【小説】 緑の花。
マキコのクラスの合唱が始まった。
課題曲の伴奏が響き、表情豊かな歌がホールを包む。
リオンの演奏を聴いた今、彼以外のピアノからは、音の色がなくなった。伴奏が始まるたびに、ヒロナの口から、ため息がもれる。そして、脳内で彼の踊るような演奏を甦らせ、ステージ上のピアニストに被らせた。
リオンの伴奏で、合唱に花が咲いた。
クラス衣装として身につけているイージースカーフタイが、色とりどりの可憐な花に見えてくる。紅、紫、ピンク、朱、白、黄色。男子、女子、身長、顔立ち、歌い方。大きいものも、小さいものも、ひとえもふたえも、様々な種類の花が咲いた。同じ花なのに、みんなちがう。金子みすゞの言葉が浮かんだ。
暖色の数が多い中、圧倒的に目立っていたのは、見たことないような深緑の花をつけた、マキコの存在だった。花を引き立てる、葉っぱの地味な色になってもおかしくないのに・・・。
マキコは大ぶりな花をつけた。
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