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なぜ、人びとはゲーセン『ミカド』に集まって来るのか?

東京・高田馬場にある、伝説のゲームセンター『ミカド』をご存知だろうか? 1980〜90年代に流行ったビデオゲームを中心に並べている、雰囲気もレトロ感満載の店である。

家庭用ゲーム機、ネットゲーム、スマホゲームの台頭により、減少し続けるビデオゲームの店でありながら、いまだ客の絶えることがないのはなぜだろう。

平日は500人、休日は1000人を超えるという、2階建ての店舗には、30年以上前の古いゲーム機が所狭しと並べられ、現役で稼働している。昔、ゲームに夢中になっていた人たちなら、懐かしさで涙もののゲームばかりである。

「雷電」「グラディウス」「コラムス」「ストリートファイターⅡ」「バーチャファイター」「サムライスピリッツ」「ヴァンパイア」「アウトラン」「R–TYPE」「ワンダーボーイモンスター」「熱血硬派くにおくん」「ダブルドラゴン」など。

この店が注目されたキッカケは、常連のプレーヤーが国際的なeスポーツ大会で優勝したことにある。“修行”している店として、海外にも知られるようになった。

また、この店では、ゲームの大会や実演などをネットで配信している。店内にネット配信ブースがあり、店長・店員あるいは、イベント運営者が実況中継しているのである。

これを観た外国人ゲーマーが店を訪れるようになり、大会にも参戦するようになった。このことがさらに話題となり、テレビでも紹介されるようになったのである。

客層としては30代以上が多く、会社帰りにひとりで立ち寄る人が多い。懐かしいゲームを1〜2時間、静かに楽しんで帰る人もいれば、店で知り合った人と対戦する人もいる。

ゲームの音はすれど、若者が騒いでいた昔のゲーセンとは少し違っている。ここに集まる人は、ゲームファンでありながら、いまどきのゲームには熱中できない。ストーリーにしても、操作性にしても、複雑過ぎて純粋に楽しめないのである。

人は、“最先端”ばかりを求めているのではない。刺激的な“最先端”は、時に楽しく、面白い。だが、次から次に出現するものに、人は疲れてしまうことがある。そんな時、ホッと落ち着ける“何か”を探したくなるものである。

心の隙間をゲームで埋めてきた人にとって、いまどきのゲームは癒しとはならない。80〜90年代の単純なゲームが、心地よいのである。それが、ゲームセンター『ミカド』である。

古きを捨て去るばかりでは、人びとは安らぐことができない。

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