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CONTAX T2を使った、上手な写真の撮り方(1)絞り、シャッター速度の話。

2014年にCONTAX T2を再び入手したことは既に書いた。

CONTAX T2を使った上手な写真の撮り方、というか、使用上のノウハウはある。
1993年から2005年までと2014年以降、実機を使ってきて感じたことなどをまとめてみたい。

◉結論◉

簡単に言ってしまうと「感度400以上のフィルムを使って、絞りダイヤルはf2.8にセットして、室内ではストロボを積極的に使う」。

しかし、以上の結論だけではあまりにも身も蓋もないので、書き足します。

※2019/5/12追記:富士フィルムから、感度800ネガカラーフィルムの販売終了がアナウンスされました。2019年12月に販売終了だそうです。T2にオススメのフィルムだったのですが……

残るはコダックのポートラ800くらいですが、高いので何とも……

お手頃価格で色も綺麗というと、富士のSUPERIA PREMIUM 400がオススメです。人物を撮るときには、肌色が綺麗に出やすいPRO400Hというのが特にお勧めです。

※2023/11/19追記
PREMIUM400もPRO400Hも今は入手出来ないみたいです。
富士の400では、X-TRA400というのがあるようです。使ったことはないですが、これが価格的に手頃みたいです。

https://www.yodobashi.com/product/100000001007367048/

◉CONTAX T2の特徴/今時のデジタルカメラ・スマホカメラとの違い

まず、CONTAX T2の特性として、今の(よくある)デジタルカメラとの比較で言うと、重要なポイントが3つある。

(1)手ぶれ補正機能がない
(2)一度フィルムを詰めたら感度は変えられない
(3)シャッター速度は最高で1/500まで、絞りはf16までである。

いずれもT2や当時の銀塩フィルムカメラでは、ほぼ「当たり前」のことではあったが、この3つが今のコンパクトデジタルカメラやスマホのカメラでは解決されている。

まず、(1)の手ぶれ補正機能がない件については、基本的には、カメラを両手でしっかり持つこと。両手でしっかりとホールドし、両脇を締める。そしてシャッター速度を上げるのがベスト。
手ぶれの発生するおおよその基準として、「レンズの焦点距離の数値=手ぶれが目立たないシャッター速度」であると、写真の専門学校では教える。CONTAX T2のレンズは焦点距離が38mmなので、シャッター速度が1/38より速ければよいという計算になる。

ただしCONTAX T2には、1/30・1/60・1/125・1/250・1/500しか選択肢がなく、しかもシャッター速度は手動では変えられない。絞り優先AE、つまり、絞りとフィルム感度から自動的に最適なシャッター速度を選択する仕組みになっている。であるから、なるべく1/60以上のシャッター速度でシャッターを切れる条件を揃えることが重要になる。

◉シャッター速度は1/250以上が好ましい

しかしながら、この「手ぶれが目立たないシャッター速度」というのは、あくまで「目安」と考えてほしい。個人差もあるが、私のように手が震えやすい人は、1/60でも手ぶれが目立つ写真になる。手持ち撮影においては、おすすめしたいのは1/250以上のシャッター速度だ。
カメラを三脚に固定することができるのであれば、シャッター速度は遅くても構わないが、それではコンパクトカメラとしての機動性が活かせないので、ここでは略する。

◉高感度フィルムのすすめ

ではシャッター速度1/250以上を得るにはどうすればよいかというと、(2)に関係してくることだが、なるべく感度の高いフィルムを使うほかない。感度の高いフィルムは、一般的に、画質や発色の点で不利であると言われる。「高感度フィルムなんかT2にはもったいない」という意見もあるだろう。実際、低感度フィルムを詰めてCONTAX T2を三脚に固定して撮影した写真は、驚くほど美しい。
ただ、手持ち撮影を前提に言うならば、いくら発色の良い低感度フィルムを使ったとしても、手ぶれしていては写真として今一つ美しくない仕上がりになってしまう。多少の画質低下には目をつぶってでも高感度フィルムを使う方が、結果的に写真を綺麗に仕上げられる可能性が高い。
今、市販されている銀塩ネガフィルムの最高感度は、モノクロで感度3200、カラーで感度800である。(ここでは増感撮影については略する。そういうことが分かっている人は、この「使い方」を検索する人もいないであろうから。)

