電気こうたろう
特におすすめしたい漫画を集めました。
小説を集めたマガジンです。
おれが書いたエッセー
電気こうたろうとたららんどがふたりでひとつのまんがを描くプロジェクト チーム空洞電池のまんがをまとめたものです
母は言った 「死にゆく男が遺すべきものはガムシガレットの噛みかけ、とても小さな土地、顔を塗りつぶした写真、歯の模型」 おれは産まれてきてすぐにそれを理解した 鋼鉄の頭ん中にある老人からくり抜いた脳みそがそうさせた おれが16になったころ母はおれを家から追い出した 娼婦だった母にはおれは仕事の邪魔だったし、乾いたガラス球のような目には情などなかった 爆発スパンキーよろしく、おれは髪をおったてて革ジャンを着込んだアンドロイドの青年として生きていくわけだ やばいぜ、汚ねえトイレの
おれにはわからないことが100個以上ある それは昨晩寝るまえに数えたからわかるんだ 月が板っぺらのことや、人間の頭には蛍光色の水が溜まってるということなど 誰もが知っていそうでおれだけの秘密のようにも感じる そうしているうちに朝が来て準備をした 鏡の前に立って毎日少しずつ変化する顔を確かめる ブラシで身体中磨いて産毛を撫でてやるんだ 朝ごはんはパンツだけ履いて食べる 目玉焼きは油をひいて裏を火事で焼けた木の肌のようにする 椅子はべたべたしている、というか部屋中が皮脂汚れのよう
お前がいない日々は耐えられないが おれがいない日々は華やいでいると思ってしまうのは何故だろう ポケットの中の小銭に触れる 旅の終わりを感じさせる ちょうど半分になったら折り返せばいいと思っていたが 時折降りてくる死の気配、破滅への衝動がおれを突き動かした 吐くまで飲んでまた飲んで いらない諍いを起こし 知らないところで目を覚ます お前の写真すら持たずに出てきたからどんな顔だったかぼんやりとしか思い出せないのに 泣いている様子だけははっきりと浮かんだ かたくうずくまったと思
おれが死のうと決めたのは先月のことだった 鏡の海を渡り、砂の星を越えてやっとのことで家に帰ったときにふとそんな気分になった おれの身体の空洞に住む鳥は言う 「やめておけやめておけ。お前はそんなタマじゃない。無理さ。言うだけさ。」 おれは本当にそうしたいんだと鳥に伝えるとやたらめったら羽ばたいて気分が悪い おれは怒って硬貨を飲み込む カツンと音がして鳥は静かになるがロボットみたいに同じ動きを繰り返す羽目になった 図書館に行って調べると 青いロブスターを食ったら安楽に死ねると
死んでしまおうか ずっと遠くの町からやって来たのに まだそんな燻り方をする 冬につっかけ履いてアホみたいな喋り方するのもぜんぶごまかすためにやっているのか あのひときれいなうたを歌いますよ あのひとこわい絵を描きますよ おれは酔っ払うと死んだ猫のことを話しては泣くんだ 泣けるかどうか リトマス試験紙に液を垂らすみたいにして確認するんだ 人間だ 人間だ 嘘ばかりついていたら人間になっちまう それでいいじゃないか もしきみが他の誰かに抱かれちまったっておれは大袈裟に悲しむけどほん