【ショートショート】人嫌いのロボット(547文字)
読了目安2分 547文字
あるところに人と同じように生活するロボットがいた。そのロボットは人嫌いで有名で、話しかけても
「人間は嫌いだ」
と言われ、そっぽ向かれるのだそうだ。そのため街の人は皆、ロボットが暮らす家に近づかなかった。
ある日、家の鍵を失くした私は、泣きべそをかきながら鍵を探していた。どこを探しても見つからず、そのロボットの家の周りも捜索していると、日暮れにロボットは私の前に現れて、
「この鍵はお前のか」
と言った。その手に持っていたものは確かに私の鍵だった。鍵を受け取り、後日お礼をさせてほしいと私が言うと、
「いらない。人間は嫌いだ。去れ」
と言われ、追い払われてしまった。
次の日、お茶菓子を持ってロボットの家へ向かった。案の定、私は家の門の前で追い払われた。それでもめげずに次の日も、その次の日もロボットの家に向かった。そしてそのたび門前払いされた。
一週間経った日のこと。いつも通りロボットの家に向かうと、その日は門の前にロボットはいなかった。門を少し開けてのぞき込むと、庭が見え、そこでロボットはしゃがんで何かを見ていた。目を凝らしてみると、そこにはお墓が立っていた。墓石には「ハカセ」と文字が刻まれていた。ロボットはぼそっと呟いた。
「人間は嫌いだ。いつかは死んでしまうから」
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