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ディレクターの「構成力」について

こんばんは。十専口人です。
今回は私の本職でもあるディレクターについて少し書いてみます。
ディレクターと言っても様々な捉え方がありますが、私が行っているのは企画・構成・演出・現場監督・スケジュール管理と言ったトータルコーディネートに近いものです。今回は、その1つ「構成」について書いてみます。

先日、後輩に「いつもどうやって(動画の)構成を作っているんですか?」と訊ねられました。最初は、やり方なんて時と場合によると思いましたが、いざ話してみると、そこにある程度の方針があったことに気づきました。普段は無意識的に行っている作業でしたが、改めて言葉にしてみると、色々と見えてきたので、まとめてみます。今回は動画の構成を例に出して書きますが、他のシチュエーションでも基本は一緒だと思います。

①相手の求めるものに耳を傾ける

クライアントがいる場合、まずここから始まります。相手を無視した仕事は、いくらクオリティの高いものでも、ディレクター失格だと私は思います。まずは、相手の話をしっかり聞き、求めるものを理解することです。制作する目的、使用方法、将来の方向性など、確認する点はいくつかありますが、自分が相手と入れ替わっても質問に応えられるぐらい、相手の立場になることが重要です。

②取材・調査

相手の求めるものが分かったら、次は相手を十分に知る作業です。背景や歴史、ストーリー、現場など。本でもネットでも直接話を聞くでも良いです。とにかく情報を集めて、知らないことを無くすように努めること。ここで大事なのは、映像でイメージできるかどうか。文章や話をただ頭にいれるだけではあまり効果的ではありません。具体的に映像でイメージして、対策方法の案まで映像でイメージできれば文句ないでしょう。

③コンセプトメイキング

次はコンセプトを作る作業ですが、コンセプトって意外と説明しにくい言葉じゃないですか?私は次の2つのことを決めるのがコンセプトだと思っています。
・今回の目的(何の為に制作するのか?)
・その為に必要なメッセージ(何を伝えたいのか?)

コンセプトは、案件を進めていく中で迷った時に立ち戻るべきものなので、しっかり考えてブレないように作ることが大切です。コンセプトの重要性は誰しも理解していると思いますが、ここで肝心なのは、ガッチリ固めることにこだわり過ぎないことです。
確かにコンセプトは重要なものですが、真っ先に固めなければいけないとも限りません。もちろん、ある程度固めておく必要はあります。しかし、ここで頭を抱えすぎて先に進めないのも問題だと思うのです。コンセプトを決めることばかりに気を取られていると、肝心の現場が見えなくなる可能性があります。現場を無視して作られたコンセプトは、漠然とし過ぎていて指針にならず、逆に皆を困惑させる原因になります。だから私がお勧めするのは、ある程度コンセプトを固めたら、さっさと内容を作り出すことです。そして、内容を作っていく中で更に深く、細かく、具体的にコンセプトを決めていけば良いと思います。悩んだ時は、次のステップに行ってみるのも手です。

④柱作り

いよいよ内容作りです。まずは、全体を構成するいくつかの柱を作っていきます。物語で言う起承転結に当たる部分で、大きな柱を作り、全体の流れの基盤を作っていく作業です。これは動画に限らず言えることですが、全体を構成する柱には全て理由があります。何でその柱を作ったのか?その柱でなければいけない理由が必ずあります。その理由が説明できない限り、全体がボヤけた芯の無いものになってしまいます。その為にも、柱はできるだけシンプルに端的に表現した方が良いです。
ここで一番大事にしたいのが「転」を決めることです。「転」は、物語、ストーリーの一番の見せ場、話の肝、核と言われる部分です。これが全体の色味を決める需要な要素になります。他と差を付ける部分でもあります。見た人を驚かせたいのか、笑わせたいのか、感動させたいのか、そういった感情ベースで考えることも良いヒントになると思います。

⑤肉付け

作った柱に肉付けをしていきます。それぞれの柱を繋いでいき、全体の流れをスムーズにしていく作業です。ここでは、より具体的に細部まで言葉(文字)で表現していくことをお勧めします。そうすることで、実際に現場での想定をすることになります。逆に言えば、ここを具体的にできないうちは現場レベルでの実践はできないし、クライアントに説明しても具体的な実践イメージが湧かず、理解に困るでしょう。ここは現場レベルまで落とし込む必要があるので、次の工程と交互に行う方が良いと思います。

⑥現場でシミュレーション

これまでは基本的に頭の中で考えたものです。ここからは、「現場」と「頭の中」のギャップを埋めていく作業になります。頭の中だけだと、実際の現場では実現不可能なことを考えたりもします。だから、現場へ赴き、実現可能かどうかを確かめる必要があります。動画でいうと、撮影地点を確認して、障害物がないか、太陽の向き、車・人の混み具合、撮影に適した時間、日にち等を見ていきます。

重要なサイクル

以上が、私が基本的に行う構成の流れです。やり方は人それぞれで、正解なんて無いと思いますが、私はこの流れが一番しっくりくるやり方です。
①から⑥の流れの中で特に意識しているのは、
「考える」→「動く」→「考える」→「寝かす」
というサイクルを繰り返し行うことです。実はこれが非常に効率的に行うポイントだと思います。
まずは「突き詰めて考えること」が大切です。特にコンセプトの部分。ただ、どうしても煮詰まって考えが進まない時もでてきます。そういう時は、思い切って筆を進める、現場を見に行く、小規模で実際にやってみる等、考えることをやめ行動に移してみることです。すると、頭の中がいかに狭い空想空間なのかが分かります。実際に目にすることで、イメージが広がりアイデアが生まれることも多々あります。そして、もう一度「考える」。すると、また行き詰まる時が出てきます。あるいは、気分がノリすぎて夢中になり過ぎる時があります。そういう時は、しばらく寝かせることも大事です。時間が経つと冷静な目で、客観的に捉えることができます。そしてまた考える。このサイクルを如何に回していけるのかが、構成のポイントだと思います。

ディレクターは奥が深い

ディレクターの仕事は奥が深いです。私も毎日が勉強です。今回は構成だけをピックアップして大きな流れを書きましたが、撮影にも編集にもディレクションは必要です。一度では書ききれないで、追い追い書いていこうと思います。

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