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出しゃばらない。主張しない。傍らにそっと佇む、kobayashi pottery studioの愛すべき謙虚なうつわたち

ー 作り手

モノづくりをしていると、
どうしてもモノへのこだわりが出てしまいます。
でも当たり前なのですが、
暮らしの中での主役はモノじゃなくて人なんです。

シンプルで触りやすいデザイン。積み重ねやすい安定した形。淡く生活になじむ色。

kobayashi pottery studioさんのうつわたちは、派手な色合いでも、個性的な形でもなく、自己主張を押し出すようなことはありません。でも、必要な時にはきちんとそばにいてくれる。少し素っ気ない気もするけれど、長く一緒に暮らすにはそれ位がいい。そんな絶妙な距離感を持った存在です。

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kobayashi pottery studioさんは、うつわのデザインを「カタチ」「色・柄」「質感」の3つの要素で考えていらっしゃいます。

「カタチ」
持ちやすい、掬いやすいといった事はもちろん、目につくような個性を主張するのではなく、普通の日に普通に使えること

「色・柄」
日常にスッと溶け込むような色や柄であること

「質感」
うつわを手に持って使うことの多い日本の食文化の中では、手触りは見た目同様に重要なこと

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「差別化」や「ユニークポイント」などが求められがちな昨今のものづくりの中で、この「なんでもなさ」を守り抜く姿勢を貫くのは大変なことです。こんな稀有なものづくりができるのは、一体どんな方なのでしょうか。

ー ものがたり

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kobayashi pottery studioの作家である小林さんは、実は陶芸を始めた頃は、全くうつわに興味がなかったそうです。


美濃・岐阜県多治見市(多治見市陶磁器意匠研究所)で陶芸を学びました。陶芸を始めた頃は、まったく器に興味がなく、ただ土の素材感や陶芸製作のプロセスの面白さに惹かれていました。
卒業後、まずは生活の為という理由で、産地メーカーへデザイナーとして就職しました。

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うつわに興味のないまま、生活のため陶磁器デザイナーとなった小林さん。
しかしその後20年近く陶磁器業界で経験を重ねる中で、自分にとっての「うつわ」についての価値観が出来上がっていきました。
さらに興味の幅は、インテリア・プロダクトデザイン、料理など、暮らし全般に広がっていったそうです。

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単体で世界観が完成されるのではなく、暮らし全体の中のバランスを取ってくれる視野の広いうつわは、小林さんのその興味の幅の広さから生まれているように感じます。

ー 想い

陶磁器メーカーでデザイナーとして働いているうちに、
日々目の前を流れて生産されるうつわ達を目にし、
大量生産・大量消費に対して疑問を持つようになりました。
そうした中、「デザインする事とは」
「人は何をもってモノに魅力を感じるのか」「うつわとは」と
様々なことに疑問を持ち、深く考えるようになりました。

長い間、企業内でうつわ作りをしてきた小林さんですが、「自分の想い描くうつわを、自分の手で作りたい」という思いがどんどんと膨らみ、自宅近くにご自身の工房を構えられたそうです。

始めは週末だけの制作でしたが、轆轤(ろくろ)や釉薬の試験など、培ってきた経験を注ぎ込んで研究を重ね、ついについに自分のブランドを確立するところまで行き着きました。

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画一的な商品をつくる陶磁器産業に長年従事してきました。決して量産自体を否定することはありません。しかし、別の道も探ってみたくなったのです。
kobayashi pottery studioは、私の経験をベースにしてはいますが、特に素材や手法に拘っている訳ではありません。しかし、一つ一つ使い手の幸せを願いながら手作りで制作しています。そしてそれは、大量生産にはできないものづくりのあり方だと思っています。

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うつわは食事をするための道具です。
そして食事の向こうには、人の暮らしがある。
その器を手に取った瞬間に、使い手が自分の暮らしを想像できるようなものづくりをしたいと考えています。

一歩引いて、暮らしの全体を見守ってくれている。
主役を引き立てながら、必要な時にはそっと自分の力を発揮する。

小林さんが使い手を思って作ってくれたうつわは、当たり前すぎて忘れてしまうほどのさりげなさで、いつも変わらずそこに居てくれています。
そしてそれは、実はとても有り難いことだったりするのだと、改めて気づかせて頂くことができました。

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ー 作り手情報

kobayashi pottery studio





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