私の表面を愛してくれて有難う

四ヶ月付き合った恋人と別れた。

別れようと言ったのは私。

会って話そうと言われたけれど会って話したところで君は自分の意見だけを突き通して私の本音に耳を向けてくれないから、会わないと伝えると君は私に全て原因があるかのように不満をぶつけ一方的にやり取りを終わらせた。私は私なりに、年下なりに君が忙しくて余裕がないことは理解して多少の言葉の綾は見逃していたし、わざと冗談めいたことに変換させたり私が悪かったと目を瞑って言ったりしていた。常に体調は気にかけていたしバイト中君が苦しそうにしている時は私が代わりに入ったりしていた。それは同期だからというビジネス的な理由とは別に大好きな恋人だから彼女として、という気持ちが大きく働いていた。君は中々謝らなかった。私が流石に見逃せないと思い意見を伝えるとすぐに別れようと言って話し合いをしないところ、別れようと言われる度に隣に並ぶ自信を失うこと。

君は決して否定はしなかった。だけど、例えば私の部屋に来た時に君は棚いっぱいに並ぶ小説を見て「本が好きなの?」と言った。私が頷くと満足したようにそっか、と言って話を続けた。好きな小説のタイトルくらい聞いて欲しかった。

君はずっと「顔と匂いと声と性格が好き」と言っていたね。君の前での性格なんて私の一部分で少し私が抽象めいた言葉を言うと「どういう意味?」と首を傾げていたね。それから私は自分の中で浮き上がる言葉をマイルドにしてから伝えるようになった。君に沢山の元気を貰ったけど自信とか愛とか、それは貰えていたのかな。

私の表面を好きになってくれて有難う。私の少女性や文学性は君には届かなかったけど、絶対に交わることが出来なかった君と四ヶ月間一緒に同じ世界を見れて楽しかったよ。

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