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無人遊戯『約束はできない』その1

無人遊戯


それは
夜毎、静かな空間を求め、そこに身を置きたがる
白い壁に囲まれた閉じた場所で
そこでは無機質な草木が植えられ、月の光がアスファルトを包む
人工的な照明がわずかに残る無人地帯で
微かな光は闇に溶ける

婦人服のマネキンを集めた部屋がある
リノリウムの床は静かだ、コンクリートの壁は白い
ブラインドの降りていない窓から月の光が差し込む
時刻とともに月は上空で弧を描き、プラスチックの体表が月光を浴びる間
マネキン達の影はゆっくりと移動する
だが、それはわずかな距離だ
月の光は弱く、彼女らの影絵は鮮明ではない
それは朦朧として消える

常夜灯の下、あるマネキンの影は数メートルの長さに伸びて噴水の側に佇む
彼女の影は克明に浮かび上がり、音の絶えた空間を眺めている
噴水の石は眠る
側に佇むマネキンを目撃して眠りについた彼らは
中庭を散策する無数のマネキンを夢に見ている
そこでは彼女らは噴水の横を通り過ぎて木々の間を抜け
廊下を歩き、月を見上げる




二十歳ぐらいで書いた詩です。

この頃はすでに二つ目の季節に入っていました。


最初の季節は高校の頃で、その頃はまだ写実的なモチーフが少なかったです🍀

二つ目の季節の特徴はというと、ブログを始めたことです。

十代の私は意思疎通ができない子だったので、ブログはそこから一歩抜けられてから始めたのですね。

余談ですが、現在は福祉業界で働いているので、人間分からないものです😆


この頃の特徴としては、写真を見ながら書いていたことが挙げられます。

どんな写真か忘れてしまいましたが、一枚の写真から詩を書くという縛りを課していたのがこの頃の特徴でした。

すでに心象として定着しているもの以外のモチーフを投影する、みたいなイメージでしょうか🎦


「それ」などの指示語を臆面もなく多用しているのが若さだと思います。

対象との間に距離を取ろうという苦心の跡なんでしょうね。


この詩は『約束はできない』という、初めて印刷屋さんを利用して作った私の書籍第一号の最初の一編です📖

この頃、私はリアルで詩のイベントに参加したり、初めていろんな詩人さんとであったりしました🍀

私の初期衝動とも云える冊子を、noteのマガジン機能で再現したいと思います。お楽しみに✨

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