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#1 空間にはすでに音がある | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

表参道ヒルズ、東京銀座資生堂ビル、グランフロント大阪、電通ビル、愛知万博、浜名湖花博…多数の空間や建築を「音」の切り口からプロデュースしてきた井出 祐昭。音と建築について、その極意をお話します。


深い所にあるエネルギーを引き出す

空間にはすでに音がある。本シリーズのサブタイトルでもあるこの言葉、その意味から解説していきます。

私の仕事は、ある空間、ある人、あるモノを音で表現するという側面があります。その際に上手くいかないパターンがあって、それは何かというと、実は「音を付け加える」という考え方です。これは水と油になることが多いのです。
音のプロデュースなのにどうして?と思われる方もいるかもしれませんが、これが、45年間ずっと同じ考えでやってきたことなのです。

私は、モノや存在がある限り「そこに既に音がある」と考えます。
物理的な音もそうですが、言い換えれば「その対象の本質」と言えばいいでしょうか。どんな対象も、深い所にエネルギーを持っています。
私はそれを引き出して、引き出したものを表す。それが大事だと思っています。

エネルギーって何?

人、モノ、建物、何でもそのエネルギーというものがあります。
学歴や経歴では測れない部分があるように、表面に見えているものだけではなく、縦も横も奥行きもあります。
建物だってそうです。秘められているものが、結構あります。

例えば、同じ構造や材質を使っている全く同じ建物で、同じ店が入っている商業施設が都心と田舎にあったら、やはり別ものになる。
よく撮影等で郊外に都心の空間のセットを創ることがありますが、やはり違いますよね。
表面的なところを超えて、その人や物が持っている個性やパワーがある。それを感じ取る。まずはここからです。

第一印象ですべてが決まる

昨今はリモートでもスムーズに行くことが増えましたが、建築の仕事だけは、頭だけでも現場に行かずには完遂できないと考えています。

とある高校の始業チャイムを制作した際、建物に入った瞬間、そこに漂ってるものを感じました。企業なんかでは、その会社にある独特なカルチャーも感じ取ります。建物の構造、土地、場所が持っている雰囲気、そこに人がいたり、商業空間だったら店ができたり。いろんな要素が合わさって新たなエネルギーが出来てあがっているんですよね。

どの空間にもあるので、それを感じ取ると、どうしたらいいかが分かります。空間に入った第一印象で分かります。
「こうしてくれ」と言われているようなものです。

ではそのエネルギーを感じとるためにはどうしているか?次回お話します。


新レーベル IDEOTO RECORDS が始まりました。



井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。


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