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小説

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小説を集めたマガジンです。
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記事一覧

馬のランチ

母は言った 「死にゆく男が遺すべきものはガムシガレットの噛みかけ、とても小さな土地、顔を…

花を壊す

おれにはわからないことが100個以上ある それは昨晩寝るまえに数えたからわかるんだ 月が板っ…

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ロングロンググッドバイ

お前がいない日々は耐えられないが おれがいない日々は華やいでいると思ってしまうのは何故だ…

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さよならと鳥は言ったか

おれが死のうと決めたのは先月のことだった 鏡の海を渡り、砂の星を越えてやっとのことで家に…

56

落下

ちょっとしたやりとりのズレから娼婦を殺してしまった 死んでしまった彼女の手は白い陶磁の感…

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映画

ぼくは明日、まだ暗い朝に窓を開けて コーヒーを淹れてから部屋に戻る 窓を閉めたら映画を観る…

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見ることはできず、知ることもできない

海からの風が夜の湿気をまとって窓から滑り込む 寝返りを打って毛布をかけ直す それでも小屋の中は耐えられない寒さになる 石炭ストーブに火をくべる 銀色の肌の女が部屋の隅で立っている もう使われていない旧式のアンドロイドだ めらめらと波打つ火の明かりが銀色の肌に模様をつける 「スケベだな」 声が小屋の中で空響きした おれは本を開く タイトルはこうだ 「りんごの膨らみは経済に影響を与えるか」 それは長いことおれの睡眠導入に役立っていた 繰り返し読む…意味のないことを…おれとは関

レモンドーナツ

おれはとにかくレモンドーナツが食べたかった 中にレモンジュレが入っていて外側にはレモンチ…

15

甲殻類散文

ワタリガニのブルース アジアの片隅でワタリガニを食べる3人の男 水を飲む、詩について語り合…

8

月光

海底を掻き回して青緑色になった海は波と波とがぶつかり壊れこの小さな舟を呑み込もうとしてい…

祈る。おれは祈る。おれの言葉で、おれの神に。

おれは生きていくなかで必要な悪事も不必要な悪事も働いた。 時には蜘蛛の巣を壊さず通り抜け…

棄てられちまった子供たちが暗い穴から這い上がる朝

棄てられちまった子供たちが暗い穴から這い上がる朝。 太陽の光線は針のように肌に刺さる。 大…