研究者が働きやすい“自律的な組織”のための仕組みと文化
研究者の労働環境はシビア…
専門分野によって違いはあれど,研究者を取り巻く労働環境は「厳しい」「(費やしてきた努力に対して)割が合わない」という声が多いです。
どのポストも競争率が高く,運良く仕事につけたとしても,任期ありの非正規雇用であったり,研究以外の仕事に忙殺される(のに,研究業績がないと生き残れない)などの問題がいつもどこかで問題になっていますよね…。
根本的な解決策ではありませんが,私達はせめて自分たちの小さな界隈だけでもこういう悪しき習慣や環境を捨てられるように取り組んでいます。
研究者による研究者のためのイデアラボ
イデアラボは,心理学の委託・共同研究,研究開発に対するコンサルティングをしている会社です。社長や事務スタッフも含め,全員が心理学に関わったことのあるメンバーです。
そのため,研究への理解がある…というか,研究(&研究者)をリスペクトしなければ仕事になりません。
メインの仕事としてはクライアントのテーマに沿った研究をしてもらいますが,社員が研究者個人としての能力開発をすることも大切にしています。(研究者としてのスキルが仕事に直結するため)それぞれがバランスを取りながら個人研究や非常勤講師などの研究活動にも積極的に取り組んでいます。
イデアラボの働き方
今でこそコロナの影響で珍しくありませんが,弊社は11年前の創業時からフルリモート。そして就業時間という概念がありません。すきな場所で,すきなときに働いてもらうスタイルです。
就業時間が無い=無限に働ける=逆にブラックなのでは!?というご指摘もあるでしょうか。
しかし,就業時間が無いと言っても,みなし労働時間(8h)を超えたら時間外労働ですし,深夜労働・休日労働の概念ももちろんあります。(よほど特殊な実験などが無い限り,会社が深夜や休日に労働を求めることはありません。)
また,研究員は随時「現状リソースの確認」というのをしていて,所属長が誰か一人にずっと仕事が集中していないかを個別に確認しています。こうした取り組みは,不公平感で不和が生じないように…というメンバーへの配慮はもちろんですが,リソース不足で仕事の質を下げないためにも大切にしています。
ちなみに私のお気に入りはサバティカル制度。
他者の”人生を尊重する”文化
こうした「働きやすい仕組み」に加えて,メンバーや会社の雰囲気というのも影響していると思います。
社長はいつも「どう働くのが一番良いか,仕事とプライベートで何が大切か,は本人にしかわからない」と言っています。だから「ワークライフバランスは会社が決めるのではなく,”ライフ”の大切さがわかる自分自身で決めるべき」とのこと。
なるほど理論上は確かに正論だなと思うのですが,入社したての頃は社畜の癖が抜けず「エッ…私の個人的な予定を…優先…?」とかなり戸惑いました。
イデアラボではGoogleカレンダーを共有して必要な時に予定を把握できるようにしているのですが,個人の予定がカレンダーに入っている時間帯は,そこに仕事の予定は入れません。
カレンダーには平日日中でも「歯医者」「お迎え」「子守り」「オンラインお茶会」「ジム」「映画」「私用」などそれぞれいろんな予定が入っています。
(“予定がある”と表明することだけが目的なので,予定の詳細は書かず「私用」「会議NG」などでももちろんOK)
こうしたイデアラボの文化は,やや大げさにいうと「他者の人生を尊重している」ように私には見えています。
社員にも聞いてみた
大企業の福利厚生も良いけれど…
大手企業や新進気鋭のベンチャー企業など,もっと金銭的に待遇が良いところや,他の福利厚生制度が充実している企業はもちろん他にもたくさんあると思います。
しかし,研究者にとって「上司や同僚が研究の意義を理解している」「自分の研究が続けられる」「規則に縛られず自由に働ける」「定職に戻れる保証があって,アカデミックキャリアにも挑戦することができる」というのは,時にそれ以上に魅力的なものではないでしょうか?
どんな分野であれ,基本的に研究者というのは,何か自分のやりたいことがあって,その方向に勝手に進んでいける能力と性格特性のある人たちだと思います。
「9時から17時までこの場所に座って働いて!休むときは理由とともに一週間前に申請ね!」と強制してパフォーマンスを発揮させようという社会(や会社)の考え方が少しずつでも変わっていくことを願っています。
研究の知見を正しくビジネス現場に応用することで、研究で食べていける社会を目指しています。