③「無断欠勤」
私は無断欠勤していると言う自覚が持てないくらいに身も心も憔悴しきっていた。自分がどれほど酷く腐った人間なのかと情けなく悔しく憎かった。さっき受けた彼の怒りの数発の痛みも感じない程に、心も体も腐っていた。
2時間ほど歩いたところで駅が見えた。私は何処へ行けば良いのだろうか?これからどうやって生きていけば良いのだろうか?見知らぬ土地へ行き独りの生活をするべきか、路線図を見ながら考えた。何分眺めていただろうか、結局行き先は決まらず、どうして良いかもわからず、駅を離れ、また歩き出したのだった。
7月の炎天下の中歩いている人は殆どいない。車道沿いには、会社や工場が有り、中に居る人はみんなキラキラと汗を流しながら生き生きと働いている。一方私は腐って彷徨っている。
ある所で大きな公園の外周、小中学生が友達同士でプールバックを持ち、弾む声で楽しそうに、足早に歩く姿があった。今は夏休みだったと、思い出させてくれた。
私にも子供が2人いる。娘2人と3人暮らしである。自分を消したいと言う衝動を抑え、この時、とりあえず家に帰ろうと思う事が出来た。
また1時間程歩いただろうか、駅を見つけた。駅につき向かったのは、彼のお店が見える路線。居るのか居ないのか、開いているのか、開いていないのか、どんな結果であっても、それを受け止めるだけだけれども、確かめたかった。
各駅停車で駅を過ぎると、お店は開いていた、彼の車も停められていた、間違いなく彼はその時そこに居た。午前中に一件打ち合わせがあると話していたが、それにしては少し早い。おそらく、私が車を降りた後、まっすぐ店に戻ってくれたのだ。私が戻ってきても良い様に待っていてくれていたのだと思う。携帯を見ていない私は、彼からのメッセージは一切受け取っていない。彼は何かを私に伝えていたかも知れない。それを確認することすら、私には出来なかったし、しなかった。
ここで私はまた、彼を裏切り、傷つけたのだった。情けない思いと共に、こんな腐り切った心と体で彼の元に行く事はできないと言う、強い思いがあったし、こうして、彼の存在を確認している行動自体が、彼に対しての〝疑い〟なのだと改めて実感した。
私はそのまま来た道を戻り、彼の存在を再確認して、自宅へと戻った。
✳︎読んでくださりありがとうございます。
続きはまた次回へ。
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