自信の育てかた

ぼくは根っからの引っ込み思案。
子供の頃は小児ぜんそくで体も弱く、人前に出るのは大の苦手。

色白で白血病の疑いまでかけられたことがあったそう。

自分に自信がない。
学生時代にろくに勉強もせず、部活もそこそこにバイト。
学歴もない自分に自信を持つなんてことはなかった。

これはぼくだけでなく、多くの人が抱える不安なようにも感じる。

社会に出たばかりの新入社員などは特にその傾向はあるかもしれない。
仕事においてはまだ何もできない、わからない。

1年先の先輩が普通に取引先と電話や商談をしていることに憧れ、自分なんかが1年後あんな風になれるのだろうか、と心配になる。

先輩や上司はやさしいのだろうか、仕事でミスをしたらどうしよう、辛いことがあったら誰かに相談できるだろうか…

そんな心配ばかりだろう。

その一方で、世の中には何でも自信満々に自分なりの回答をできる人がいる。

YouTubeやSNSの世界ではあらゆるジャンルにおいて、そういう人がたくさんいて大衆を魅了するような人の言葉には説得力も大きい。

その人たちはどうしてそんなに自信を持って即答できるのだろうか。


結論から言えば、即答できる人たちは自分で経験しているからである。

自分が通ってきた道だから、少なくとも自分はどう通ってきたかは話すことができるし、もう一度同じ道を通るなら今度はこうする、というのも具体的に考えることができる。

日本の悪しき習慣として揶揄される、年功序列もこの視点で考えれば確かに理にかなっているような気もする。

自分より前にその道を通ってきた人の意見ならたしかに聞く価値はあるし、少なくとも初めてその道に対峙する人よりは最適な道を選ぶことはできそう。

そう考えれば、これまでの年功序列というのは割と説得力のある制度なのかもしれない。

ただ、現代でも同じことは言えるかというとそうでもない。

様々なテクノロジーの進化によって、必ずしもこれまでと同じ道のりを通る必要がなかったり、全く別の道を新たに作り始めたり、あるいは道を進まないという選択すらできるようになってきている。

これまでの道のりは整備された道の選択だったのが、現代においては新たな道を作り出したり、そもそも道を通らず空を飛んでみたりと選択の幅が拡大してきている。

たとえば20年前の1年間で得られる経験や学びは、現代であればインターネットやスマートフォンの普及、あらゆるプラットフォームを活用すればほんの数日で習得できるかもしれない。

それくらい世の中は進んでる。

考えてみれば、自分の新入社員時代と今の新入社員。
比べてみると圧倒的に後輩たちの方が優秀であることは間違いない。

これはぼく自身の能力の問題もあるのかもしれないがそれだけではなく(と思いたい)、テクノロジーの進化が大いに影響を与えているだろう。

ぼくの学生時代はPCなんて大学のゼミでしか使わなかった。
それも簡単なパワポ資料、Excel計算しかしていなかった。
ワードもExcelもパワーポイントという言葉すらよくわかっていなかった。

インターネットも就活サイトやちょっとしたエロサイトを見るぐらいしか使っていなかった。

そんな状態で社会人になったぼくの入社当時はデスクに大きなブラウン管のデスクトップPCを使い、ひたすらExcelで表の体裁を修正したり、超簡単な計算式を入れてはそれすら間違えて怒られたり。

今の新入社員はここらへんのスキルはある程度デフォルト。
当たり前のようにExcelやパワーポイントは使いこなす。ピボットテーブルや簡単な計算式なら何も教えずにできる状態で入社してくる。
基本的な使い方を聞かれるなんてことはまずない。

ぼくらより成長スピードが早いのは当然なのである。
成長スピードというより、もうスタートラインが大きく違う。

それなのに社会に出た途端、同じスタートラインのように扱うのは流石に違和感でしかない。

おじさんたちも勉強していかないと、経験値はあっという間に追い越されてしまう。

そうなれば年功序列なんて何の意味もない悪しき習慣となる。
もちろん経験を軽視するわけではないし、価値のあるものであることに変わりはない。
だが、だからといっていつまでもそこにしがみついていてはあっさり後輩たちに追い抜かれて行ってしまうのは間違いないだろう。

