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ハリウッド作品に携わった戦略コンサルタントが解説!映画史から見るメタバースとXR

イグニション・ポイントのコンサルティング事業本部 ストラテジーユニットの原田です。

今回は新しいテクノロジートレンドとして注目されるXRの世界について、国内外で映画製作に携わった私の視点から解説するとともに、社内で開催したメタバースイベントについてもご紹介したいと思います。

映画史に見るXR

XR(Extended Reality)はVR、 AR、 MRといったそれぞれの分野の総称です。私はもともと映画業界にてCG制作に従事していたこともあってこの分野にはひときわ関心があるのですが、それってどんなものなの?という方にわかりやすくイメージしてもらうために、今回は映画を題材にご説明していきたいと思います。

『トロン』にみるVR

まずはVR(Virtual Reality:仮想現実)ですが、文字通りバーチャル、つまり仮想空間にて人間が活動をすることを指しています。この構想は古くからあり、CG史の1ページ目に出てくる『トロン』(1982)という映画はまさしくその世界観を演じています。ただ映画内では実際に人がその世界で五感を感じられるようになっていますが、実際の技術はまだそこまで追いついておらず、Meta社(旧Facebook社)のOculusに代表されるようなVRゴーグルで視覚と聴覚、そして少しの触覚が得られるくらいにとどまっています。

▼『トロン』公式予告編

『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』にみるAR

AR(Augmented Reality:拡張現実)は2016年にNiantec社からリリースされたポケモンGOで一躍脚光を浴びて遊ばれた方も多いのでイメージが付きやすいかもしれません。ポケモンGOで遊んでないよ!という方も、バック・トゥ・ザ・フューチャー(1989)という映画はご覧になったことがあるのではないでしょうか。主人公のマーティ・マクフライが未来に行き、現在、そして自分自身を変えていくというストーリーですが、その映画で描かれている未来にARは随所に出てきます。例えばマーティが未来の世界に行き着いたときに映画『ジョーズ』のリヴァイバルをやっている映画館がありますが、その看板からサメが出てきて彼をパクっと食べてしまいます。マーティにとってはあたかも本当のように見えますが、あれも現実を拡張したものです。

▼『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の本編クリップ映像

『マイノリティ・リポート』にみるMR

MR(Mixed Reality:複合現実)の定義は幾つかありますが、ARが単に現実の拡張に留まるのに対して、MRはその拡張した現実とインタラクションを取れるところが最大の特徴とされています。有名なところではトム・クルーズ主演の「マイノリティ・リポート」(2002)という映画で、主人公のジョン・アンダートンが機械操作を現代のようにキーボードやタッチパッドといったハードウエアを通じてではなく、空間に出現したコントローラーを使用するシーンがあります。上映当時は完全なSFだったこの技術も現代では技術的に可能となり、コロナ禍の非接触への社会要望もあり複数の企業から非接触タッチパネルが発売・実装されています。空中に浮かんでいるボタンを触って何かを操作するというのは最初は慣れが必要でしょうが、スタンダートとなるのもそう遠くない未来でしょう。

▼『マイノリティ・リポート』予告編

『レディ・プレイヤー1』にみるメタバース

メタバースはVRの一種ともいえて、VR空間で任意の世界を作り、そこで人間が活動ができることを一般に指します。その定義や特徴は識者によっても分かれるところですが、もともとは1992年に書かれた『スノウ・クラッシュ』という小説の中の造語です。スティーブン・スピルバーグはこの小説を『レディ・プレイヤー1』といったタイトルで映画化していますが、映画内で描かれている世界がまさしく近未来のメタバースだと思われています。そこでは現実とは別の見た目や能力をもった別の自分がいて、触覚や嗅覚含め現実とほとんど変わらない生活が出来るようになっています。

