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小説

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2024年5月の記事一覧

プールサイド(短編小説)

プールサイド(短編小説)

初夏の深夜、散った春の花々とかつての冬に落ちた枯葉の積もった五十メートルプールのサイドに僕は立っている。梅雨明けの掃除を待つプールは虫たちの棲家になっていて腐った匂いがする。一ヶ月もすれば子供たちが虫を取り、二ヶ月もすればその観察も忘れて嬌声と飛沫が上がる。街灯もクラクションも酷く遠く感じる。
僕は去年の夏の始まりから一ヶ月も生きられなかった夏祭りの金魚の死体を、この頃気温が上がったせいか水槽を密

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君の側に(短編小説)

君の側に(短編小説)

すべての場所に行き終えた夜に、僕は細く長くそして深い湖の畔のベンチに座っている。その木製のベンチはささくれ立っていて古いデニムに引っかかる。
ベンチに座る僕と湖の間の落下防止の低木が植えられている。それに雪が積もっている、と思ったら、それは初夏の季節の白いツツジが満開に咲いているだけだった。深い沈黙の夜にそれは薄くぼやけて見える。
 風の合間に湖畔に植えられた高木が音を立てるのを止めた時、僕はいつ

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モーニングコール(短編小説)

モーニングコール(短編小説)

大型連休の中の平日の明るい雨天の夜明け頃だった。

昨日の夜に退屈すぎて二十時に寝たせいで早く目が覚めた僕は部屋の窓を開けて雨の音を聞きながらフォークナーの長編小説を読んでいた。

年度末の新人賞の締切を終えて久し振りに読書するには骨のある小説で随分楽しい読書だったが、窓から流れ込んでくる東京の湿気と一九三十年代初頭に書かれた南北問題はまるで関係がなかった。

それは僕が十代の間に海外文学を好んで

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