見出し画像

朔の三回忌

2017年7月9日0時13分、朔はこの世を旅立った。

0時13分、ひなが線香を3本焚いてくれた。
悲しい匂いがした。

早いもので、あれからもう3年になる。
朔はやっぱり今でも、特別な猫だったと思う。
猫なのだけれど人間のようだった。猫人間と呼んでいた。
今でもそう思う。

写真は2017年4月29日。なぜこの写真を撮ったのか、私自身よく覚えていない。ただ、この写真だけは、どうしても、他の朔の写真と違うように思えてならない。何かを私たちに語りかけている。それは「今を大切に生きなさいよ」と言っているようでもあり、「今一緒に暮らしている、ひな・ぴいよを大切にしなさい」と言っているようでもある。「人生には限りがあるのよ」と諭しているようにも見える。

2018年1月、神田珈琲園で、朔の写真だけで写真展を開催した。
その時には、このカットは見落としていたと思う。
しばらく経ってから、何かの偶然で、このカットを見つけた。
今、これをA3ノビの写真用紙に印刷して、仕事場兼居間の窓の上に貼っている。壁には、首を撫でられてラリっているぴいよの写真も貼っている。こちらは純粋に快楽に浸っている感じがするが、朔の写真は違う。いつも私たちに、何かを語りかけている。

朔が世を去ってから、私たちの身の回りにも色々な変化があった。親戚関係で様々な問題が顕在化したり、私たちは前のアパートを追い出されるように引っ越しをしたりもした。そして、2019年8月、ぴいよがやってきた。でも、もしも私たちに朔と過ごした時間がなかったら、ぴいよを飼うこともなかったのではないかという気がする。朔が、ぴいよを私たちのところへ差し向けてくれたのかもしれない。ぴいよは2019年2月14日生まれ。朔の生きていた時間に、ぴいよはまだ生命となっていなかった。

私たちは今、お世辞にも「贅沢な暮らし」をしているとは言えない。小さなアパートに、仕事場と住居の機能を詰め込んで、Instagramで見る海外のオカメインコ達が哀れむのではないかというほど狭い部屋を、ぴいよは飛び回っている。そのせいだろうか、ぴいよはこの1年で、狭い部屋でも壁にぶつからずに飛べるようになったし、部屋の空中で直角に曲がる技も身につけた。

ぴいよにかかる費用が安いということも、とても助かっている。朔は、朔自身こそ迷い猫で無料であったが、よく病気をして動物病院のお世話になったし、毎年の予防接種や、毎月のノミ取り薬などの費用もかかった。ダイエットのために、月4000円のキャットフードを食べていたこともあった。おやつの猫缶は1個100円くらい。個数が増えると案外馬鹿にならない。猫トイレの管理も定期的に猫砂(これがまた結構重い)を交換する必要があった。最後の1ヶ月には、通院費用が1ヶ月12万円かかった。

今、ぴいよが食べているミックスシードは400円弱くらいで、これが1ヶ月持つ。ビタミンを足すためにサプリメントを足しているが、これも1ヶ月分で2000円くらい。まだ若いせいもあるが健康で、オウム病や慢性疾患に罹っていないため、病院に滅多に行かない。一見真っ白に見えるほど白く、「色の薄い動物は弱い」という話を聞いていたので、ぴいよもそうなのかと思って鳥専門の獣医さんに質問してみたことがある。すると、実はぴいよは真っ白ではなく、少しだけシルバー(あるいはシナモン)色の羽根があるほか、パール模様(グレーの羽根に斑点)の羽根も持っており、遺伝的に言うと「雑種」なのだそうだ。一般論として純血種より雑種の方が病気には強い傾向がある。ぴいよが純白ではないことなど私たちには何の問題もない(というより、そもそも「白いオカメインコ」という存在を知らなかった)。むしろ雑種で丈夫そうであることを嬉しく思う。

そんなぴいよを私たちのところに差し向けてくれたのは、やはり、朔だったのではないだろうか。
そんな気がしてならない。

でも、朔ちゃんのことは忘れないよ。一生忘れないよ。
朔ちゃん、ずっと大好きだよ。

サポートをいただければとても嬉しく思います。 写真を撮ったり、書き物をしたり、そういう活動に活かします。