▼『レディ・プレイヤー1』公式予告編

なぜ今XRなのか

このようにXRの世界は古くは1980年代から映画内では描かれてきており、過去にも何度か同領域が盛り上がった時期もありました。著名なところでは2000年代のSecond Life(セカンドライフ)が一時期メディアを賑わしたこともありましたが、大きな社会的な潮流となる前に下火となっていきました。今日現在の盛り上がりはMeta社のメタバースへの注力などに代表されますが、私は以下の3つの理由でメタバースが今後大きなプラットフォームになると考えています。

▼「Second Life」公式サイト

1.通信技術の発展

5Gの普及はまだ進んでおらず恩恵を感じている人も僅かだとは思いますが、通信技術の発展は著しく、すでに6Gの覇権争いが世界では始まっています。このモメンタムは失われることはなく、繋がった世界をより活性化していくために通信量のキャパシティは増えていきます。メタバースはここまで見てきた通り、一つの世界をデジタルで作るため膨大なデータ量がネットでやり取りされます。これを支えるための通信インフラが出来つつあるところがまずひとつの要因だと思われます。

2.エンドユーザー端末の高機能化

これはみなさんが常日頃から実感されていることかと思いますが、消費者一人ひとりが所持している端末の高機能化がデータの処理速度とそれに伴うユーザの体験を向上しています。通信ネットワークの拡充により通信量が増え、それを処理出来る端末が消費者が購入出来る価格帯で普及してきたことやWeb2.0と呼ばれるユーザが互いに情報を発信し合う技術の発出により、人々は「つながる」ことに大きな楽しみを見出してきました。この「つながる」体験の上にメタバースがあると思われます。

3.コロナを機とした人々のコミュニケーションや働き方の変化

2020年からコロナ禍は世界を一変させました。DXはCFOでもCTOでもなくCOV(id)が促進させた、という冗談もありました。国や地域によっては都市がロックダウンされ、人々はこれまでとの世界との繋がり方を強制的に変更せざるを得ませんでした。そしてその過程でこれまでのコミュニケーションの取り方や働き方にこだわらず、時間や空間の縛りから解放されるメリットも享受しました。これにより現実で対面ではなく、デジタル空間やデジタル技術を使用した手法への抵抗感が人々から少なくなったというのも今回のメタバースの盛り上がりの一助となっていると思われます。

メタバースでの社内イベント

盛り上がりを見せ、期待を高める一方まだこのXR技術のビジネスにおける有望な用途はどこも暗中模索というのが実情となっており、多くはゲームにとどまっています。Microsoft社のHololensのようにB2B領域において社員教育やハードのメンテナンスに利活用し始めているケースも散見されますが、まだその必要性やメリットを感じにくいため、まるでインターネットの黎明期のようなワクワク感があるものの、実際何をすればいいのかわからないという感じです。

それでもイグニション・ポイントではこのXR技術に大いに注目しています。

これからのビジネスをトランスフォームする可能性を大いに感じており、隗より始めよということで部内イベント「Strategy Fes(ストラテジーフェス)」をメタバースで開催する運びとなりました。XRの中でもメタバースに注目したのは、MRはその技術要件の高さからハードウェアやラーニングコストが高く、まだ一般普及へのハードルが高いこと、またARはその定義上現実空間にどうして縛られること、一方でメタバースはコロナで変革を迫られた他者とのコミュニケーションとしての一手法として可能性があり、何よりもスタートがしやすかったことがあります。

使用したツール

今回メタバースでStrategy Fesを開催するにあたって以下のツールを検討しました。

▼VRChat

▼NeoVR

▼Cluster

その中で今回はClusterを選んだのですが、その主な理由は導入ハードルの低さでした。メタバースで社内イベントを行うというのはイグニション・ポイントとして初めての試みです。従ってたくさんの人に体験してもらって、いろいろな意見を取り入れたいというのがありました。とにかく遊んでみる!触ってみる!まずは着手してスモールスタート!という創業9年目のスタートアップとしてのイグニション・ポイントのスタンスに基づいた選択でした。

