
温泉に入るために別府へ毎晩のように通ったり、彼の店で、買ったレコードを流したり、DJをしたりしているうちに、彼はバー経営以外にも、AKANEKOという屋号で、音楽イベントを開催していることを知りました。
大分県内を中心に、老舗温泉旅館でのライブ、別府湾を眺める森の中のカフェ、大衆演芸場での海外アーティストの来日公演など、大分県の魅力を再発見できる環境とグルメで、音楽を体験するという趣旨でした。
お互いに「こういうイベントや、ライブ、フェスがあったらいいね」と話すうちに、僕たちの中で2つの方向性が見えてきました。
僕は、かっこいいオルタナティブバンドのライブが、真夜中に開催されて、アーティストの出番と出番の間を、イケてるDJがこれでもかというくらいに踊らせる。そこにいる人たちは、「今、単純にかっこいいもの」を存分に、全身で体験できる音楽イベントを。
彼は、別府駅前の繁華街を舞台に、歴史ある映画館や、ライブハウス、ゲストハウス、ナイトクラブなどで、大分県内外のアーティストが演奏し、そのLIVEを求めて、お客さんが街を回遊するイベントを。
2人に共通していたことはシンプルでした。
「誰かが決めた、言葉としてのジャンル」に縛られず、キュレーションをした誰かの感性であったり、今の時代を表す空気のような、いわゆる「こうしたら簡単にまとめられそう」という枠にはハマらず、その日、その場所の空気の中で、人と人と、人と音楽との関連性を、身をもって、自由に、確かめることのできるラインナップが揃った音楽フェスをやりたい。
でした。
その話が出てから1年あまり、僕たちは妄想したタイムテーブルやラインナップを意味のわからないくらいの回数、話したり、LINEで送りあったりしながら、「面白そう!」という音楽フェスのラインナップとは?を飽きもせずに話していました。
その中で僕が思い浮かんだのは、このフェスです。
「Bowlie Weekender 1999」と「all tomorrow's parties」
1999年に、イギリスでとても素敵な音楽フェスが開催されました。Belle&Sebastianというスコットランドのバンドが主催した、「ボウリー・ウィークエンダー」という音楽フェスです。
後に、「all tomorrow's parties」と名前を変えて続きます。
これは、海辺の会場を舞台に、アーティストもお客さんも同じ合宿所のような場所に泊まって、キュレーターとなったアーティストが出演ラインナップも会場の雰囲気も宿泊先の部屋で流れているテレビプログラムも決めているという究極の「誰かの個性」を楽しむ週末です。
そこで共通するのは、「音楽が楽しそう」ということと「誰か知らないけれど同じ場所を共有している」というものだけ。
ライブに行きたければ会場に行けばいいし、海で遊びたければ海岸に向かい、部屋でのんびりとかっこいい映画やテレビも見ることができる。
最高のポップミュージックも、爆音で鳴らされるロックンロールも、クラブミュージック、DJも全部ある!
ジャンルを選ばずに、ただ、みんなで見たかったかっこいいアーティストが並んでいて、みんなで同じ場所に向かっていく音楽フェスです。
※カッコ良すぎるので注意
( フルバージョンはDVDで中古で購入可能。インターネット上では自己責任でお探しください)
こんな週末を過ごすことができそうな場所が、別府でした。そして、深川が主宰を務めるAKANEKOのイベントに対する考え方でした。
幸いにも、今回はSUNLINE BEPPUというライブ会場の1つに宿泊することができます。(宿泊チケットの予約は以下より。入場券も必要です。)
真似したかったわけではないですが、ちょっと近づけたかもしれないと勝手に思っています。
ライブを見たり、クラフトビールを飲んだり、映画を観て、そこで謎の連隊グルーヴが生まれないかなと、密かに期待しています。僕はその夜の部のキュレーションを担当します。
各ステージのタイムテーブルは、主に2人で考えています。その中でも、お互いの個性や空気感を大切にしながら、順番や体験を設計しています。
休日に鳴る最高の音楽って何だろうか
今の時代に、少しだけ窮屈に感じることがあります。
それは、「個の時代を大切に」と言われながらも、「シンプル」なことが好まれ、安易な再現性や再生回数が評価されやすく、個人の属人的な個性が失われていそうな空気です。
知らないうちに、「これが当たり前」と言われ始めたことが1つの評価基準になっていて、「できていて普通」になっている。
1人1人の持っているSNSアカウントのタイムラインは2つとして同じものは存在しないのに、世の中のカテゴライズは標準化の中にある矛盾。
その中で「最高の音楽とは何だろうか」と考えていました。
持論かもしれませんが、「どんな気分の時でも、どんなシチュエーションでも、どの時間にでも、天気や場所さえも関係なく、同じように素敵な気分になれる音楽やレコードは、すごいのかもしれない」と、いつからか自分の中で1つの考えを持つようになりました。
それは誰からも邪魔されない、「自分の中の1つの個性」なんじゃないかと思っています。
自分だけの特別な趣味というか、サウンドトラックのようなもの。
簡単なカテゴライズではない、とても普遍的でありながら、とても個人的なもの。
もしかしたら、「ある休日」も同じなのかもしれません。
同じ場所にいて、同じ時間を過ごして、同じアーティストのステージを
見る。だけど、誰一人として同じ休日は存在しない。
それが「音楽フェスのある1日」かもしれません。
音楽フェスにあるタイムテーブルは、あくまで時間割であって、過ごし方のガイドブックではありません。1人でも、友達とでも、家族とでも、感じるままに、気の向くままに気になる場所やステージに足を向けるきっかけになる1つの地図のようなものです。
そのイベントを「こうだったらいいな」と企画する僕たちの役割は、1つの「これもいいよね」という提案のようなものです。今、世の中にはたくさんの素敵な音楽フェスがあります。
今回の「いい湯だな!」は、ぼくたち運営チームの、1つの個性みたいなものだと思っていただけたら幸いです。
その結果が、みんなで温泉に入りに行く時間の「ONSEN TIME(温泉タイム)」や、イベントへお誘いしたアーティストや、飲食店の皆様の顔ぶれなのかもしれません。
「みんなで一緒」と「みんなと同じ」は、言葉は似ている気がしますが、意味合いは大きく違います。
10月28日まで2カ月を切ってきました。
毎日、細かい準備作業に追われていますが、誰かができないことは誰かがチームとして補いながらやっています。
当日は思い思いの時間を過ごしてみてください。そのための1日を最大限準備できたらいいな、と大好きな出演アーティストのプレイリストを聴きながら「どう鳴るんだろうな!ここで!」と妄想しながらお待ちしていますね。
be nice.
イベント情報
公式HP - 気が向いたらオフィシャルHPをチェックしてみてください
今回の記事担当:増田ダイスケ