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それはまるで、幻想の花園~PENHALIGON'S Ostara~
「女性というのは、ただ花の香りがすればいいというものではない。」
匂いの帝王、ルカ・トゥリンがその著書の中でこう述べていた。
香水フェチの私も、この点全く同意する。
道に様々な花々の香りが吹き零れる季節には、そのかぐわしくも嫌みのない、魅惑的な香りに惹かれて、生花に近い香りのものを色々と試してみた。
が、生花に近いものほど、「○○のお花の香りがする。。いいにおい・・・♪」
以上の感慨はなく、心地は良くても面白みに欠けた。
香水は象徴の芸術だ。
形はないけれども確かにある、想像力と世界観の総合芸術。
ゆえに、花に似せた香りであれ、象徴的であればあるほど好ましい。
さて、前振りが長くなっててしまったが今回の香りのnote、
主役はPENHALIGON'S の Ostaraだ。
英国王室御用達、創業約150年の由緒正しき香水メーカーが送り出したこの香水。
Ostaraは実に魔術的な響きを持つ名で
「夜明けの女神」のほかに、「春分の日を祝う、魔女たちの祝日」をも意味する。
ここでいう魔女たちとは、ウィッカやペイガンといった古代ケルトの流れをくむ自然崇拝を信奉する者たちの意だ。
メインで香るのはラッパ水仙をメインとする黄色い花々。
まるで、一面の黄色いじゅうたんに寝転んで思いっきり息を吸い込んだみたいな
濃密な、春の花の香り。
長い冬を変えて咲き誇る花々の歓喜に満ちている。
ペンハリガンらしく、一級品の素晴らしい香料を使っているのだろう。
朝ひざ裏の1吹きで、かぐわしい香りが一日中続くけれど
いやらしさがなく、香りに酔うということもない。
この香水の素晴らしいと思うところは、なんとなく幻想の花々を想起させるところだ。
メインアコードのラッパ水仙は非常にリアルで
春の小道を思い起こさせるほどなのに
全体でみるとどこか象徴的で、絵画に描かれた花園のような印象だ。
それでも、確かに春の息吹も感じさせるのだ。
幻想と現実を揺蕩うようように揺れる。そんな印象。
ファーストノートからラストノートまで、ダイナミックな変化のない構成にもかかわらず、とても複雑で、繊細。
ほんの消えかけの刹那に、「○○の香りだ!」と断定はできないけれど、なにか果実のような、フルーティな香りがするのも
はかなげで謎めいた印象を与えて、とても魅惑的。
香りの芸術家たちの匠の技を感じさせる。
素晴らしい一品。
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香りにはテンションが、情感がある。
様々な香りはそれぞれの感情をまとっていて
ものによっては雨の日のしんと静まった心の水面。
冬の木枯らしの中みたいなさみしさ。暖かな毛布に包まれたような安心感。
Ostaraは、一点の曇りもない「太陽」の香りだ。
ひたすらに明るくて、喜ばしい。
元気を出したいときに。または、この世の幸福を寿ぎたいときに。
そばに置いておきたい。
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