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小説

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時のないホテル(短編小説)

時のないホテル(短編小説)

春霞に煙る渋谷を背に、午前五時の冷たく湿った国道三号線を歩いている。
幾度となく朝まで眠れず、それにも慣れてしまったように思える。
それは、喪失、と似ている。
この東京での喪失は埋まることはなく、ただその喪失に慣れてしまったように思え、それが喪失を意味している。
六本木が見えてくる。この街では高層ビルを背に歩くことは高層ビルを目指して歩くことを意味している。夕方にも見える。今日が昨日なのか明日なの

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