“造船古材を未来のために” 瀬戸内造船家具の持続可能なものづくり
ー作り手
瀬戸内に位置する今治は、日本を代表する造船の町。造船業は、古くより瀬戸内の、そして日本のものづくり産業を支えてきました。
その一方で、別の問題も同時に抱えていました。世界を往来する船をつくるこの町では、これまでに何千・何万トンという造船古材が廃棄、焼却処分されてきたのです。
環境問題の根幹にある産業廃棄物との関わり方を、改めて瀬戸内から問い直そうとして生まれたのが、瀬戸内造船家具さん。
船を建造する職人たちの足場板として使っていた古材を活用した、資源循環型のファニチャーブランドです。
ーものがたり
1947年に今治で創業した「浅川造船」でも、これまでに多くの足場板が焼却処分されてきました。廃棄物として処分されていく中でも、その存在は一部の人たちから気にかけられていました。「エイジングされた古材特有の風合いが素敵」「捨てるのはもったいない」「売ってもらえませんか?」そういった声がひとり、ふたり、と日ごとに増えていったのです。
・「環境負荷軽減のために、より持続可能な産業を目指していきたい」
・「古材特有の風合いに魅力を感じてくださる皆さんに、
足場板を提供する場所を作っていきたい」
そんな思いを持った浅川造船の考えに共感したのが、地元・愛媛のライフスタイルショップ「ConTenna(コンテナ)」と、東京のPR会社「オズマピーアール」でした。
造作家具も手がける「ConTenna」には、大工さん、溶接工さん、建築士さんなど、家具づくりのノウハウを持つ職人さんとの繋がりが多くありました。一方で「オズマピーアール」は、企業・団体のコンテンツ開発を得意とし、愛媛の地域ブランディングの実績もあるPRのスペシャリスト集団です。
三者三様それぞれの得意分野を活かして共創し、「造船古材を未来のために」という理念のもと、古材特有の風合いを活かした家具づくりをスタートさせた瀬戸内造船家具さん。
「廃棄処分されてきた古材を流通させることで、循環型社会に貢献したい。未来の子どもたちに環境問題を先送りにしない」
そんなサスティナブルな理念と共創の考え方こそが、ブランドの原点でした。
ー想い
家具づくりの現場では「古材特有のヴィンテージな風合いを活かしながらも、現代の暮らしの中にいかになじむ家具をつくるか」という境界線の探り合いだったと言います。
造船所の屋外で長い年月を経て熟成された古材は、家具加工時に手を加えれば加えるほど、特有のヴィンテージ感が失われていきます。一方で、無加工の状態だと普段使いがしにくいのでは? そんなひとつひとつの悩みに答えを出してくれたのは、やはりノウハウを持つ地元の職人さんたちの技でした。
古材特有のヴィンテージな風合いは残したまま、暮らしになじみやすく仕上がったのは、脚にアイアン(黒皮鉄)を使って引き締めているから。 「黒皮鉄」とは、表面に黒皮と呼ばれる、ほのかに青く光るような黒色膜を持った鉄材です。黒皮は塗装によって意図的につけるものでなく、鉄材が作られる過程で自然発生するもの。
造船古材と黒皮鉄によって、ついに「世界にひとつしかない」表情を持った家具が生み出されました。
環境問題に疑問を投げかけ、その答えのひとつとして「家具づくり」をスタートさせた瀬戸内造船家具さん。売り上げの一部は愛媛県の子どもたちの未来のために積み立て、支援に役立てていくそうです。
「造船古材を未来のために」をブランド理念に、サスティナブルな社会のための家具づくりを追求していく姿には、これからの日本の「新しいものづくり」を見たように感じます。
ー 作り手情報
瀬戸内造船家具
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