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災害対応と3Dプリンター住宅

私は福島県いわき市の市役所の職員です。
13年前の東日本大震災の時も、市の職員でした。
すでに記憶があいまいになっている部分もありますが、かつての当事者の一人として、当時の体験を振り返りつつ、いつ/どこで/発生するかわからない災害と発生後の復旧や復興のこれからについてもちょっと考えてみたいと思います。


急かされる復旧/復興と用地確保の難しさ(という記憶)

私が暮らす福島県いわき市の概要と当時の被災状況を簡単に。

人口:約32万人
面積:約1,200㎢(東京23区の倍の大きさ)

<被災状況>
死亡者数:468名
建物被害:全壊7,902棟
  (被害全体:91,180棟)

いわき市役所HP:東日本大震災の被害状況(令和6年2月28日現在)


今から13年前の東日本大震災があった時は「財政課」という予算をつけたり調整したりする部署にいました。その後、「行政経営課(当時)」という、政策の全体調整をする部署にいました。両部署での当時の仕事のほとんどが「復旧/復興」に関するものでした。

被災され、住む家屋を失われた方々のための災害公営住宅の建設は、復興庁からもかなりの頻度で進捗率を尋ねられていた記憶があります。
当時の本市で災害公営住宅の建設で一番ネックだったのは、建設する「場所」を見つけ、交渉し、決定すること。集合住宅の本体に加え、駐車スペースまで含めるとなると、かなりの大きな土地。

いわき市は2003年までは日本一大きい市でした。そんないわき市でも、ある程度まとまった大きさの建設候補地を見つけることはとても困難でした。しかも、被災したエリアは一箇所ではありません。広いいわきの沿岸に点在していました。

被災地域が複数点在しているのに、復興住宅は一箇所であればいいという乱暴なことはできません。なるべく、住み慣れた地域ごとに復興住宅を建設しようという判断は当然でありつつ、逆に言えば、それぞれの地域ごとに、ある程度まとまった広さの候補地を探さなければならなかったのです。


3Dプリンター住宅による迅速さとしなやかさ

災害は起きないにことしたことはありません。
防災力を高め、被害を最小化するハードも重要です。
私たちの不断の防災意識も重要です。
それでも起きてしまう災害に対して、起きたあとの速やかで、しなやかな対応/リジリエンスというのもとても大事なのではないでしょうか。

2011年の東日本大震災では実家が、
2019年の令和元年台風では今住んでいる家がそれぞれ被災しました。

避難所から仮設住宅。仮設から災害公営住宅という従来のステップを被災された方々のためにどう速やか、かつしなやかに対応していくことができるのか。

3Dプリンター住宅が海外でなく、日本国内でも実際に活用されだしたというニュースを見て、このテクノロジーと災害復興とを組み合わせることができたら、今までより、速やかかつ、ある程度まとまった大きな土地がなくても、対応できるかもと妄想が生まれて、数少ない話し相手、ChatGPTくんと対話してみました。


ChatGPTとのやりとり

【わたし】
日本は災害の多い国ですが、災害が発生したあとの避難所や仮設住宅を、3Dプリンター住宅にすれば、空いているスペースに、スペースに応じて建てられたり、人ではなくプリンターなので、労務違反にもならずに昼夜問わず建設できるなど、メリットが多いと思うのですが、
①メリットとデメリットをあげてください。
②また、日本国内でそのような議論や検討がなされているか調べてください。

【ChatGPT】

①3Dプリンター住宅のメリットとデメリット

<メリット>
●迅速な建設: 3Dプリンターを使用すると、建設期間が大幅に短縮されます。例えば、従来2カ月以上かかる建物の建設が、わずか1カ月で完了するケースもあります​。

●コスト削減: 労働時間や材料費を削減でき、全体の建設コストを抑えることが可能です。3Dプリンター住宅は、従来の住宅と比べて35%のコスト削減が見込まれています​​。

