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オン/オフのスイッチ

ぼくがサラリーマン人生をスタートさせた頃、まだまだ世の中はリゲインのCMのように(古い?)いわゆる“24時間戦えますか?”状態だった。

営業であったこともあり、“365日24時間取引先からの電話は何がなんでも出ろ”と教育されてきた。

もしかしたらただただブラック企業だっただけなのかもしれないが、転職することとなり辞める頃(入社から約5年後)には、そんな企業戦士的な働き方よりも仕事とプライベートをきっちり分けるスマートな働き方をする人もチラホラ出てきていた。

そこから10年程の月日が経過し、今の時代の仕事のオン/オフスイッチの在り方や是非について考えてみようと思う。

デキる人の象徴!?

オンオフ

ちょうどぼくが新卒で入社した会社を辞める頃、仕事のデキる人たちを中心に徐々にオン/オフを分けるスマートな働き方をする先輩達が増えてきた。
もちろん、その先輩方は仕事をある程度仕組み化しているから仕事は早くて正確、ミスなんて起こさないから成果もしっかり出すし、おかげで社内評価も高い。

いつからか、若い社員はそんな先輩達に憧れてオン/オフのメリハリをつけようと真似を始めるが、当然上辺だけのモノマネなどうまくいくはずもない。

成果が伴わず、スピードを優先した結果のミスが更なる仕事を生む、にも関わらず残業はしないという無責任極まりない間違った解釈をしてしまう輩も出てきてしまっていた(当然ながらそんなことをしたらこっぴどく叱られる)。

そんな時代から月日は経ち、10年後の今となっても同様にオン/オフを切り分けられることが求められているのだろうか。

時代の流れ的には社員の”ワーク・ライフ・バランス”を大切にするというのは今やどの企業でも言われていることだろう。

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ワーク・ライフ・バランスとは「働くすべての方々が、『仕事』と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動といった『仕事以外の生活』との調和をとり、その両方を充実させる働き方・生き方」のこと。
仕事がうまくいっていると私生活でも心のゆとりを持つことができ、また、私生活が充実することで仕事のパフォーマンスも上がるという好循環を目指します。                

”ワーク・ライフ・バランス”を改めて調べてみると、上記の通り。
つまりは「仕事ばかりしてないで仕事以外の生活も大切にしようね」ということかなとぼくは捉えた。

あくまで”ワーク”と”ライフ”のあり方を考えて、偏りがないようにしましょうというのが主旨であるようだから、”ワーク”と”ライフ”をきっちりと切り分けるという10年前の形とは少しニュアンスは違うのかもしれない。

世の中では徐々にオン/オフのメリハリ型から10年ほど月日を経て、”ワーク”と”ライフ”の最適バランスを模索する型へ緩やかにシフトしてきているようだ。

オン/オフきっちり分けない方がラク

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そんな中、ぼく自身は全くと行っていいほどオン/オフのメリハリがつけられない人間である。

新卒入社の会社での英才教育のおかげなのか、就業前後でのメールやチャットでの仕事のやり取り、休日の電話対応等は全く抵抗がない。

電話やメール、チャットの通知を見ると、なにかトラブルが発生してしまっているのではないか、急ぎの確認や相談をされているのではないか、などと考えてしまい気が気でない。

むしろ、電話やメール、チャットを見ることでトラブルや急ぎの対応でないことを確認できるのでストレス軽減にすらなっているのではないだろうか。

夏季休暇中でもチャットやメールの返信がきたり、場合によっては仕事の指示まであったりするので、後輩たちからは社畜と思われているのではないかと危惧している。
ぼく自身は、連休後に細かい仕事が溜まっていたり、すぐ返せばすぐに解決できることを放置して忘れてしまうことでより面倒なことになることを避けたいがために、休日でもこまめに連絡を確認している。

直属の後輩には、そこら辺のぼく個人の考え方は伝えているので理解はしてくれていると思うが、他の後輩たちが休日も常にチャットやメールをチェックしていなければならないと感じてしまわないかというのは若干心配である。

あくまで、これはぼく自身にとって一番ラクなスタイルであり、後輩たちにこれを強制しようとは絶対に思わないし、本心でマネしてほしいとも思っていない。

もちろん、トラブル等で休日に対応しなければならない場合もあり、それは仕事をする責任として対応すべきところは対応しなければならないが、それ以外ではプライベートで仕事を意識しすぎる必要はないと思っている。

最近では夜遅い時間や休日などはなるべくメール等を予約配信にするなどをして、なるべく周りにはわからないように気をつけている。

こう考えると必ずしもオン/オフのメリハリをつけることだけが、”ワーク・ライフ・バランス”を最適にするということの答えではないはずだ。

結局は価値観の違い

ここまで書いて、結局そんなオチかって感じになってしまうが、最終的には個人の価値観によって最適な”ワーク・ライフ・バランス”は異なるという結論になる。

だが、どんな仕事をしていても休日に全く仕事のことを考えないという人も珍しいのではないだろうか。
その人はおそらくだが、仕事が嫌いで考えたくもないという状況なのかもしれない。

仕事をしていれば、少なからず自分の領域に対して興味を持ってしまうだろう。

ぼくのように小売業で働いていれば、休日の家族との買い物の時間などでも、ついつい仕事目線でお客さんの動向を観察したり売場のトレンドを見てみたり。
メーカーであれば他社商品の味を確かめてみたり、飲食店であれば隠し味が何なのかを探ってみたり。
そもそも自営業者や会社の代表だったらオンもオフもあったものでもないだろう。

こういった行動をしてしまうのは別に会社に染まってしまったわけでもなく、週5日約8時間も費やす仕事というものが生活の一部として浸透しているというただそれだけで、それすらも考えないようにすることのほうが不自然だったりもする。

どちらが良いか悪いかの話ではなく、頭の中で仕事が占める割合が多い人もいれば家族や恋人の占める割合が多い人もいる。
同じ人でもライフステージによっては、子供の優先度が高い時期もあるかもしれない。
副業などの選択肢も出てくると、従業員の頭の中のシェア争いなども今後生まれてくるかもしれない。

ワーク・ライフ・インテグレーション

最近では”ワーク・ライフ・インテグレーション”という新しい概念も登場しているようだ。

これは”ワーク”と”ライフ”を対立構造として考えるのではなく、それぞれ人生の一部として統合して捉える概念のことのようだ。

まさにこの”ワーク・ライフ・インテグレーション”の概念で考えれば、無理にオン/オフを切り分ける必要もなくなり、それぞれの価値観にあわせて柔軟に”ワーク”と”ライフ”をデザインすることができるようになる。

企業としては、このような柔軟な考え方を前提とした組織や規定を考えていかなければ、優秀な人材確保が難しくなってくるし、人材はいたとしてもその人材の頭の中のシェア争いに負けてしまうだろう。

最終的には何をしているときが生き生きとしていられるかが、頭の中のシェアと大きく影響を与えるのだろう。
人間は本能的に楽しいことを一番に考えてしまう性質があるのだから、その”楽しい”をどれだけ仕事で作り出せるかが今後の企業側の課題ではないかと感じる。

表面上の多様性を許容するような組織や制度だけではなく、本質的に従業員に”楽しい””意義がある”と感じさせるビジョンがあり、新しいことにチャレンジできるカルチャーなどを磨き上げることが企業の成長に大きく影響を与えるのではないだろうか。

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