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即レスとシングルタスクによる生産性向上の矛盾

よく仕事のデキる人は”レスがとにかく早い”と言われている。
本を出版したりする超有名起業家などの著名人と比べても、われわれサラリーマンにはあまり現実味はないが、実際仕事をしていく中でもたしかに、大した問い合わせでもないのにいつまでも回答が来なかったりすることは社内、社外ともにあり、仕事が滞るなんてこともザラにある。

まだ社内であれば、不本意ながらこちらから聞きにいくなどで致命的な状況は避けられるし、その人の社内評価が落ちるだけなので大きな問題にはならないが、社外に対してもレスが遅いことは実は大きなチャンスロスを生む可能性を孕んでいる。
そしてそんな理由で発生する小さなチャンスロスは大抵は、表に出ることもなく誰も気がついていないところで損失が生まれている、ということも多いのではないだろうか。

社内でレスが遅いものの社外へのレスは早い、という人間をぼくは見たことがないので、そうなると社内でレスが遅い人間は営業先などからの信頼を十分に得られていないのではないかと感じてしまう。
そう考えるとこの話題は生産性だけの話ではないのかもしれない。

レスが遅くなる本当の理由

実際レスの遅い人というのは、いろんな問い合わせに対して考えることを一旦後回しにする傾向があるように思う。
後回しにしたものをそろそろ回答しないといけないというタイミングで、改めて問い合わせの内容を思い出し→考えて→回答する。この”思い出す”という作業が地味に生産性が低い。
問い合わせや質問を受けるタイミングというのは、会議や打合せの中で受けることが多く、そのときは問い合わせの背景や前後の文脈なども記憶に新しい場合が多いため、考えて→回答、はそんなに難しくはない。それを目の前の作業を優先したり、考えることが億劫で後回しにすると、いざ考えるタイミングになって背景の記憶を”思い出す”という作業をしなければならず、後回しにしたものが多ければ多いほどこの作業に時間がかかる。
”思い出す”ために、メールを見返す、資料を見直す…などをしているとどんどん回答は遅くなるし、その作業がめんどくさくて億劫になってなかったことに忘れてさられてしまう、なんていう負のスパイラルに陥ってしまうのもよくある話だろう。
もちろん、問い合わせや質問に対して正確な答えが求められいる場合などもあるので、何でもかんでも即レスすれば良いという話ではないが、レスが遅い人が正確性を求められる問い合わせや質問ばかりを受けているというわけではないように思う。

遅レスは信用を失う

回答しているならばまだ良いが、後回しにしたものに埋もれて回答を忘れる、みたいなことが起こると、それはもう相手からの信頼は一気に地に落ちる。
さらに後回しというのは、本人だけでなく周りの人間のパフォーマンス低下にも繋がる。
問い合わせをした人間はその回答を待っている。この回答がもらえれば、新たなアクションが起こせるが回答か来ないために、その案件に関してはその間はなにも動かない。仕事全体のスピード感が落ち、その結果問い合わせをした人間の評価を下げることにも繋がるかもしれない。
回答をもらう、という仕事が遂行できていないのだからある程度はその回答がもらえなかった人の評価が下がるのも仕方がないといえばその通りなのだが、もとを正せば回答が遅いことが悪いのだから、周りの人間からすればレスの遅い人とはなるべく仕事上の付き合いはしたくない、と思われても仕方がないだろう。
回答を貰う側も同じように忘れてしまっていたら、最終的にトラブルに繋がることだって考えられる。さらにこれが取引先の場合であれば、回答の早い他社に仕事を奪われるということも十分考えられるだろう。

こういった信用という意味でも、即レスは周りからの評価も高くなるし成果も出やすいので、結果的に”デキる人”認定をされるというのもなんとなく納得できる。

シングルタスクこそが生産性向上のカギ?