●労働力の節約: 労働者不足が深刻な建設業界において、人手を減らし、自動化することで建設を進めることができます​。

●環境適応性: 災害時に迅速に対応できる仮設住宅として活用することで、被災者の生活環境を迅速に改善することが可能です​ ​。




<デメリット>
●法規制: 現行の建築基準法では、3Dプリンターによる建築は耐震性や耐火性の基準を満たすのが難しいとされており、普及には法律の改正が必要です。

●追加工事の必要性: 3Dプリンターで出力できるのは基本的に構造体や外壁などであり、配管工事や電気工事などは依然として人手が必要です​。

●敷地の制約: 3Dプリンターを設置するためには広い敷地が必要であり、狭小地や都市部では設置が難しい場合があります。

●デザインの制約: 現時点ではデザインや間取りの自由度が低く、細かなカスタマイズが難しいことがあります。


②日本国内での議論や検討状況

日本では、3Dプリンター住宅の普及に向けた取り組みが始まっています。例えば、セレンディクスというスタートアップ企業が、日本初の3Dプリンター住宅プロジェクト「Sphere」を進めており、既にいくつかのプロトタイプが完成しています​。また、建設業界の大手企業も3Dプリンターを活用した研究開発を進めています​。

一方で、現行の建築基準法が3Dプリンター住宅に対応していないため、法改正が不可欠です。特に耐震性や耐火性の基準を満たすためには、新たな技術に対応するための規制緩和が必要です​ ​。
今後、法整備が進み、3Dプリンター住宅の技術がさらに発展することで、災害時の迅速な住宅提供や建築コストの削減が実現される可能性があります。


こうなったらいいなという理想/妄想/問い

まだまだChatGPTと付き合いがうまくいっていないのか、イメージするレベルの会話にはなりませんでしたがw、あの時、当事者の一人として目の当たりにした、「速やかな復旧/復興」と「災害公営住宅建設の用地確保の難しさ」。

その経験をベースにしながら、もし体育館などの避難所から仮設住宅へのステップが3Dプリンター住宅によって、これまでよりも素早く、確保できる用地のサイズごとに柔軟に戸建ての仮設住宅を建てることができたらという妄想へ思いを馳せてみる。

被災された方にとっては、避難所より、プライバシーが確保され、ペットも一緒にいれるかもしれない、私のように障がいのある子どもがいる世帯も落ち着くことができるかもしれない。

また、復旧/復興を進める側にとっても、大きな用地を探さなくても、確保できる用地に合わせて、戸建ての3Dプリンター住宅を建てることができる。また、躯体自体は機械が造るので、夜通しでも、何十時間でも造ってもらい、貴重な人員は施工にまわることができる。

日本に限らず、世界中でこれまでにない災害が猛威を奮っている気がします。事前に完璧に防ぐことは難しいかもしれません。相手は自然です。予防はもちろん超重要ですが、予防だけでなく、起きてしまった時に、起きてしまったあとに、どう、速やかにしなやかに被災にあわれた方々と地域をサポートすることができるかということにも、意を用いるべきだと思います。

2011年の東日本大震災と、2019年の令和元年台風の二度の災害を被災した者として、また、被災した地域で働く地方公務員として、自分の経験に基づきながら、避難所から仮設住宅へ。しかも、なるべくプライバシーの確保できる仮設住宅を、発災後、どれだけ速やかに移ることができるかの重要性を身をもって体感したと思っています。

だからこそ、もし3Dプリンター住宅のような技術の進歩が、復旧/復興のフェーズで活用することができたらな、、、と妄想を抱かずにはいられないんです。

住宅だけにとらわれていましたが、橋などのインフラの仮復旧にも3Dプリンター、ワンチャン行けるかも的な回答をしてくれていました。素人の妄想ですが、手段の正統性ではなく、被災された方々や地域への、速やかでしなやかな対応というゴールにフォーカスする。

この文章を読んでくださり、「ま、確かに、そうなったらいいな」と思ってくださる方がいたら、お知り合いの方と話してみてもらえたら幸いです。

大きな主語、大きな力で動かすのではなく、たいまつの灯火を一人、またひとりと渡し、増やしていく。災害復旧と3Dプリンター住宅だけでなく、「こうなったらいいなぁ」は、たいまつが一本、また一本と増えていくように私たちの中に拡がっていったらステキだなぁと思いますし、そのような広がり方の方が、「誰かが言ったから」より、ずっとしなやかでレジリエンスのある力を持つと思うんです。

だから、3Dプリンターに限らず、いろいろなテクノロジーがゴールに向かって手伝ってくれる。手段と目的をひっくり返さず、そんな未来がやってきたらステキだなと、これからも妄想していこうと思います。



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