◉たくさん撮ろう

感度800のネガカラーフィルムは高価になってしまったので、ちょっと手が出ない……という方も多いと思う。これは悩ましいところである。感度800のフィルムを少しずつ使うのがよいか、それとも失敗覚悟で感度400のフィルムでたくさん撮った方がよいか。私は後者をおすすめする。
感度400と感度800の差は、絞り一段相当。だから、T2の「露出補正ダイヤル」を「-1」に設定して感度400のフィルムを使用すると、T2は感度800のフィルムを基準とした絞りとシャッター速度を決定する。
ネガカラーは多少の露出の過不足はプリントの段階で補正出来ることが多い(特に露出オーバーには強い)。露出不足の場合、人物の肌の表現は厳しいけれど、風景ならは何とか絵になる可能性がある。
高価なフィルムを買って我慢しながら撮影するより、割安なフィルムでどんどん撮った方が、撮影の成功数が増えやすいのでおすすめです。ただし、いくら安いからといって、感度100のフィルムはおすすめしない。手持ちのコンパクトカメラに低感度フィルムを詰めると、シャッター速度が下がって手ぶれしやすい。手ぶれ以外でも、例えば動物や動いている人などは、動体ブレと言って、手ぶれを防いだとしても、被写体の動きが原因で画像がブレてしまう。感度100(感度400より絞り2段相当、感度が低い)では、よほど晴れた屋外で動かない被写体を撮影しないと、綺麗な仕上がりを得ることは難しい(逆に言えば、感度100のフィルムでも、三脚を使えば、動かないもの=風景など=なら綺麗に撮れる。)

◉高感度フィルムも万能ではない

感度1600や感度800のフィルムを使えば万事OKかというと、そうはならない。ここで(3)の、シャッター速度は最高で1/500、絞りはf16まで、という制約が問題になる。
CONTAX T2の絞りをf2.8に設定すれば、暗ければf2.8、やや明るければそれ以上の絞りに自動的に絞られる「プログラムAE」が動作する。(ここでは、絞りを開いて背景をぼかすとか、絞りを絞って被写界深度を稼ぐといった話は省略する。これも、そういうことが分かっている人は(以下略))

しかし、高感度フィルムを詰めてしまったときの問題は、そのまま屋外晴天下で撮影したくなってしまった時である。目安として、屋外の晴天下では、感度800・シャッター速度1/250で適正露光を得るには、絞りf22くらいが必要になる。絞りf16であればシャッター速度は1/1000が欲しい。f22も、1/1000も、CONTAX T2では設定できない値である。ではどうすればよいか。

◉屋外なら感度400のネガカラーがおすすめ

屋外での撮影には感度400のフィルムをおすすめしたい。晴天から曇天くらいまでは、感度400で充分なシャッター速度が得られる。かつ、現在、発色やきめ細かさの点で極めて進化していると思われるのが、感度400のフィルムである。感度400であれば晴天下で、シャッター速度1/250でf11~f16が、おおむね適正露光になる。(ここでは最少絞りによる回析現象についての話は省略する。そういうことが分かっている人は(以下略))

しかし実際には、感度400のフィルムを詰めてしまってから、室内でも撮影したくなった、ということも多いと思う。では、どうすればよいか。
一つには、室内ではCONTAX T2内臓のストロボを、積極的に使うことである。ストロボを焚けば感度400でも大体は何とかなるものである。

◉薄暗い場所では三脚使用、またはT2を柱や壁に押し付けて固定

しかし、室内でもストロボを焚きたくない場合もある。あるいは、広々としたホールの全景を写したい場合などには、ストロボを焚いても光が足りない=暗い=光量が不足する、というケースがある。

そういう場合にはどうしたらよいかというと、まず、手持ち撮影をあきらめる。三脚を使う。三脚がない場合には、手すりや柱、壁など、動かないものにCONTAX T2を押し付けて、ぐらぐらと揺れることを防げばよい。手持ちでも「両脇をしっかり締めて息を止めればよい」という方もいらっしゃるし、実際その方法でシャッター速度1/8秒で美しい銀塩写真を撮影された写真家がいる。でも、こういう技法はよほど鍛錬を重ねないと難しい上に、T2の小型軽量という特性が仇になって、かえって難しい。

◉屋内にはストロボ

屋内での撮影は感度800以上のフィルムでないと厳しい。
ただ、感度800以上のフィルムさえあればOKかというと、そうではない。「明るすぎない室内」ではシャッター速度1/30、あるいはそれ以下になることがある。そういう場合には、たとえ感度の高いフィルムを使っていても、手ぶれは避けがたい。手すりや柱、壁などにCONTAX T2を押し付けて固定するという方法は、ある程度は有効だが、それが出来ないシーンも多い。現実的には室内でストロボなしの撮影というのは難しい。
結局のところ、無難な方法として、感度400のフィルムでよいので、T2内蔵のストロボを積極的に使うことをおすすめする。

ここで今どきのコンパクトデジタルカメラでれば、自動的に感度6400、感度12800といった値が選択されるし、デジタル一眼レフカメラであれば、25600、51200、102400といった値も選択できることが多い。さらには手ぶれ補正機能でシャッター速度が遅くてカメラがぶれても、振動を補正する機能を搭載して手ぶれを防いでしまうことも珍しくない。カメラだけでなくiPhone SE2(2020年発売)にも手ぶれ補正機能が搭載されている。
しかし、いかんせん銀塩フィルムでは、カラーで最高800(昔は3200、1600のネガカラーもあった)、モノクロで3200である。(繰り返すが増感撮影については略する。)そしてCONTAX T2に手ぶれ補正機能はない。フィルムの感度を上げ、ストロボを積極的に使うことが、手ぶれを防ぐ有効手段ということになる。