CGで人間の目にとって違和感がないように世界を描写するというのは高い処理能力が要求され、それはメタバースも変わりません。VRChat、NeoVRは魅力的な世界の描写のため、現時点では高いスペックを持ったゲーミングPCが必要となります。またVRゴーグルが必要だったりもするため、採用した場合は多くの社員が参加を見送るのは火を見るより明らかでした。一方でClusterは高い処理能力を持たないPCのみならず、スマホからでも使えることが大きな魅力でした。

2つの課題感

結果的に一定の成功を収めた今回の企画でしたが、大きく以下2つの課題を感じました。

1.楽しいメタバース

今回は初のメタバースでの社内イベントでしたが、Clusterのみならずメタバースそのものが初めてという人も多くいました。もともと探究心が旺盛な社員が多いので、いざメタバースに入ると色々やりたくなってしまいます。どうやってメタバース内を移動するの?このボタンは何?とフェスの内容そっちのけでいろいろなことをしだす社員ばかり(笑)。結果的にフェスの内容に集中できないという人もたくさんいたため、報告・共有事項が頭に入ってこないということも

2.リアルとの同時開催による中途半端感

以前は全部員が社内で集まって実施していたフェスも、コロナ禍と社員の急激な増加でリアルとオンラインのハイブリッド開催で長く行っていました。従って今回のメタバースでのイベントもリアルとの同時開催となり、一部の社員は本社から参加していました。結果的にリアルでのイベント進行を聞きながら、その1秒後に遅れてくる音声がメタバースより聞こえてきたり、発言はメタバースではなくリアルで行われてメタバースでの参加者に発言が聞こえにくいなどといった課題もありました。次回メタバースでイベントを行う場合は、社員の一体感を醸成する上でもそちらで一本化することが大事だと思いました。

プロフェッショナル × XR

そんなこんなで終えたフェスでしたが、課題は残しつつも多くの知見と楽しさを得られた体験だったと思います。ただこの体験を楽しかったねや話のネタだけで終わりにせず、今後社内とお客様に還元していきたいと考えています。イグニション・ポイントの特色、そして強みは新規事業の創造以外に、様々なプロフェッショナルから成るユニットが複数ある点です。これらのプロフェッショナル × XRでお客様の様々な課題に関して取り組めると考えています。

例えばワークデザインユニットは、リモートワークで新規アイディアの創出が困難になったというお客様に新しい働き方やメタバースでのワークショップの実施をご提案出来ます。エクスペリエンスデザインユニットは新商品発売のプロモーション等のマーケティングでの活用や、実際にあるメタバース内の渋谷にて店舗の作成も出来るかもしれません。デジタルユニットでは製造業におけるデジタルツインの活用などDXの観点からのコンサルティングに始まり、グループ会社のイグニション・ポイント・フォースとともにPoCをクイックに作ることも出来ます。

このような多様な人材が揃い、XRのような新規テクノロジーを使用して全方位でお客様に最適なご提案が出来るプロフェッショナルが揃っていることがイグニション・ポイントの何よりの強みだと考えています。

XRに限らず大きな潮流の変化において、イグニション・ポイントは常にその変革を生み出す側にいるために、探究心を強くもって失敗を恐れず挑戦します。

今後も様々な分野でのチャレンジ録をどんどん発信していきますのでお楽しみに!

執筆者の紹介

〈Profile〉
コンサルティング事業本部 ストラテジーユニット シニアコンサルタント:
原田 龍

米国University of Pennsylvania工学学士課程、 スペインIE Business School MBA修了。フリーの戦略/IT/デザインコンサルタントを経て現職。
大学卒業後より映画のCGデザイナーとして日本、イギリス、カナダにて映画製作に従事。代表作は「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」や「ワイルドスピード EURO MISSION」。その後MBAを経てコンサルタントに。主に新規事業推進支援のプロジェクトに従事し、戦略立案~実行までを幅広く支援。IoT事業戦略策定、DX戦略策定、ウェブサイトのクリエイティブディレクションなどの経験あり。豊富な海外経験とハンズオンでのUI/UX設計が強み。


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