一方で、仕事術の本やビジネス系YouTuberの動画などでもシングルタスクで生産性を向上するという話はよく耳にする。
シングルタスクによる生産性向上とは、ひとつのタスクに集中し、他のことをしない時間を作って作業を効率的に行うということ。
つまり、ひとつのことに集中して取り組んでいる間は、メールやチャット、電話にも一切対応しない。後回しにする、ということである。
わかりやすい例えとして、午前中はメール、チャット、電話のあらゆる問い合わせをシャットアウトして、提案資料の作成やプレゼン資料の作成などに集中する、というのは理想的な生産性の高い仕事のやり方だろうし、実際仕事のデキる人は少なからずこのような仕事の仕方をしている。

たしかに、ぼく自身も昔はよくメールやチャット、電話対応にばかりで時間を費やしてしまい、後で振り返って一日なんの仕事をしていたんだろう、と思うことがあった。
また、一つの仕事をしている最中にもっと優先してやらないといけない仕事を思い出したり、上司からの問い合わせ対応などに時間が取られてしまい、重要な仕事に取り組めずに残業して挽回する…などはまさにサラリーマンあるあるなのではないかと思う。
実際、残業の多い人はこういった場当たり的な対応に異常に時間を取られていることが多い。
この場当たり的な対応のたちが悪いのは、本人はそれぞれの仕事に誠実に対応しているため、自分自身で生産性が低くなっていることに気が付きづらいということ。
本人としては、業務量が多すぎて残業が減らないと感じているが、上司など周りからすると生産性の低い働き方をしているという評価になってしまうので、本人の自己評価と会社からの評価に大きな差が生じてしまい、本人、上司双方の不満の温床になってしまう。

結局、どっちの方が生産性は高いのか?

結論から言うとどっちもやる、なんだと思う。
おもしろいのが、先程の即レス=デキる人、と言われていた著名人でも仕事術を聞かれるとこのようなシングルタスクで仕事の生産性を上げるということを語っている。
一見、これは矛盾しているように感じるが、実際はこのふたつの両立こそが最大の生産性向上ではないかと感じる。
結局”即レス”ができる人というは、聞かれた内容についてはすでにどこかで考えた経験があるのだ。一度考えたことのある事柄だから”考える”という労力もあまりかけずに回答ができる。
後回しにする人の”思い出す”という労力だけでなく、”考える”という労力もそんなにかけなくて済むので結果的に即レスができているだけ、ということだ。
言われてみれば、ぼく自身も得意分野であれば考える間もなく回答することができる。
考える間も必要がないのであれば、シングルタスクを妨げる要因にもなりづらい。

例えば午前中は集中する作業、思考する仕事をシングルタスクで行い、午後は打合せやこなす業務を中心に行う、など1日のうちで仕事の取組み方を予め決めておく。
午前中に溜まった問合せは午後イチで即レス対応すれば、待たせたとしてもせいぜい半日程度で済むだろう。
そしてその結果、仕事全体の生産性が向上する。何よりこれを続けていくと周りの人に対して、あの人はすぐに回答をくれるという安心感を与えることができると同時に、あの人はこの時間は集中してる時間だからは別の時間に聞こう、などを自分の仕事の取組み方を理解してもらうなども期待ができる。

即レスとシングルタスクの両立こそが生産性を最大化するコツであることは見えてきた。
じゃあシングルタスクの邪魔にならない、即レスができるようになるにはというと…自分の仕事に対して誰よりも考えると言うことに尽きる。

結局はどれだけ自分の仕事に責任を持てるか、自信を持って自分の意見を語れるか、が大事ということ。
考える総量が多ければやはりそれだけ自分自身の思考も深くなるので、仕事に対するモチベーションや取組む姿勢が高くない人にはできない。
ある意味、生産性の低い人が評価されないというのはあたりまえのことなのかもしれないが、それと同時にモチベーション高く、取組む姿勢が前向きな不器用な人を救える唯一の方法なのかもしれない。

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