◉感度800のネガカラーを詰めて屋外晴天下での撮影

では逆に、室内で写真を撮り始めて感度800のネガカラーフィルムを詰めてしまったが、そのまま晴天屋外で撮影を続けたい場合はどうしたらよいか?
感度800のフィルムをCONTAX T2に詰めて晴天屋外に行くと、露出オーバーの警告が出てしまうことが多い(ファインダー内で500の数字が点滅)。
そういう時にはどうしたらよいか。

◉+2程度の露出オーバーは問題ないネガカラーフィルム

実は、ネガカラーフィルムを使っている限り、その感度がいくつであれ、あまり露出オーバーに対して神経質になる必要はない。ネガカラーフィルムは露出オーバーには強い。(ポジフィルムは露出オーバーになるとすぐ「真っ白」になってしまう。)
こういう場合、CONTAX T2の絞りはf2.8(ダイヤルの緑色の数字)に合わせればよい。CONTAX T2の絞りダイヤルで、f2.8の部分だけ緑色に着色されているのには理由がある。この設定(f2.8)では、もしf2.8では絞りを開きすぎている場合、プログラムAE機能が動作して、撮影時に自動的に最適な絞り値が設定される。ファインダー内には「露出オーバー」の警告として、500の数字が点滅するようになる。だが、ネガカラーフィルムを使っている限り、そのままシャッターを切っても、意外にまともな画像が得られることが多い。目安として、露出補正ダイヤルを+1か+2に設定したら点滅が消えて500の数字が表示された、という状況であれば、まず問題ない。
CONTAX T2に限らず、ネガカラーフィルムの特性として、+1、+2程度の露出オーバーはさして問題にならない。感度400のフィルムにで絞り16・シャッター速度1/500における+2の露出オーバーというのは、感度800のフィルムで絞り22・シャッター速度1/1000の適正露出ということになる。かなり明るい場面だ。でも、フィルムがネガカラーフィルムである限り、実際にはほぼ問題なく写真が写る。実は私は、一時期仕事でポートレートを撮っていたことがある。その時には、感度400のネガカラーフィルムを+3で使っていた。それでもハイライトが白飛びすることはなく、むしろ黒髪のシャドウ部分が綺麗に写っていた。

もっぱら屋外だけでしか写真を撮らないのであれば、積極的に感度400のネガカラーフィルムをお勧めしたい。CONTAX T2の絞りダイヤルはf2.8に合わせておいて、あとはカメラ任せで十分綺麗に映る。感度800のネガカラーフィルムの場合であっても、絞りのダイヤルはf2.8に合わせて、あとはカメラ任せにしておくとよい。

◉終わりに

以上の話は、高度なテクニックを要しない、あくまでも「最低限ブレずに綺麗な画像を得る」こと前提に書いた。絞りを開いて背景をぼかすとか、絞って過焦点距離を利用するとか、回析現象を回避するとか、そういう話がわかる人は、このページにはアクセスしてこないと思うので、あえて省略した。

CONTAX T2には、絞りやシャッター速度以外に、「オートフォーカスのピント合わせが失敗する」ことが、しばしばある。

これについての対策は(あまり対策らしい対策はないのであるが)、こちら。

※以上のアドバイスは、屋外での撮影には感度100のフィルムを使えばいいではないか、とか、ポジフィルムを使うときにはどうすればよいのか、とか、いろいろ突っ込みどころはあると思う。
ただ、実際私は、以前は感度50のポジフィルムをT2に詰めて写真を撮っていた。その時の「失敗」を痛感しているので、あえて上記のような記事を書いた。そもそもネガカラーフィルムというのは、絞り1~2段くらいのオーバーでは、正常にプリントが出来てしまう。場合によってはわざと3段オーバーで使ったりするケースもある(ネガは濃くなるが、プリントは十分可能。)
感度100のネガカラーフィルムは安いのでつい手を出してしまいたくなるが、やめておいた方がいい。

※2020/11/28追加
感度400ネガカラー(富士・Premium400)、屋外・屋内、失敗も含めて▼

※2020/11/28追加
感度400ネガカラー(富士・PRO400H)、屋外・屋内、失敗も含めて▼
Premium400とPRO400Hの違いについては、いつかまた時間を見つけて書こうと思います。

※かつては感度1600のネガカラーフィルムがあった。
参考までに、感度1600のネガカラーフィルムをT2で使ったら絵になるのか、というサンプルはこちら。いずれもノーリツのラボマシンで、現像と同時にCD-Rに書き込んでもらった。スキャナは持っているけれど、面倒臭いので・・・


あと、蛇足ながら感度100のポジ「Velvia 100」で撮ったサンプルはこちら。印刷原稿などに使う場合はこれでないと厳しいかも。スキャニングしてCD-Rに書き込んでもらったデータも、旨く撮れたときには確かに綺麗。ただし、どうしてもアンダー気味になりやすい。

なお、記事を読んでいるうちに「今すぐT2が欲しくなってしまった」方は、こちらからどうぞ⬇。

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