憧れ

私の憧れが初めて崩されたのは小学生の時。
田舎から上京してきた私に一番最初に話し掛けてくれた女の子のグループの中にその子はいた。正直クラスの中でずば抜けて可愛くて、だけどなかなかその子と二人で話す機会がないままだった。上京して一年ほど経った時、その子と仲が良い女の子と仲良くなったのをきっかけにその子とよく遊ぶようになった。当時私が好きだった人の話をその子にしたり一緒に絵を書いたりするようになった。共有する時間が増えれば増えるほどその子のことについて知るようになった。小学生にして元彼という存在がいてその人に未練があることや家庭環境が悪いこと。ちょうどその頃私の好きな人がその子を好きなことを知った。私は複雑な気持ちになった。好きな人に「あなたの好きな人は元彼に夢中だし家庭環境悪いから辞めといた方が良いよ」と言いたかった。だけどそんな最低なこと出来るはずなかった。私の中でその子は友達より憧れの方が強かった。ある日その子が私に八つ当たりしてきた。お父さんの不倫を知って落ち込んでいる時にタイミング悪く私と少し言い合いになってしまったのだ。その子に沢山悪口を言われた。絶交する、嫌い、死ね、可愛い容姿には合わない言葉を沢山浴びた。その後その子は私の好きな人と付き合ったし私とは関わらなくなった。

次に憧れを崩されたのは中学生の時。
その子とは部活が一緒で家が近くて部活終わりによく一緒に帰っていた。中学二年生でクラスが同じになって更に距離が縮まった。私の良いのか悪いのか分からない癖で友達に向けてよく「全部聞くから話してね」と言ってしまうのがその子に響いてくれたみたいで登下校中によく悩みを聞くようになった。可愛くて面白くて頭が良くてモテて憧れているその子に悩みなんてないと思っていたから初めて話を聞いた時はビックリした。その子は親の圧や自己嫌悪で悩んでいた。悩みを聞けば聞くほどその子は止まらなくなり毎日ずっと悩みを聞き続けてはアドバイスを考えた。私自身が辛い時すらその子はずっと自分の話ばかりでどんどん一緒にいることで疲れるようになり私が距離を置いた。その子が授業後に見せてきた、引っ掻きまくって血に染まった手は一生忘れられないと思う。

二つの経験があり私は「憧れ」という感情を持たないようにしようと決めた。どれだけ可愛い子だって裏には沢山闇を抱えていてそれを知った時に落胆するのは自分だから。見えている部分だけで綺麗と思ってはいけないと思った。私は女の子が好きで恋愛対象は男性だけど女の子に対して強いリスペクトがあると言うか全員を高嶺の花のように見ている。だけど例えば恋人が女の子と話している時に嫉妬しなかったり浮気した時にすぐ離れられたりある意味強い女の子でいられるのは女の子の闇をずっと見てきたからこそなんだと思う。

高校でまた可愛い女の子を見つけた。
初めて見たのは高校一年生の時。私が友達と駅の前で話している時に駅に恋人と入っていくその子を見た。話していた友達とあの子可愛いねと話すと「隣のクラスの○○だよ」と教えてくれた。帰って必死にその子のインスタを探してフォローするとフォローを返してくれて嬉しかった。その子は他校の人と付き合っていた。そして高校二年生でクラスが同じになり出席番号が前後になった。好きなアーティストが同じでよく話すようになりインスタのサブ垢まで繋がれた。二人で遊びに行ったり相談をし合ったりするようになったけどやっぱりその子にだって闇はあった。他校の恋人とは既に別れていて何回か復縁しているけど結局すぐ別れていた。あからさまに都合の良い関係と化しているのにその子はずっと元彼を引きずっている。バイトの先輩に急にキスされたとか元彼と復縁したとか聞く度にちゃんとすれば良い人と出会えるくらい可愛いのにと思ってしまう。同じクラスに恋人がいる私をその子は「羨ましい」と言って私の容姿を「見習いたい」と言う。その子の容姿の方が何億倍と可愛くて見ていると苦しくなるくらい本当に可愛いのに。その子に羨ましいと言われる度に苦しくなる。

憧れを度々壊されて現実を見て、私は他人に対して憧れを抱けなくなった。だから私に向かって憧れですと言う人を見ると分からなくなる。私のどこまでを見て憧れと言ってるのか。ずっと綺麗な人間なんていないから私の全てを知った時幻滅するのはそっちなのにね、どうせ傷付くんだから辞めといた方が良いよ。

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