話が随分と横にそれてしまったが、ぼく自身の経験においても同じように経験したことで今、ドヤ顔しながら後輩たちにいろいろと意見できているようにも感じている。

転職して4年ほど経った頃。
人事異動で商品開発を担当することとなり、いきなり任されたのが基幹商品2品同時リニューアル。

当社にとっては思い入れも強く、最も売上の高い商品2品を同時にリニューアルする。そのブランド担当をすることとなった。

それまでバックオフィス部門にいたため、社内の仕組みにはある程度の自信を持っていたぼくではあるが、マーケティングに関しては全くの素人。

マーケティング的な分析などこれまで一度もしたことがなかったし、コンセプト設計からパッケージデザイン、製造工場との生産調整などこれまでの業務で関わってこなかった外部の人たちとの会話。

どうやって考えればいいのか拠り所すら見出すことができず、上司や部署内で何度も相談してはボコボコにされる日々。

小さい会社あるあるで、そのブランドに関しては基本的にリニューアルに関すること意外もぼく自身が動かなければならない。

リニューアルだけでない、商品の生産調整や売上管理などのルーティン業務。そんな地味で目立たない業務も同時にこなしているうちに、ぼんやりとこのブランドをどうしていきたいのか、というのが見えてくるようにもなってきていた。

まずは”今”の商品がどのようなコンセプトでどのような人に購入されているのか。購入してくれた人はどうしてこのブランドを購入してくれたのか。ファンになってくれているのか。

逆に買ってくれない人はどうして買わないのか。競合との違いはなんなのか。

リニューアルという未来だけを考えている時には見えてこなかったことが、今を見つめることでいろんな疑問が湧き出てくる。

この疑問に対して自分なりに考えてみる。
データを使って仮説をたててみたり、競合商品とくらべてみたり、消費者調査をしてみたり。

こうやって”今”を見つめていくことで、在りたい姿というものが見えてくることを感じた。


2大ブランドのリニューアルという当社としては大きな仕事をいきなり担当することとなり、プレッシャーをビンビンに感じていたぼくではあるが、この経験の中で腹を括ることができた考えにいきついた。

『このブランドのことを世界一考えてるのは間違いなく自分である』と言えるまで考え尽くすということ。

そのブランドの良いところも悪いところも全てを知っていて、その全てをもってして一番輝かせることができるのは、世界一考えている自分以外には誰ができるんだ、と思えるようになった。

そう思えるくらい、仕事中はもちろん家族と過ごす週末も風呂に入りながらも、ご飯を食べながらも、寝る前もまさに四六時中そのブランドのことを考えた。

これだけ考えた自分がやって失敗したのなら、他の人や偉い人がやったところできっと失敗する。
それに、ぼくをこのリニューアルの担当に任命したのは偉い人たちなんだから最終的にはその判断間違いとなるだけ。

そんなふうに割り切って考えるようになってからはプレッシャーに感じることもなくなり、無事リニューアルは成功。

自信というのはこうやって作られていくものなのだと、この歳になって気づく。

だから、新入社員など自信がなくて当たり前。
目の前のことにチャレンジをし続けて、数多くの経験を積むことが自信へと繋がるのは間違いない。

そして経験ともうひとつ重要なのは『準備』。

若いときには社内研修などで課題の発表などを課せられることが多いが、ただやり過ごせばいいというものではなく、せっかく取り組むのであればしっかりと準備していくことは自信にも繋がる。

準備も経験に近いかもしれないが、その課題に対して『世界一考えているのは自分』と言えるほど考えられればそれは確実に自信になる。
そんな準備をして望んだ課題発表は他の人の何倍もの経験になり、成長に繋がっていく。

『自分に自信がない』という人は、自分自身のことをまだ深く理解ができていないだけ。

自分自身を『世界一詳しい』のは誰がなんと言おうと自分自身であるはず。

それならしっかりと自分自身の”今”に向き合い、好きなこと、得意なこと、苦手なこと、嫌いなこと、やりたくないこと、在りたい姿を考えてみる。

これはすぐに見つかるものでもないし、答えもない。
常に変わっていくものでもあるので終わりのない自問自答かもしれない。

それでも自分自身に『宇宙一詳しい』といえるくらい考え続ければ、いつの間にか自信は大きく育っているものなのではないだろうかと思う。

自信がないなら、とにかく準備をして経験を積む。
それが自信を育てる秘訣なのではないだろうか。


おわりに、そんな想いを140字に凝縮したぼくのツイートがコチラです↓

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