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瞬間『約束はできない』その4

結び合う雨と、響きあう雨
文章が意味をなしている詩と、ちぐはぐな詩

それは生活だ
マンションの陰で、ふたりは期待を膨らませている
自転車は六本の電柱を通り過ぎる
勇気の出る靴下を履いている、ドアノブの色について考える
美容室で順番を待っている間、紅茶を飲みながら眠る
家に帰って洗濯をする、部屋で歴史や環境に関する記事に目を通している
それらは木々の夢を見せる詩だ

すっかり暗くなったグラウンドで運動部の少年たちが走り回っている
校庭の空に月が浮かんでいる
コンピュータの前で癇癪を起こしている
図書館でうたた寝をしてピラミッドの夢を見る
引き潮の川で水を飲むキリン、有機栽培の野菜、折り畳まれた四肢
彼らは服装を定められている
長い駐車の料金精算さえも、もう気にすることはない

行き帰りに同じ道を通ったせいで、バラのアップリケの糸が解れている
髪を洗いながら、もう二度と訪れることのない大きな川を想う
記憶の中でその岸に流れる音と風景を感じている

正面を見るとガラスケースに収められたバラがある
再び正面を見ると植物学者が石段に腰掛けてバラを観察しており
辺りは神妙な雰囲気に包まれている
ここにあるのはさすらい人のバラだと彼は言う

ろうそくの明かりの中に人形がある
それは翼を広げて飛び立とうとしたまま固まっている
いつだって痒みを伴う感情が邪魔をするのだ




云い忘れていた気がするのですが、この作品集は20歳の頃に書いたものが、書いたもの順に全て時系列に並んでいます🌳

つまり前回の『幼い魚たち』がこの詩の一つ前になります。


前回は新しい書き方をした感がありました。自動書記のような発想法を意識的に取り入れるという方法です🤖

けれどもまだまだ意図した物語を書こうとしていたと思います📖


今回は何かを書こうとすることを放棄しています。

まとまった意味を為すことを拒否したというか、真ん中のパラグラフでは特に繋がりのない文章が並んでいます。

結果的には、あまりうまく書けていないというかここに出てきたモチーフはちゃんと扱えば、もっと扱いようがあったと思います🎨

ただ、「何か」ではなくてたしかに詩を書こうと意図したと思います。はっきりそう思ったのはここからだったと記憶しています。

これ以前はこのシリーズをとても短い小説と捉えていて「情景描写」と呼んでいました📷

この辺りから、ひょっとして自分は詩を書こうとしているのでは? と思い始めた、と。


それが正しかったのかどうかは分かりませんが、最終的にこの冊子は「詩集」と位置づけられることになります📒

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